2013年12月14日土曜日

インセンティブについて

最近のニュースでは、若い人が忘年会に参加しないため忘年会が中止になることが話題になっていました。

忘年会とか社員旅行とかは1960、70年台の会社では大変盛んに行われていたと思いますが、最近は参加したくない人が多いようです。

なぜこのようなこととなったかといえば、その理由の一つに、参加するインセンティブがなくなったことがあると思います。

インセンティブとは、人や組織のモチベーションを誘引するものをいいます。

終身雇用制のもとでは、忘年会の参加は上司との結びつきを深くし、自身の雇用を安定させる意味で参加のインセンティブがありましたが、終身雇用も崩壊しつつある現在ではそのようなインセンティブはありません。

このインセンティブは、資本主義や自由主義社会では非常に重要なものでして、例えば、特許法もインセンティブを刺激するような制度設計となっております。

特許法は、公開の代償として特許権という排他権を与えることにより、特許出願を行うインセンティブを刺激し、これにより国としての経済発展を実現する制度といえます。

特許権という排他権はビジネス上非常に有用ですので、企業は我先にと特許出願するわけです。

一般的な法律もインセンティブを与えるような設計となっているようです。インセンティブがあればその法律を国民自ら守ろうという意思が働きますので、国家権力を行使しなくても世の中の安定が図れます。

例えば、健康保険とか国民年金とかは未納の人が増えて問題となっておりますが、これは、制度自体が崩壊しており保険金を納付するインセンティブがないからです。

したがって、納付を強制するために口座差押えや訴訟の提起など国家権力を行使しなければなりませんが、このようなことは行政コストが上昇しますので、うまい方法とはいえません。

良い法律とは、国民自ら守ろうというインセンティブがしっかり設計されている法律といえるでしょう。

また、インセンティブというのは、一般のビジネスではさらに重要です。国の場合には最後には国家権力を駆使して従わせることが可能ですが、自社製品を強制的に買わせるということはできません(押し売りというものがありますが・・・)。

したがって、自社製品を買ってもらうインセンティブの設定が重要となり、このあたりがビジネスマンの腕の見せどころとなります。

忘年会に戻りますが、ビジネスマンとしてはインセンティブをしっかり設計し直すことが必要でしょう。逆に、人が集まる忘年会を企画できる人はビジネスマンとしての能力も高いのではないでしょうか。

2013年12月7日土曜日

御社の知財部®について

御社の知財部(登録商標です)というサービスを提供させていただいて、今月で丸3年になります。来年1月から4年目に入ります。

サービス開始当初は鳴かず飛ばずでしたが、今年に入り何社か契約いただきまして、今は少々忙しく活動させていただいております。

私もこのサービスを始めて、初めて営業活動というものを行ったのですが、引き合いがあっても、やはりお断りされることも多くあります。こういうときは結構落ち込みます。

お断りの理由として1番多いのが、都県や市が行っている無料の知財コンサルティングを利用することにしました、というものです。

都県・市は、中小企業支援のメニューとして無料の知財コンサルティングを行っているところが多くあります。

これは中小企業に対し弁理士や中小企業診断士などの資格を持つ人を派遣して、中小企業の知財の相談にのるというような内容となっています。しかも基本的には無料ですので、これを利用しない手はありません。

この理由でお断りをいただくと、仕方がないと諦めるしかありません。無料にはどうやっても勝てません。

このような無料の知財コンサルティングは、事業の規模が小さく知財上の課題が少ない場合に特に有用と思います。

知財上の経営課題が少なく、課題が生じるごとに解決するスタイルならば、無料の知財コンサルティングは経費削減の観点から有用と思います。

ただし、事業の規模が拡大すると知財上の課題が常時発生することになりますので、この場合、無料の知財コンサルティングですべてに対応することは難しくなると思います。

したがって、どこかの段階で、特許調査や特許出願等の知財活動の費用を自社でしっかり確保するとともに、自社に知財部のような組織を設け、組織的に知財活動を実施する必要があります。

このような知財活動を自社で行うと決意した段階で当社にご依頼いただければ、知財活動の自社による独自実施へスムーズに移行できると思います。

会社内の方を知財責任者として我々がその方を補佐しますので、社外の人材を新たに登用するよりも人件費を削減できますし、何より社内の方が知財部の責任者となりますので、組織的にも受け入れやすいと思います。

と、宣伝めいて申し訳ありませんが、ご興味がありましたら弊社(御社の知財部.com)までお気軽にお問い合わせ合わせ下さい。よろしくお願いいたします。

2013年12月3日火曜日

「させる」と「させない」について


特許権とは排他権であるとよく言われます。排他権とは権利を持たない者による特許発明の実施を排除できるということを意味します。

権利者のみが特許発明を実施できますので、特許発明にかかるビジネスを支配することが可能となります。このように、特許権とは特許発明を実施「させない」作用を有します。

従来の知財マネジメントはこの排他権に着目して行われてきましたが、近年は、標準化というものが重要視されています。

技術標準とは、所定の技術において満たさなければならない仕様、取り決めのようなものです。技術標準が確定しますとその技術を使用しなければなりません。

したがって、自社に有利な技術標準が確定しますと、その技術をあらゆる会社に使用「させる」ことができます。

このように、特許権と技術標準を組みわせることにより、競合他社にある技術を使用「させる」、「させない」という具合にコントロールできますので、競合他社は自由度を奪われ、自社の競争優位が得られます。

