2018年5月26日土曜日

ブランドとデザインについて(その3)

「経営に「デザイン志向」取り入れを 特許庁研究会」という記事をネット上に見かけました(新聞社の記事のリンクはすぐに消えてしまいますので、リンクは割愛いたします。)

その新聞社の会員ではありませんので、記事を最後まで読めないのですが、記事の題名の「デザイン志向」は「デザイン思考」の誤りなのではないかと思い、ソースに当たってみました。

どうやら、『「産業競争力とデザインを考える研究会」の報告書を取りまとめました』に関する記事のようで 、昨年の7月からウォッチングしていた研究会の報告書がまとまったようです。

報告書をみますと、「デザイン志向」は使われておらず、なんだかよくわかりませんでした。

以前、このブログでもとりあげましたが、この新聞社は用語の使用が雑という感じがします。おそらく専門知識がない方が記事を書かれているのではないでしょうか。

記事の話はここまでとして、報告書の方も見てましたが、こちらもよくわからない内容となっておりました。

『「デザイン経営」宣言』 なることが主張されておりますが、デザイン思考を取り入れた経営手法は、もう、何年も前から提唱されており、取り入れている企業は取り入れておりますので、ここでことさら強調する意味はあまりないと思います。


デザイン思考を取り入れるため、意匠法を改正するとありますが、これもよくわかりません。

デザイン思考の「デザイン」は意匠ではなく、デザイナーがデザインを行う過程で用いる特有の認知的活動を指す言葉である(ウィキペディアより)とされ、意匠の「物品の外形等」とは概念が異なります。

デザインというのは概念が広い用語ですので、使用する場合には、定義を明確化しませんと、ちぐはぐな感じとなります。(関係ないですが、オープンクローズ戦略も定義を明確としませんと議論がちぐはくします。)

結局、デザインに関する議論をするということで、デザインに関する専門家を集めたら「デザイン思考」の専門家があつまり、デザイン思考の報告書をまとめてしまったという感じでしょうか。

それでは、意匠法の改正の方向性はどのような感じかというと、おおまかにいえば

(1)保護対象の拡大(画像、空間)
(2)存続期間の延長
(3)多意匠保護(関連出願の拡大、多意匠一出願)

のようなことが提案されております。

以前私がこのブログで予想したのは、

(1)周知性を獲得した意匠については存続期間を(10~20年程度)延長
(2) 意匠権の存続期間が満了した意匠については、立体商標の登録を受けやすくする
(3) 不競法も同様の改正を行い、デザインが周知商品等表示として認められやすくする

でしたので、存続期間の延長のみ、当たったようです。

意匠法の改正のみ念頭におかれているようですので、商標法や不競法の改正の議論には到達しなかったようです。

私は、この研究会の趣旨を「ブランドアイデンティティ」 の保護と思っていましたので、商標法の議論は不可避と思っておりましたが、これは勘違いで、デザイン思考で日本企業も頑張ろう、というのが研究会の趣旨のようです。

それでしたら、意匠法の改正も不要ですし、そもそも、デザイン思考と意匠とブランドにどのような関連があるのかどうかよくわからないといいますか、自分でも頭が混乱してきましたので、この話はここで終わりとします。

少なくとも「デザイン」のような多義的な用語に基づく議論を行う場合には、定義を明らかにしておくことは重要と思います。