2015年10月24日土曜日

ノウハウ秘匿について

先日、とあるセミナーに参加しましたところ、帰りがけに雑誌記事のコピーを渡されまして、帰りの電車の中で読んだところ、次のようなことが書いてありました。

とあるコンサルタントの方が、とある中小企業を訪問した際に、特許出願を見せてもらったところ、明細書に製造ノウハウが事細かに記載されており、大丈夫なのかと心配になったとのこと。

しかも、その明細書を書いた代理人を確認したところ、弁理士会の会長(副会長?)をされていた方ということで、 二重に驚いたとのこと。

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上記の記事の内容はさておき、近年、製造方法等はノウハウとして秘匿すべきとの考えが強くなっています。それは当然誤りではないのですが、何も考えずに製造方法であればノウハウ秘匿とするのは、ちょっと危ないと思います。

そこで、以下のノウハウ秘匿判断ツリーを考えてみました。(はみ出しているかもしれませんが・・・。)



まず考えるべきは、そのノウハウについて、他社が権利化する可能性があるかどうかです。他社が権利化してしまえば、もはや自社はそのノウハウを実施することはできません。

コカ・コーラの製造方法のように他社が絶対に製造不能のものもありますが、たいていのノウハウについては、技術者の試行錯誤により到達できる技術レベルと思います。そうすると、他社により権利化される状況も考慮しなければなりません。

他社に権利化された場合の対策として、先使用権を主張することが考えられます。ただし、先使用権を主張するためには、特許法79条の要件事実をすべて立証する必要がありますので、常日頃から証拠を確保する活動が社内に必要となります。

そのような体制がない場合には、自社で先に特許出願して権利化してしまうという考えもあるかもしれません。

また、他社の権利化の可能性が低い場合には、ノウハウ秘匿とすることは、大いに考えられますが、その場合には、自社に営業秘密が流出しないような管理体制があることが必要となります。

具体的には、営業秘密管理規程を作成し、従業員の教育を行い、社内システムを整備する、ことなどです。

しかしながら、最近、新日鉄の方向性電磁鋼板の技術が退職者を通じて、韓国・中国へ流出したことがニュースとなりましたが、営業秘密管理をしっかりやっている会社でも、技術情報が流出してしまう場合があります。

一度情報が洩れますと、情報は無体物ですから回収することは難しいですし、拡散を止める手立てはありません。

したがって、そのようなリスクがある場合には、やはり、自社で先に特許出願して権利化してしまうという考えもあるかもしれません。

最後に、ノウハウの特許出願ですが、これは、早期審査制度を利用することをお勧めします。通常の出願ですと、出願公開されたのち、査定がなされるケースが多いと思われます。

特許査定であれば何の問題もありませんが、拒絶査定となった場合には、ノウハウが無駄に公開されてしまうことになります。(公開されたノウハウは誰でも自由に実施できます。)

早期審査制度を利用することにより、出願公開前に査定(特許、拒絶)を得ることが可能となりますので、拒絶査定となった場合でも、そのノウハウが公開されることはありません。

なお、早期審査制度の利用には、一定の要件があり、誰でも利用できるというものではありませんので、特許庁HPで確認いただければと思います。

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上の記事につきましても、表面的には弁理士のミスのようにも感じられますが、実際のところは、様々な事情を考慮しないと何とも言えないといえます。

また、ノウハウを積極的に公開することにより、市場形成に成功した例として、即席麺の事例もありますし、要は、目的があればノウハウ開示もありうるということになります。

したがって、ノウハウ秘匿は絶対であるとして、思考停止になることは避けたいと思いました。