さて、他社に使用「させる」、「させない」ようにするには、特許権、技術標準以外の方法もあります。それは、契約です。

例えば、契約により、実施権を許諾し使用「させる」こともできますし、地域を限定して実施「させない」ことも可能です。

ただし、特許権、技術標準は不特定多数に対して効力があるのに対して、契約の効力は契約を締結した特定の会社に限られます。

また、契約によれば、ノウハウ・営業秘密を使用「させる」ことも可能です。さらに、契約でなんでも実施「させない」こととできるわけではなく、公序良俗に反せず、独占禁止法に抵触しないことが必要です。

以上をまとめると以下の図のようになります。



他社をコントロールするという観点からは、特許権のみを考慮した知財マネジメントでは足りず、今後は、技術標準、不正競争防止法、独占禁止法を駆使して、「させる」、「させない」の戦略をねる必要があると思います。

もちろん他社も自社をコントロールしようと仕掛けてまいりますので、どのように防御するか、契約書の内容はどうあるべきか、いろいろと準備しておくことも必要と思います。

2013年11月23日土曜日

品質表について

12/1の知財学会で発表を行います。テーマは、戦略的商品開発手法の開発 -QFDと特許情報の融合-です。発表資料はまだ完成しておりませんが・・・。

この発表では品質表というものを特許情報からつくる、ということにチャレンジしています。

品質表とは、下のような表をいいます。



これは、100円ライターの品質表の例です。縦軸が要求品質であり、横軸は品質特性となっています。

要求品質とは、お客さんが要望する商品の品質を示しています。例えば、確実に着火する、使いやすい、などです。

品質特性とは、商品設計の目標値を引き出すために、要求品質を技術者の言葉に置き換えて抽出した言葉です。例えば、形状寸法、重量、などです。

簡単にいえば、要求品質とはお客さんの言葉であり、品質特性は技術者の言葉であり、品質表はお客さんの言葉を技術者の言葉に変換(翻訳)する役割があります。

この品質表の良い所は、お客さんの要求という抽象的な情報を、品質特性という数値で評価できるようになるところです。

例えば、お客さんから確実に着火するという要望があった場合には、そのままでは漠然とした情報ですが、この品質表を見れば、耐久性、着火性、操作性を所定の数値内とすればよいことがわかります。

したがって、商品設計を客観的な数値で管理できることになりますので、技術者も商品設計を非常にしやすくなります。

この考え方は商品設計だけではなく、いろいろな分野に役立つと思います。例えば、知的資産経営報告書では、KPI:Key Performance Indicatorsというものを評価指標として設定して、知的資産経営の進捗を数値で管理します。

これにより、知的資産経営という理解しにくい概念を、数値により見える化することにより、いろいろな人に理解してもらうことが可能になります。

難関の資格試験や英会話の勉強も、こういった数値で進捗を評価できれば目標を定めやすくなると思います。

そういう意味では、 自分が直面する課題について品質表のようなマトリクスを作成すれば、解決の一助となるかもしれません。

2013年11月11日月曜日

アセアンへの中小企業の進出について

本日は、中小企業の海外進出支援-アセアンビジネスの視点から-という題目の研修を受けてまいりました。

アセアンといえば、 インドネシア,カンボジア,シンガポール,タイ,フィリピン,ブルネイ,ベトナム,マレーシア,ミャンマー,ラオスが参加国であり、近年成長著しい国々として注目されています。

これらの国に進出する際には、様々な問題がありますが、知財的には模倣が大きな問題となると思います。

それでは、アセアンの知財状況はどうなっているのでしょうか。講師の方のお話をかいつまみますと、

(1)知的財産関係の法律は各国とも整備されつつあるが、ミャンマーは特許法、意匠法、商標法がない。

(2)各国特許庁における審査は、他国の審査結果を提出すれば特許される国がある。特許庁自体小さな組織の国もあり、ウェブサイトがない国もある。

(3)知財権の権利行使については、各国特有の事情もあり難しいと考えたほうがよい。

ということですので、ただ出願すればよい、という状況ではないようです。

特に、権利行使が難しい点は、はたしてその国に出願する意味があるのかを考えさせます。

ただし、商品をその国の市場に出したそばから模倣が始まるとのことですので、何ら知財権を確保せずに進出することも無謀と思います。

そうすると、効果に疑問は残りますが、可能な限り出願して権利を確保するとともに、知財権によらずとも模倣を防ぐような手段をとることが策の一つとなるでしょうか。

例えば、コアの技術については国内に残し、模倣を受けても被害が少ない技術のみ国外に出すことなどです。

さて、中小企業がアセアンでビジネスを行うためには、良いビジネスパートナーを探すことが重要とのことです。

パートナーの探し方としては展示会を利用することが一つの手段であり、JETROや地方公共団体が主催する展示会を利用すれば、比較的お金がかからずに済むとのことでした。

ただし、結局は経営者自ら進出先の国に趣き、その国の空気の匂いを感じることが最も重要とのお話でした。

今はネットで色々な情報を収集できますが、それだけではダメということですね。

2013年11月9日土曜日

知的資産経営認定士について

先日、知的資産経営認定士の登録を行いました。知的資産経営認定士とは、中小企業を知的資産の面から支援すべく設けられた制度です。

これは、知的資産に関する一定の知識が有ることを証明する性質のもので、行政書士、弁理士や中小企業診断士のような「資格」とは違う性質のものです。ということで、資格とった!とは書けません。

この認定を受けるためには、50時間程度の講習をe-ラーニングで受けて、認定試験に合格しなければなりません。認定試験は1日に何度でも受けられますので、頑張れば短期で合格することもできると思います。

