2017年9月9日土曜日

リスクの取り方について

以前、私は「技術リスクマネジメント専攻」という専攻の大学院に通っていました(今は名前は変わっております。)

そこで学んだことはもうほとんど覚えていないのですが、今でも覚えていることは、「リスクはリターンの源泉」という考えです。

「ハイリスク・ハイリターン」、「ローリスク・ローリターン」という言葉は誰でも知っているとは思いますが、リスクを取らねばリターンはないというのがビジネスの原則となります。

私は、普通に学校教育を受けて、その後、いわゆる大企業で働いておりましたが、そのような経歴ですと、「リスクは悪」のようなマインドとなり、リスクを避けるような判断をする思考となりがちです。

そのため、ローリスク・ローリターンの人生となってしまいましたが、仕事をする際には、この原則を常に考えておかないと、まずいことになります。

話は飛びますが、以前、弁理士会の研修で「ベンチャー支援」という講義を受けましたが、そこで講師の方が強調されていましたのが、ベンチャーで一番重要なのが「成長」ということです。

1年で規模を倍にする、2年で4倍にするような規模の拡大を図ることがベンチャーの使命だそうです。

私は、ベンチャーはお金のない小規模企業のようなイメージをもっていましたが、そういう訳でもなく、投資家からお金を集めようとすれば、それなりに集まるそうです。ただし、お金の使い道は「成長」に寄与することが必須です。

ベンチャーの特許出願についても、成長に寄与することが説明できれば、費用をかけることも厭わない、ということでした。

結局のところ、ベンチャーは「リスクを取って成長する」タイプの会社と思います。資金・費用については2の次です。

さて、そういうベンチャーを、ローリスク・ローリターンのマインドで携わるとまずいことになります。例えば、この請求項は広すぎるからリスクを減らすため狭くしよう、特許出願は費用がかかるからやめて節約しよう、などとリスクを減らすようなアドバイスをしがちとなります。

大企業の場合には、リスクを減らす考えも有用ですが、ベンチャーの場合には、ある程度リスクをとってゆかないと、成長できずにジリ貧となります。

そうすると、ベンチャーの場合にはリスキーな判断をすることも必要となりますが、これはなかなか怖くてできないところもあります。

とりあえず、大企業の仕事の場合にはリスクを減らすことを考え、ベンチャーの仕事の場合にはある程度リスクをとるような考えで進めるしかないのかもしれません。 


2017年8月15日火曜日

日本の特許制度の大欠陥?

「日本の特許制度の大欠陥、アイデアが世界中に流出する理由」、というネット記事を見かけました(リンクは割愛いたします)。

記事の内容については、新井先生の書かれた『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』という書籍の解説記事のようです。

こういう題名ですと、日本の特許制度に大きな欠陥があるような感じになりますが、諸外国の特許制度は統一が図られておりますので、日本の特許制度特有の欠陥というものはないと思います。

あとは、特許制度自体に欠陥があるのかどうなのか、アンチパテント、プロパテント等の考えもありますが、上記ネット記事はそこまで言及するものではありません。

上記記事の内容(新井先生の書籍ではありません)につきましては、簡単言えば、特許公開により技術が公開され、競合に模倣されるから、秘匿可能な技術については出願しないようにしましょう、という感じでしょうか(厳密に読んでいませんが・・・。)

こういう記事を読みますと、頭の中が20年くらい前で止まっているのかな、と感じます。20年くらい前でしたら、日本の技術力は世界一のレベルにあり、特許出願件数も世界一でした。したがって、日本の技術は盗まれる側でした。

しかし、現在では、日本の技術の多くがキャッチアップされ、出願件数も諸外国に抜かれております。そうすると、現在では、外国公開特許情報を分析して、技術を盗んでやろう(もちろん権利侵害にならない範囲ですが・・・)、という考え、すなわち盗む側にそろそろなると思います。

ノウハウ秘匿戦略に良い悪いはないのですが、ノウハウ秘匿戦略を選択する場合には、先使用権を確保することが必須となります。これは、競合が権利化した場合には、自社実施が不可能となるからです。

もちろん、製造方法は、ばれないからいいという考えもありますが、権利侵害を放置するのは、コンプライアンス上問題がありますので、まともな会社でしたら、自社実施をやめると思います。

