2015年8月19日水曜日

オープン・クローズ戦略について

本日は、弁理士知財キャラバンの支援員となるための第3回目の研修を受けてまいりました。

本日の研修では、近年話題のオープン・クローズ戦略のお話がありました。

一つ興味深かったのが、オープン・クローズ戦略の定義が現状ではいろいろとあり、一つに定まっていないことでした。

オープン・クローズ戦略の定義は、大まかに言えば、以下の2つに区分できると思います。

①特許出願を行い技術を開示する領域をオープン領域とし、ノウハウ秘匿とする領域をクローズ領域とし、これらを組み合わせる戦略をオープン・クローズ戦略とする。

②自社独占実施をする領域をクローズ領域とし、他社実施を許容する領域をオープン領域とし、これらを組み合わせる戦略をオープン・クローズ戦略とする。

最近流行りのオープン・クローズ戦略の意味は②に近いのではないでしょうか。

②の場合には、オープン領域、クローズ領域に自社特許権があってもかまいませんし、なくてもかまいません。

自社特許がある場合は、自社特許権の独占性によりクローズ領域を容易に形成できますし、オープン領域は他社に無償、もしくは、リーズナブルなライセンス料で実施を許諾することにより容易に形成できます。

自社特許がない場合には、契約によってオープン領域とクローズ領域の境界を定めることになります。

とはいえ、この戦略がうまくゆくかといえば、このままではうまくいかないと思われます。

まず、オープン領域とはいいますが、通常はライセンス料を払うくらいであれば、設計変更して特許権に抵触しないような実施をすると思います。

したがって、オープン領域に他社を誘引する何らかの仕組みが必要となります。

また、オープン領域とするよりも、すべてクローズ領域にして自社で独占実施するほうが利益率は高くなりますので、通常はオープン領域を設けないと思います。

したがって、オープン領域を設けても利益率が低下しない仕組みが必要となります。

オープン領域に他社を誘引する仕組みとしては、標準化が一つの可能性として考えられます。標準化技術は使用することが義務付けられますので、オープン領域と標準の技術内容が重なり合うようにすればよさそうです。

オープン領域を設けても利益率が低下しない仕組みとしては、製品のバリューチェーンを分析し、付加価値の高い場所をクローズ領域とし、付加価値の低いところをオープン領域にして、自社は儲かる部分に専念し、他社には儲からない部分をやらせれば、うまくゆきそうです。

ということで、オープン・クローズ戦略は単に知財だけの問題ではなく、ビジネスモデルや標準化の知識がないとうまくゆく仕組みを作れないということになるかと思います。

あと、中小企業がオープン・クローズ戦略をはたして実行できるかという疑問もあります。

オープン・クローズ戦略を実行するためには、特定の技術領域に、多数の自社知財権を分布させる必要がありますが、中小企業の特許出願件数はそもそも多くはありませんので、少ない知財権ではオープン領域とクローズ領域とをうまく規定できない可能性があります。

そうすると、中小企業向けにアレンジしたオープン・クローズ戦略を開発する必要があると思いますが、どなたか考えてもらえないでしょうか・・・。

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