さて、知的資産経営認定登録士は具体的にどのような業務を行うかというと、その一つには、知的資産経営報告書の作成があります。

「知的資産経営報告書」とは、企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産の認識・評価を行い、それらをどのように活用して企業の価値創造につなげていくかを示す報告書です。過去から現在における企業の価値創造プロセスだけでなく、 将来の中期的な価値創造プロセスをも明らかにすることで、企業の価値創造の流れをより信頼性をもって説明するものです。(経済産業省近畿経済産業局HP:http://www.kansai.meti.go.jp/2giki/network/vbnet_ic.html)

実は会社の新サービスとして、知的資産経営報告書の作成を行うことを考えていたのですが、必要な知識も吸収できますし、知識的な証明にもなりますので知的資産経営認定士にチャレンジすることにしました。

知的資産経営報告書は、外部ステークホルダに対しての自社の姿勢を説明する一種のIR的資料になりますし、 また、必ずしも公開する必要はなく、社内資料として、自社従業員にのみ公開し、会社の進む方向を従業員の皆さんに理解いただく資料として使用することも可能です。

我が社でも「知的資産経営報告書」を作成したいという会社様がございましたら、当社までご連絡下さい。(URL http://www.ip-design.co.jp/  、email infoアットip-design.co.jp [アットを@に変更願います])

よろしくお願いいたします。

2013年10月18日金曜日

関連意匠について

部分意匠と並んで活用したい制度が関連意匠制度です。

本意匠と類似する関連意匠を複数登録することにより、意匠の類似の範囲が明確となり、他社の意匠登録を排除する効果が期待できます。

関連意匠制度を利用するにあたり、悩むのが本意匠の選択です。実際に使用する製品の意匠を本意匠とするのが一般的ですが、 他社の意匠登録を排除するためには、関連意匠を数多く登録できる意匠を本意匠とすることも有効です。

さて、本意匠と関連意匠は類似する意匠であることが必要ですが、どのようなバリエーションとすればよいでしょうか。

意匠の類否は前にも述べましたように、意匠の要部認定が大きな影響を与えますので、意匠の創作性を有するコアの部分を共通な形状等にし、他の部分の形状等を変化させるバリエーションとすることが必要と思われます。

こうすることにより、意匠のコアの部分が明確となりますので、その他些細な部分が意匠の類否判断に影響を与えることが少なくなり、意匠の創作性を有する部分が的確に保護されることになります。

一点注意が必要なのは、関連意匠出願を行うことにより、意匠の要部は明確となりますが、それがその後の権利行使に影響を与える場合があります。

携帯用魔法瓶事件(H24.6.21 大阪地裁 平成23年(ワ)9600)では、原告が関連意匠から想定される要部以外の部分を意匠の要部として主張することが認められず、意匠は非類似、非侵害とされてしまいました。

このあたりは禁反言の考え方に似ているともいえます。

最後に、意匠制度についていろいろ紹介させていただきましたが、実際のところ、部分意匠や関連意匠が今回、前回と書いたように取り扱われるかは不明な部分もあります。

意匠の類否等の法解釈は訴訟を通じて判決内容から固まってゆく側面が大きいのですが、日本では意匠に関する訴訟はとても少ないので、結局、特許庁の審査基準からいろいろと推測してゆくしかありません。

日本では裁判を起こすことはあまりよくないイメージが有りますが、法に対する議論を活発化するという意味では、裁判制度を積極的に利用することも必要と思います。アメリカのようになると行き過ぎとか思いますが。

さらに、意匠の類否については解釈が難しい部分もありますので、意匠出願のみならず、特許出願も併用して技術的な保護を求めることも、保険として必要と思います。


2013年10月12日土曜日

部分意匠について

部分意匠とは、ある製品の特定の箇所について権利化したい場合に用いる出願制度です。権利化したい部分を実線で描き、他の部分を点線で描いて出願します。

こうすることにより、製品の特定の部分の意匠に関して類否が判断されることになりますので、意匠全体が非類似の場合でも、特定の部分の意匠を保護することが可能となります。

例えば、スマートフォンの画面を意匠で保護したい場合には、外形を点線で描き、画面を実線で描き出願します。このような出願を「クレーム型」と呼ぶそうです。

私は、部分意匠といえばこの「クレーム型」と考えていたのですが、その他に「ディスクレーム型」というのもあるそうです。

例えば、スマートフォンの外形を実線で描き、画面を点線で描いて出願をする場合はディスクレーム型となります。これによれば、画面の形にかかわらず外形が保護されますので、外形に特徴がある場合には、ディスクレーム型が有効です。

スマートフォンの外形のみで意匠出願すればよいかと思いますが、例えば、画面形状に特徴があるスマートフォンが他社により製造された場合、画面形状が意匠の類否に影響を与え、意匠が非類似と判断されてしまう可能性があります(利用関係で権利行使できる場合もあります)。

したがって、ディスクレーム型の出願を行うことにより、いかなる画面形状に対するスマートフォンに対しても外形が類似していれば権利行使できることになります。

なお、ディスクレーム型の出願は審査で拒絶される可能性が高いため、特に新規な製品について有効な出願といえます。

ということで、新規な製品を販売する場合には、次のような意匠出願を組み合わせることが、権利行使のためには有効と思われます。

(1)全体意匠(製品の意匠をそのまま保護)
(2)部分意匠(ディスクレーム型:外形形状の保護)
(3)部分意匠(クレーム型:特徴的な部分の保護)

まとめとしましては、部分意匠制度とは、特定の部分を審査して欲しい場合に利用する制度であるとともに、特定の部分を審査してほしくない場合にも利用できる制度といえます。