国内だけのビジネスを実施している会社でしたら、先使用権は日本国内のみで確保すればよいのですが、グローバルなビジネスを展開している企業でしたら、各国ごとに先使用権確保の作業をしなければなりませんので、大変です。

個人的には、競合他社が権利化しそうなノウハウにつきましては、先んじて権利化することもよいのではと思います。そうすることにより、先使用権確保の作業の負担が低減できます。

もちろんコカ・コーラの製法のような、競合他社が永遠に開発不可能な技術については、秘匿戦略でよいと思います。

さて、こういうネット記事というものは著作権法上どうなのかという気もします。書籍の要約でも翻案権の侵害になりますので、著作権者の許諾を得ていると思いますが、著作者の意図と違うような解釈がなされる要約の場合には、同一性保持権とか問題になりそうな気もします(もちろん同意があればよいのですが)。

要約の内容が、著者の意図と多少異なっているようですので、気になるところです。


2017年8月6日日曜日

ローコンテクストとハイコンテクストについて

文化は、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化に分類されることがあるそうです。

ハイコンテクスト文化では、言語以外に状況や文脈も情報を伝達し、重要な情報でも言語に表現されないことがあるそうで、具体的には日本のような文化を示すそうです。

ローコンテクスト文化では、伝達される情報は言語の中で全て提示されるそうで、具体的には、ドイツやアメリカのような文化を示すそうです。

ハイコンテクスト文化だからといって、文化のレベルが高いという訳ではなく、言語以外のコミュニケーションが使われる度合いが高いというだけの意味です。

ハイコンテクスト、ローコンテクストというのは、文化の分類だけではなく、例えば仕事の分類にも使えるのではないかと思います。

例えば、ローコンテクストな仕事には、弁理士があります。発明の内容については100%言語を使用して明細書を作成する必要があります。ハイコンテクストな明細書を作成した場合には、発明が不明確であるとして拒絶されるでしょう。

ハイコンテクストな仕事には芸術家があると思います。音楽やら絵画やら自己の作品を言語を使用することなしに、伝えなければなりません。言語を使ったら負けという世界です。

また、仕事ではなく、商品の分類にも使えそうです。 

ブランドはもういらないで紹介したような製品は、言語で品質のすべてが説明できるローコンテクスト商品といえます。

また、日本製品は、価格が安く、品質も高いということで、特性をすべて言語で説明できるローコンテクスト商品といえます。(ローコンテクスト商品だからといって、レベルが低い訳ではないのは上記のとおりです。)

一方、ハイコンテクストな商品としては、いわゆるブランド品があると思います。シャネルのバッグやハーレーのバイク等、言語で表すことが困難な特性を有する製品です。

こう書くとハイコンテクストな商品の方がいいような気もしますがそうでもありません。ローコンテクストな商品は、特性を言語で伝えることができるため、良さが理解しやすいメリットがあります。