したがって、意匠出願の際には、全体と部分の組み合わせをいろいろ考えて出願することも今後は必要と思います。

2013年10月10日木曜日

意匠出願について

私は主に特許の仕事をしているのですが、時たま意匠権侵害の相談を受けることがあります。

その場合、登録意匠と侵害しているであろう実際の製品とを比較して、意匠の類否を判断すればよいと思いますが、実はそうではありません。

意匠の類否を判断する前に、まず意匠の要部を認定する必要があります。意匠の要部とは、 創作が特徴的な部分とか、見る人が最も注意を引かれる部分と言われる特定の部分です。

意匠の類否には、この要部の形状や模様等が大きな影響を与えますので、登録意匠のみならず、公知意匠を参照して要部を認定してゆかなければなりません。 

そうすると、相談されたその場で、2つのデザインを比較して意匠の類否や意匠権侵害の判断をするということは、非常に難しいといえます。

相談者は、デザインは目で見て明らかであるから意匠の類否の判断は容易であると思い違いをしている場合もありますので、その場合は少々申し訳ない気持ちにもなります。

意匠の登録率は約80%といわれ比較的簡単に権利化されるのですが、いざ権利行使をしようとすると、 このような意匠特有の難しい問題がでてくることになります。

そういう観点からは、意匠の要部というものを出願時にある程度、出願人の側で確定して出願すれば、意匠の要部の認定、ひいては、意匠の類否の判断を、出願人の想定通りにもってゆくことが可能となり、権利行使が容易になります。

そういう出願法としては、部分意匠出願制度と、関連意匠出願制度の利用が考えられます。

部分意匠(ぶぶんいしょう)とは、物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分を保護するための意匠のこと。たとえば、コップの縁の部分に特徴あるデザインの場合、そのコップの縁の部分について部分意匠を受けることができる(wiki)。

関連意匠制度では、登録を受けようとする意匠に類似する関連意匠にも、一般の意匠の権利とほぼ同様の効力が与えられる(wiki)。

先日、部分意匠及び関連意匠の活用法についての研修を受けてきましたので、次回は具体的な出願法について書きたいと思います。

2013年10月4日金曜日

TPPと知財について

最近ニュースでTPPが話題になっています。wikiによればTPPとは以下の意味のようです。

環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement または単に Trans-Pacific Partnership,(トランスパシフィックパートナーシップ) TPP,環太平洋経済協定、環太平洋連携協定、環太平洋経済連携協定、環太平洋パートナーシップ協定)は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) である。

経済貿易協定といえば、一昔前はGATTやWTOの場で話し合われて来ましたが、多数の国の協議では利害が衝突しやすく、近年は、利害を調整しやすい二国間や地域別の協定を結ぶことが盛んに行われているようです。

さて、TPPの話を聞くと私はどうしてもGATTのウルグアイ・ラウンドのことを思い出してしまいます。

ウルグアイ・ラウンドとは、1986年にウルグアイで交渉開始が宣言された、GATT(関税貿易一般協定)の多角的貿易交渉のこと。自由貿易の拡大を目指して新しい貿易ルールを作る交渉である。期間は4年間で交渉は15項目。GATTは2国間に貿易問題が起きたとき仲裁する立場だったが、貿易の形も次第に複雑化し、複数国の間で利害問題が浮上してきたため、多角的貿易交渉(ラウンド)へ移行していく。ウルグアイラウンドでは特許権、商標権、著作権といった知的所有権の取り扱いから、旅行、金融、情報通信など、物品をともなわないサービス貿易の国際的取引の自由化、農産物の例外なき関税化について交渉した。124カ国が参加したこの会議は難航をきわめ、94年に合意に至った(ASCII.jpデジタル用語辞典) 。

今思い返せば、このウルグアイ・ラウンドが、日本のいわゆる失われた20年を創りだした一つの要因とも思います。

この交渉では様々な協定が成立したのですが、例えば、TRIPS協定が成立したものの一つです。

TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)は、1994年に作成された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定の一部(附属書1c)を成す知的財産に関する条約である(wiki)。

この協定により、発展途上国も知的財産権の保護を実行あるものとする義務が生じましたので、プロパテント政策を推し進めるアメリカには有利に働き、その後のアメリカの復活の要因の一つとなりました。

また、TBT協定というのも成立しました。 TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定:Agreement on Technical Barriers to Trade)は、東京ラウンドにおいて1979年に「GATTスタンダードコード」として合意し、ウルグアイラウンドにおいて1994年にTBT協定として改定合意されて、1995年に世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(WTO設立協定)に包含した標準化に関する条約である(wiki)。

この協定によって、規格を国際規格(国際標準)に整合化する義務が生じました。このため、日本のたて型洗濯機が輸出できなくなったりしました。

国際標準の策定についてはヨーロッパ勢が優位に立っておりますので、ヨーロッパに有利な標準が成立しやすく、ヨーロッパの存在感の向上に寄与しました。

さて、日本といえば何をやっていたかというと、もっぱら「コメの自由化阻止」でした。ウルグアイ・ラウンド対策として農村にお金がばらまかれ、余ったお金で温泉センターが乱立したりもしました。

ウルグアイ・ラウンドではコメの完全自由化は阻止されましたので、目的は達成されたかもしれませんが、国益という観点では、TRIPS協定やTBT協定をねじ込んだアメリカやヨーロッパにしてやられた感があると思います。

今回のTPPの件でも農業の保護が主要な論点となると、ウルグアイ・ラウンドの二の舞いとなる恐れがあります。

やはり、日本として今後発展してゆく分野は何かを見定め、交渉に力を入れてゆくことが必要となると思います。

前回と違い今回は知財も大きなトピックとなっておりますので、交渉の行方を見守りたいと思います。

2013年9月27日金曜日

発明の特別な技術的特徴を変更する補正・・・について

本日は弁理士会の研修で、「発明の単一性の要件」及び「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準の改訂について勉強して参りました。

この中の「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」とは、平成18年の特許法改正により新たに設けられた規定で、特許法第17条の2第4項に以下の規定があります。

前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。

上記規定の「第三十七条の発明の単一性の要件を満たす」とは、特別な技術的特徴(STF)を共有する関係をいいます。

そして、発明の特別な技術的特徴(STF)を変更する補正は、拒絶の理由(特49条1号)となります。

なぜこのような規定が設けられたかといえば、請求項の補正を自由に認めると審査の負担が増えるからです。つまり、審査に時間を掛けたくないという行政庁からの要望により設けられた規定といえます。

私はここ数年この規定に非常に悩まされてきました。本規定の認定は審査官の裁量が大きく、多少乱用気味の時期もあったと思います。

請求項に進歩性なし(29条違反)⇒進歩性もないのでSTFもなし(37条違反)⇒STFを追加する補正は技術的特徴の変更に該当(特17条の2違反)の連続攻撃には非常にまいりました。

ストリートファイターというゲームにコンボ攻撃というものがありました、まさにこのような抜けられない状態となり非常に困りました。

特許法第17条の2第4項の拒絶理由が通知されると、審査官の裁量が大きいため反論は事実上不可能であり、審判を請求するか分割出願を行い、審査官、審判官を違う人にするしかありません。

ただし、資力に乏しい中小企業の場合には、審判や分割出願を行うことは費用的に難しい場合もあり、その場合には拒絶理由を受け入れるしかありません。

ただし、これは非常に問題です。なぜなら、 特許法第17条の2第4項の拒絶理由は形式的要件にすぎないからです。

新規性や進歩性のような実体的要件により拒絶されるのであれば、権利化をあきらめることもしょうがないと思いますが、補正の仕方うんぬんで権利化できないのは問題があります。

例えば、青色LEDの製法のような革新的な発明が、補正うんぬんで拒絶されてしまっては、国家的損失につながると思います。

さらに、このような形式的要件にエネルギーを投入することは非生産的でもあり、知財の創造という生産的な活動にエネルギーを投入したいという希望もありました。

さて、本規定の運用はよほど評判が悪かったのか、平成25年7月1日以降の審査から運用が変わりました。

具体的には「必要以上に厳格に適用することがないようにする」だそうです。今後の審査がよりよく改善されることを期待しております。

2013年9月21日土曜日

代替・補完・相乗について

私は妹尾堅一郎先生の講座が好きで、機会があるとよく聞きにゆきます。

先生は、場の雰囲気を和ませるためか、受講者に、「物の関係にはどういうものがあるか?」と意地悪な質問をよくします。

多くの人は答えられないのですが、先生によれば、「代替」、「補完」、「相乗」の3つの関係があるとのことです。

「代替」とは、コーヒーと紅茶の関係のようなものであり、要はどちらか一方が選ばれる関係といえるでしょうか。

ビジネスの場で「代替」関係は、例えば、ニコンとキャノンのような競合関係へつながる場合があり、少々よろしくない関係とも感じます。

「補完」とは、コーヒーとミルクのような関係と言えます。つまり、互いの足りない部分を補い合う関係といえます。

仕事をしていると、この「補完」関係というものを非常に意識することになります。

私が仕事を一緒にさせていただく相手は、特許調査の専門家や弁護士や大学の先生など、私の技能を提供できるとともに、相手の技能を利用させていただける相手となります。

逆に、他の弁理士とは「代替」関係にありますので、一緒に仕事をすることはあまりありません・・・。

ただ、補完関係にあると安心していると、いつの間にか代替関係に変化していることもあり注意が必要です。

例えば、特許事務所は主に企業の知財部から仕事をいただいています。つまり、両者は補完関係にあります。

しかし、近年知財部門を分社化する動きもあり、この場合、知財部門の会社は、特許出願関係のビジネスを始めることになります。

そうすると、特許事務所とは、「代替」関係になり、ライバル関係に変化することになります。怖いですね。

最後に、「相乗」とは、コーヒーとタバコのような関係です。私は今はタバコは吸いませんが、学生時代は研究室に篭って、コーヒーとタバコで息抜きをしていました。

「相乗」関係とは、なかなかいい例がないとも思いましたが、例えば、男女の結婚などは、場合によっては相乗関係といえると思います・・・。

特許の世界では「相乗」は非常に重要でして、発明の進歩性を主張するために、構成要素の組み合わせにより生じる相乗効果を主張することがよく行われます。

「相乗」関係はなかなか難しいですが、「補完」関係をいかにうまく作れるかが、いろいろな仕事のコツだと思います。

2013年9月16日月曜日

パテントマップについて

特許情報解析の方法の一つにパテントマップがあります。

パテントマップは、数百~数千件の特許出願から、キーワードや特許分類を抽出して図表化するものです。

私もこの業界に入ってパテントマップというものを初めて見たのですが、正直何を示しているのかよくわからない、というのが最初の感想でした。

出願人別の出願件数ランキングぐらいでしたら、あの会社の出願が多い、というレベルでの理解は可能です。

しかし、軸にIPC、Fタームなどの特許分類をとった場合には、特許分類が何を示しているのかわからず、大変理解が難しくなります。

さらに、近年ではテキストマイニング等の言語処理技術を利用して、分布図や等高線図のような図を出力するソフトがありますが、 こういう図から何を読み取るべきか非常に悩みます。