例えば、日本のバイクは馬力、車重等に優れ、その良さを、国・文化を問わず伝えやすいので、世界中で売れております。

一方、ハイコンテクストな商品はユーザーが良さを理解しにくいので、プロモーションにコストかけないと、なかなか売れない商品といえます。

とはいえ、ローコンテクストな商品は、特性が競合にも理解しやすくキャッチアップされやすく、競争が厳しくなりやすいため、差別化しにくいといえます。

逆に、ハイコンテクストな商品は、 特性が競合に理解しにくいため、差別化には有利化かもしれません。

ということで、ハイコンテクスト、ローコンテクストという観点でいろいろ考えると面白いかもしれません。


2017年8月3日木曜日

ブランド属性とブランドアイデンティティーについて

(前記事)
ブランドQFDについて(論文へのリンクあり)
ブランドの定義について
ブランド知識について
ブランド知識の構造化について

ブランドQFDは、「顧客ニーズ」と「品質」と「ブランド属性」との関係を明らかにします。

ここで「ブランド属性」とは何かといえば、製品・サービスが備える顧客価値向上に関わる要素のことを言います。

上記ブランドQFD論文では、ブランド属性を製品の構成要素に限定しておりますが、これは、特許情報から抽出できるのが製品の構成要素のみだからです。

したがって、実際には、その他の要素(デザイン、サービス、会社のビジョン)なども、ブランド属性に含まれるかと思います。

例えば、自動車の場合には、エンジン、タイヤ、シャシー、サスペンションなどがブランド属性となると思います(もちろん、もっと細かく分けることも可能です)。

自動車メーカーごとのブランド属性は共通している要素もあり、異なる要素もあります。

スバルのエンジンは、水平対向エンジンであり、その他のメーカのエンジンは、直列エンジンであったり、V型エンジンであったりします。

つまり、ブランド属性「エンジン」において、スバルは他に無い特有のエンジンを有しているわけで、これがスバルのブランドアイデンティティー (の1つ)となります。

このように、自社のブランド属性を抽出して、他社のブランド属性と比較することにより、自社のブランドアイデンティティーを明確にすることができます。

2017年7月28日金曜日

ブランド知識の構造化について

(前記事)
ブランドQFDについて
ブランドの定義について
ブランド知識について

ブランド知識にはいろいろあることを説明いたしましたが、ブランド知識を得るだけではブランドとはなりません。

次に、ブランド知識間の関係(コンテクストともいいます)を明らかにする必要があります。

なぜ関係を明らかにするかといえば、人間は物事のつながりから、物事を理解するためです。これはブランドだけではなく、例えば、バランススコアカードやロジックモデル等に共通する考えです。

そして、様々なコンテクストの全体像が構造化されたブランド知識となります。

とはいえ、ブランド知識間の関連の強さを確認するというのもどうやっていいのかわからないところがあります。

ブランドQFDを使用しますと、「ユーザーニーズ」と「品質」と「ブランド属性」の間の関係を確認することができます。

さらに、ブランドQFDの優れた点は、コンテクストの強さが数値化(定性的ではありますが)されるところです。したがって、どのコンテクストが支配的で、どのコンテクストが弱いか判断できます。

そして、コンテクストの弱い部分については、広告宣伝をしたり、ブランド属性の開発をしたりして、関係を強化するような、ブランド戦略を立てることもできます。

このように、ブランドQFDは、ブランド知識の構造を把握するために有用です。

2017年7月26日水曜日

ブランドはもういらない

「ブランドはもういらない」という記事を見かけました。

ブランドはもういらない? 消費が後押しする「ブランドレス」


記事を読みますと、特定のブランドを付さずに、その分価格を安くした商品が米国で受けているようです。

通常、ブランドがありませんと、購入者は製品の品質を判断できませんので、普通はあやしくて買わないと思います。

それを避けるために、ロゴを付す部分に、詳しい商品説明が記載されているようです。購入者はそれを読んで、品質を判断できるようです。

商品にロゴ・マークを付すのは「狭義のブランド」といますが、商品に関する構造化された知識を提供するのが「広義のブランド」ですので、記事の事例は、「ブランドはいらない」、「ブランドレス」というようりも、「広義のブランド」に着目した商品といえます。

また、ブランド知識の中でも「品質」が特に重要な知識であることがわかります。

ということで、これからのブランド戦略は、商品の「品質」を購入者に適切に伝えることが重要になってゆくのではないでしょうか。

2017年7月24日月曜日

ブランド知識について

(前記事)
ブランドQFDについて
ブランドの定義について

ブランドとは、「製品・サービスに関する構造化された知識」と勝手に定義しましたが、それでは知識(ブランド知識ともいいます)とは、具体的には何かといえば、その製品を説明するために使用される用語のすべてです。

例えば、原産地、原材料、デザイン、ハードウェア構造、品質、ユーザーの知覚、感想、広告宣伝・・・などです。ほかにもあるかもしれません。

余談ですが、某スーパーのプライベート商品については、以前は、原産地表示がありませんでした(今はあるようですが・・・)。

重要なブランド知識である原産地の情報を顧客が得られませんから、製品の品質を顧客が判断することができません。

この場合、狭義のブランド(PB)は製品に付されているとはいえますが、広義のブランドと言えるかどうかは疑問となります。

一方、フランスのワインなどは、原産国、原産村、原産畑、醸造者、製造年、等級などをエチケットを見るだけで分かるようにしております。つまり、過剰ともいえるブランド知識を顧客に提示しております。