そこで、パテントマップを理解するために、自腹でパテントマップソフトを購入し、自分でつくってみることにしました。

自分でつくると、パテントマップを作る過程の試行錯誤も知識として加わりますので、最終的なパテントマップの意味内容がかなり理解できるようになりました。

ただし、これではクライアントにパテントマップを見せるときに困ります。自分は理解できていますが、クライアントは理解できないという事態に繋がります。

そこで現在はクライアントと一緒にパテントマップを作成するようにしています。

パテントマップ作成の試行錯誤を共有することによりパテントマップの理解も深まりますし、将来的にはパテントマップを自社独自で作成できるようにもなります。

もう一つの考え方としては、ソフトに頼らずマニュアルでパテントマップを作ることがあると思います。

従来のパテントマップは、特許明細書からキーワードや特許分類を自動的・機械的に抽出して出力するだけですので、特許明細書に書かれている技術内容を正確に抽出できるわけではありません。

したがって、人間が1件1件明細書を読み、キーワードをマニュアルで抽出してパテントマップを作成すれば、より理解しやすいマップを作れると思います。

しかし、この作業は多大な労力が必要となるデメリットがあります。この辺りは、あきらめて地道に作業するか、情報処理技術の進歩を待つしかなさそうです。

2013年9月6日金曜日

特許調査テクニック(研修備忘録)

弁理士には法で定められた研修制度というものがありまして、所定の期間で所定の単位を取得しなければなりません。

私も月1回程度研修に参加してるのですが、時間が経つと勉強したことを忘れてしまうことが多いため、研修で気付いたことを備忘録的に書きたいと思います。

なお、以下の記載には、私の記憶違いや認識の誤りの部分もあるかと思いますので、さらに詳しく知りたい方は、講師の出されている書籍や論文をお読みいただければと思います。

本日の研修は、ランドンIP合同会社の野崎さんが講師の「弁理士が知っておきたい特許調査テクニック」でした。

先行技術調査では、ターゲットとなる特許文献を収集するために、検索式を考える必要があります。検索式を構築するにあたり講義では、特許検索マトリクスの作成が提案されておりました。

特許検索マトリクスは、横軸に調査対象の背景技術、課題・目的、技術的特徴・解決手段を配し、縦軸に、検索キーワード、キーワード同義語、IPC、FI、Fタームが配された表です。

つまり、特許検索マトリクスの横軸は異なる概念が配され、縦軸には同じ概念が配されることになります。

そして、特許検索マトリクスの空欄に、必要な情報を記入してゆきます。記入が終わりましたら、記載内容を横軸方向に「and」をとり、縦軸方向に「or」をとるようにして(つまり、同じ概念はor、異なる概念はand)、検索式を幾つか構築してゆきます。

このマトリクスの良い所は、横軸は異なる概念が配され、縦軸には同じ概念が配されるため、検索式の「and」、「or」の取り方を間違わなくて済むところです。

「and」、「or」の取り方を間違えますと、ノイズや漏れが多くなってしまいますが、 特許検索マトリクスを使用しますと、機械的に「and」、「or」をとれますので、アウトプットにブレが生じにくいと思います。

また、私は特許検索をする場合には、特許分類(IPC、FI、Fターム)を主に使用します。それはキーワードを使用しますと、検索モレが多くなるという恐怖感があるからです。

今回の講義では、キーワードを使用する際のテクニックについても教えていただきました。キーワードを使用する際には、同義語もキーワードとして使用し、検索式では「or」をとればよいとのことです。

同義語については、Cyclone、JSTシソーラス、かんたん特許検索、J-GLOBALなどの無料のサイトを利用すれば、ある程度機械的に抽出できるとのことでした。

また、先行技術調査についてはユーザーが主体的に行い、他の難易度の高い特許調査をサーチャーが行うような役割分担を提案されていましたが、これには私も全く同意です。

以上、備忘録でした。

2013年9月3日火曜日

組織は規程に従う

おかげさまで、現在何社かの企業で「御社の知財部(登録商標です)」サービスを提供させていただいております。

提供するサービスの内容はクライアント企業の状況により異なりますが、サービスのひとつの軸として知財管理規程(及びその他規程類)の策定があります。

知財管理規程は、社内の知財の取り扱いを就業規則などと同様に条文にしてまとめたものと考えていただければ、イメージしやすいと思います。

提案する知財管理規程はベースとなる規程がありますが、そのままでは企業の実情に合わない場合がありますので、実情をヒアリングしながら微修正を加え完成してゆきます。

例えば、知財管理規程には、各規定を実行する担当者や責任者を明確にして記載する必要があります。そうしないと、せっかく規程を作っても、規程が実行されないということになりかねません。

しかし、 社内にそうした適任者がいない場合には、規程の記載を変更して規程が社内で回せるように修正します。

そうすることにより、会社の組織にマッチした知財管理規程が策定できることになります。

とはいえ、知財管理規程の修正程度では足らない場合もあり、その場合には、会社の方の組織を多少変更してもらう必要があります。例えば、知財責任者や知財担当者の任命は必須となります。

しかし、組織変更は簡単に行えるものではありませんので、最終的には社長の判断となります。したがって、知財管理規程の重要性を経営者に理解していただく必要があります。

経営学では、組織は戦略に従う、という言葉が有名ですが、 知財に関しては、組織は知財管理規程に従う、とでもなるでしょうか。

いずれにせよ、知財活動を社内に定着させる手段として、知財管理に適する組織を構築するというもの一つの有効な手段と思います。

2013年8月27日火曜日

知財費用の助成制度について

弊社Facebookページ(https://www.facebook.com/chizaidesign)の方で紹介しておりますが、現在中小企業向けの知財に関する助成制度が様々設けられております。

これは、中小企業を知財の面から支援することにより、国全体の競争力を増大するという政策的意義があるからと思います。

助成の内容としては、外国出願費用の助成に偏っているように思います。近年、グローバル化が叫ばれておりますので、これは妥当とも思いますが、知財活動は、国内出願や特許調査も重要な活動ですので、これらの活動への助成も欲しいところです。

さて、外国出願費用ですが、費用が公的機関から支援されますので、どんどん利用しましょうといいたいところですが、多少の注意点もあります。

(1)審査について
公費を投入するわけですので、やはり審査があります。審査の内容としては、企業の財務状況、ビジネスの有望性、技術の特許性等が様々な専門家により審査されることとなります。

助成の予算は予め決まっておりますので、応募した企業の数が少ない場合には、比較的容易に審査を通過しますが、応募企業が多い場合には、競争率が高くなり、 厳しい審査が行われることとなります。

(2)費用について
助成の割合は1/2程度ですので、全額助成される訳ではありません。したがって、外国出願に関してある程度の費用(百万~数百万程度)は自社で負担する必要があります。

また、助成金は出願が完了し費用が確定した後振り込まれますので、その間数百万円を建て替えておく必要があります。

さらに、外国出願に関しては、権利化に費用がかかること当然ですが、権利化後の権利行使や侵害調査にも、さらに多額の費用がかかります。しかし、これに対する支援はなく、自社で予算を確保しておく必要があります。

(3)手続きについて
審査のために様々な書類を整えて提出する必要がありますが、結構な労力が必要です。

制度によっては出願完了の時期が指定される場合がありますが、多くの国に出願を行う場合には、出願スケジュールとの整合を図ることが難しい場合もあります。

また、特許網の構築という観点からは複数の出願を行いところですが、助成事業は1件の外国出願のみ限定されます。

結局のところ、税金を使うという点からしょうがないとは思いますが、助成制度には様々な制約があります。

ひとつの考えとしては、助成制度に頼らずに、自社で出願した場合の収益計画を立てることが必要と思います。自社のビジネスですから、助成金が下りないから外国出願を取りやめる、という判断にはならないと思います。

ビジネスプランをしっかりたて、外国でのビジネスから得られる収益を予測し、必要な出願を行ってゆくことがまず基本となると思います。

逆に 、しっかりとビジネスプランを立てることができれば、助成金の審査も通り易くなると思いますので、助成を受けられる可能性も増すと思います。

最後になりますが、助成の募集は年1回程度となりますので、タイミングを逃すと翌年度の応募となってしまいます。所在地の自治体の助成スケジュールについて、一度ご確認いただければと思います。

2013年8月4日日曜日

経営者のように考える、について

会社で働いていると、上司からよく「経営者のように考えろ」といわれることがあります。

経営者のように従業員が考えることは、仕事を深く考えるという点では多少の意味もあると思いますが、不必要に従業員を追い込んでいるとも思います。

経営判断といえば、何か前向きな判断や、とても戦略的に優れた判断をするように感じますが、例えば、「やめる」とか「後で考える」とか「外に出す」など、後向きの判断もあります。

しかし、従業員が、「後で考える」などという判断を行うことができるでしょうか?そういう判断をした場合には業務に対する意欲がないと評価されてしまうかもしれません。

従業員に経営者のように考えろという場合には、判断の自由度がない場合がほとんどであり、結局、従業員を給料以上に働かすための方便となっているだけと思います。

また、従業員が何かよい戦略を考えだした場合でも、戦略を実行するために、ヒト・モノ・カネ等の会社の経営資源を使用する必要がありますが、従業員にはそのような権限がなく、結局アイデアがお蔵入りとなることがあります。

経営者のように考えたのに実行されることはないのですから、考えた労力がまったく無駄になります。

したがって、経営者のように考えろといわれたら、「判断の自由度」と「経営資源を使用する権限」があるか確認したほうがよいと思います。

ない場合には、社内で波風が立たない程度にやりすごすことが、自分の身を守るために必要と思います。

ところで、実際の経営者は、自由に判断し、経営資源を自由に使用しているかというと、そういうわけではありません。

大企業では会社の方針は役員会などで決定されますので、社長の考えがいつも認められる訳ではありません。反社長派的なグループがある場合にはさらに難しいと思います。

また、株主や銀行への説明責任もありますので、そういうステークホルダーを説得しようとするために、ありきたりの経営戦略を打ち出すことにもつながりかねません。

ということで、従業員へ経営者のように考えることを求める前に、経営者自身が、はたして優れた判断ができているか考える必要があると思います。

2013年7月27日土曜日

ちょっと確認して、について

先日、契約書作成実務の研修を受けたのですが、その講師の弁護士の方のコメントで印象に残りましたのが、「ちょっと」が一番怖いという話でした。

お客さんから、「ちょっと契約書の文面をチェックして」と頼まれ、その通り、簡単にチェックしてOKを出してしまうと、その後契約書に問題が発生した場合、チェックした弁護士の責任となってしまうケースがあるそうです。