こうすることにより、フランスワインのブランド価値を高めている(すなわち、高く売れる)ことになります。

ブランドQFDで使用する知識は、「ユーザーニーズ」、「品質」、「ブランド属性」の3種の知識です。

これに限られるというよりは、上記3種は、従来のQFDや特許情報解析でも分析に多用される知識ですので、実績もあり流用しやすい事情があります。

もちろんその他にいろいろな情報(デザインなど)を組み合わせても良いのですが、それは今後の課題です。

2017年7月22日土曜日

ブランドの定義について

 (前記事)
ブランドQFDについて

巷では「ブランド」や「ブランド戦略」という言葉が使われますが、そもそも「ブランド」の定義がよくわからないところがあります。

狭義には「自社製品に用いられるマーク等」となりますが、巷で「ブランド」という場合には、それ以上の意味が含まれていることが多いです。

私もいろいろ文献を当たりましたが、「ブランド」の定義を明確に書いているものは少なく、使われ方も文献によりまちまちでした。

ということで、「ブランド」のはっきりした定義はないのですが、 ケラーの「精神的な構造を創り出すこと,消費者が意思決定を単純化できるように,製品・サービスについての知識を整理すること」という考え方が自分にはしっくりきます。

私が考えるブランドとは、「製品・サービスに関する構造化された知識」としたいと思いますが、いかがでしょうか。もちろん、それは違うというお考えもあるとは思いますが・・・。


2017年7月15日土曜日

類似商品・サービスへの対処について

本屋の雑誌コーナーで「類似商品・サービスへの対処について」の特集が組まれた法律雑誌(ビジネスロージャーナルの8月号)を見かけたので、買ってみました。

1000円くらいかと思ったのですが、レジで2500円を請求されて、値段を確認しておけばよかったと後悔しました。

内容としては、弁理士、弁護士の解説が2/3で、残りが企業担当者の座談会でした。

弁理士、弁護士の解説については、特に目新しい部分はありませんでしたが、コメダ珈琲の事件について、弁護士の方が少し興味深い意見を述べられていました。

(その内容をここで書くのもなんですので、ご興味のある方は、ビジネスロージャーナルの8月号をご入手ください。)

しかしながら、1次ソースの決定をまず見ておくことが有用と思いますので、以下のリンクを参照願います(恥ずかしながら、私もこれから読みます。)

平成27年(ヨ)第22042号仮処分命令申立事件

 一方、面白かったのが、企業担当者の方の座談会です。結局のところ、類似商品・サービスへの対処として、訴訟を起こしても、勝ち目が薄い(ほとんど勝てない)ので、どうするか悩みどころとなります。

迂闊に経営陣に積極策を進言しますと、訴訟で負けた時に社内でつるし上げをくらうことがあるそうです。

しかしながら、模倣を見過ごすわけにもいかず、どうしようということになります。

結局のところ、知財担当者としては、上記のコメダ珈琲の事件などを分析して、勝てる道筋をつけるとともに、できるだけ交渉で決着をつけるような作戦しかとれません。

それでも最後は訴訟を提起する場合もありますが、この場合には、勝訴を期待するというよりも、訴えの提起により交渉が前進することを期待したり、訴訟の事実が世に広まることにより、世論の支持を集めることを期待することになります。

企業の知財担当者は大変ですね・・・。

類似商品・サービスへの対処として、訴訟を起こしても、勝ち目が薄い原因としては、ひとつは、不競法に基づく訴訟となっているからです。

そうしますと、 類似商品・サービスへの対処としては、独占排他権たる商標権、意匠権を取ってゆくのが、一番の対処となります。

とはいえ、店舗デザインのようなトレードドレスについては商標登録されにくい事情がありますので、この場合には、不競法2条1項1号で差止請求できるよう、常日頃から証拠づくりをしなければなりません。

例えば、店舗のデザインについては、他の店舗にない特徴的な部分を付加しておくことや、同一の店舗デザインを継続的に使用して周知性を獲得しておくことなどです。

あとは、もう少し不競法で勝てるように法改正でもしてほしいのですが、これは無理ですかね・・・。