契約書の文面のチェックを仕事として正式に受任した場合には数十万から数百万(数千万?)の費用が発生すると思いますが、ちょっとチェックの場合には、10万円程度もしくは「ただ」で行う場合が多いと思います。

ただし、10万円のレベルで仕事をしてしまうと、思わぬ責任問題が生じるので、仕事を受任するときに注意が必要という話でした。

私も同じような悩みを感じるときがあります。この発明は特許になるかちょっと教えて、とか、この製品はうちの特許権を侵害しているかちょっと教えて、と頼まれる場合があります。

特に会議の場などで、こういう質問をされると非常に困ります。即答できないとプロとして恥ずかしいと思う反面、特許性の判断は非常に難しく、先行技術を調査して、相違点の検討などに時間をかけて、ようやくそれなりの結論を導き出せますので、即答するのは無責任とも考えてしまいます。

さらに、「ちょっと」とお願いされる場合には、要は、「ただ」でやって、サービスでやってとの暗黙の要望もあり、この場合には、調査費用は請求できず、赤字となってしまいます。

そもそも日本では「サービス」にお金を払うという意識が低く(サービス残業という言葉もあるくらいですし・・・)、サービス業が成立しにくい国なのかも知れません。

脱線しましたが、「ちょっと」依頼された場合には、「ちょっと」出来る範囲の仕事の内容をお客さんに説明して合意をとり、その合意内容を書面で残すことが必要と思います。

また、結局「ちょっと」で請け負った仕事では内容が不十分な場合も多いと思いますので、正式な料金をお客さんに理解していただき、正式に仕事を受任する努力も必要かもしれません。


2013年7月20日土曜日

仕事のマニュアル化について

特許事務所で働いていたりすると、人の出入りが激しいため、仕事の引き継ぎ作業が大変だったりします。そういう時は仕事の内容がマニュアル化されていると、引き継ぎも楽に行えます。

事務所の経営から見た場合には、人の出入りのリスクに対応するため、業務のマニュアル化が必須ともいえます。

ただし、マニュアル化というのは従業員にとっては、良くもあり悪くもあります。

良い点としましては、マニュアル化により業務内容が明確となりますので、忙しい時や急用があるときは他の人に仕事を分担してもらうことができます。

悪い点としましては、仕事が特定の人のスキルに依存しなくなりますので、いわゆる「自分の代わりはいくらでもいる」という状態になり、他の人との競争の結果、解雇されやすくなったり、給料が低く抑えられたりします。

特許事務所では、ひとりで仕事を抱え込んでいる人もいますが、そういう人はマニュアル化に抵抗して、自分を守っているのかもしれません・・・。

さて、同じようなことが、技術の標準化にもいえると思います。

近年、知財戦略の一環として、国際技術標準に取り組む企業が増え、国もその後押しをしています。

ただし、何でもかんでも標準にすればよいというものではありません。技術の標準が進みますと、一定の品質の製品を誰でも製造することができるようになります。

したがって、標準を満たした製品であれば、結局安く作れる企業や国の製品が市場のシェアを伸ばすことになります。

例えば、パソコンや携帯電話は、安く作れる企業の製品がシェアを伸ばし、日本の製品は苦しい戦いを強いられております。

一昔前では、信頼出来るブランドの製品しか売れませんでしたが、今では、同様の規格で製造されておりますので、後は価格勝負となります。

したがって、標準化活動というのは、実際には自社のコア技術が標準化されないようにする活動ともいえます。

自社のコア技術についてはブラックボックス化し、その周辺の重要性の低い部分を標準化してゆくことにより、「自社の代わりはいくらでもいる」という状況を回避できるのではと思います。
 

2013年5月19日日曜日

商売というものについて

私も社会人として20年働いて来ましたが、たまに商売とはなんだろうと考えることがあります。

私の前職は生産機械の技術者でしたが、この仕事は結構きつかった記憶があります。

お客さんの要望に応じて生産機械を設計・製造する仕事でしたが、毎回違う機械を設計することになるため、毎回0からの設計となり、必然的に長時間労働となります。

しかも業務範囲が広く、工数の管理や、資材の調達、設計・製造、現地での立ち上げなどを行わなければならず、ただ忙しい毎日で、30歳を過ぎた当たりで、このままでよいのかと不安感もつのりました。

そういう中、知り合いの友人のお父さんがやっているカレー屋の話を聞くことがありました。

そのカレー屋は、午後2時には閉店して、その後の時間は、お父さんの趣味の時間(三味線など)の時間となるそうです。

工場地帯の中にあるカレー屋ですので、労働者の昼ごはんに絞ってお店を開け、お客がこない夜や土日はお休みだそうです。

メニューはカレーだけですので、注文を受けてからすぐにお客さんに出せますし、お客さんも数分で食べてしまうでしょうから、お客の回転も早く、それなりの売上も上がります。

ということで、毎日同じカレーを仕込むだけで、生活できる程度の売上も上がりますし、空いた時間は自由に使えるというわけです。

当時の自分は、技術的に高度な仕事をいろいろこなし、長時間働かなければ生きていけないという脅迫観念がありましたが、実際の商売はそういう原理で動いているのではないことに気づかされました。

むしろ、やることを絞って仕事を効率化し、顧客のニーズを捉えて、適切なビジネスモデルを構築すれば、あとは自力で仕事をすることも可能だということかもしれません。

その後自分は会社を辞め、いろいろと仕事を変えておりますが、ビジネスモデルの理想の一つとしていつも思うのは、そのカレー屋さんであり、高度な仕事をしよう、長時間働こうという方向へ考えが行かないよう気をつけています。