2012年2月13日月曜日

個人のコア・コンピタンス経営について

私は、生産機械の製造をする仕事をしておりました。この仕事は、機械の設計のみならず、エレキ、ソフトの基本設計、資材の購入管理、工数管理、日程管理等、様々な仕事をせねばならず、プロジェクトを終えると一種の燃え尽き感が生じる程でした。

1つ目のプロジェクトは1年~2年程度でひとまず完了します。その後、2つ目のプロジェクトに関わった時に、仕事のキツさが変わらないということに驚きと絶望を感じました。

1つ目と2つ目のプロジェクトは技術的関連が低い(塗布装置と搭載装置など)ため、2つ目のプロジェクトも「0」からのスタートとなり、仕事のノウハウ蓄積による負荷の軽減を期待できず、同じキツさを繰り返すことになりました。

それでも3つ目のプロジェクトまではこなしましたが、その時点で30歳を超え、トレッドミルのようなこの仕事を続けることは体力的に難しいと判断し、転職することにしました。

そういう部署でしたが、比較的ゆったりと仕事をしている人もいました。その方は、ある特殊な照明装置を開発された方です。照明装置の構造はとても簡単なのですが、汎用性があり、様々な装置に流用されていました。

照明装置の受注があれば、設計図面を工場に流すだけでよいため、特に自分の作業は生じず、仕事を右から左に流すだけの仕事になります。したがって、多くの仕事を同時にこなすことができ、それなりに売上を上げられます。

また、私の場合には製造装置全体を担当する仕事でしたので、装置に不具合が生じれば、土日、深夜を問わず電話がかかってくるような仕事でしたが、その照明装置に関しては、数多く生産され不具合の多くがすでに潰されていますので、緊急の仕事が生じることもありません。

そして、その照明装置に関しては特許権が取得されておりましたので、模倣が生じることもなく、さらに高性能な別の装置が開発されるまでは、安定して受注が得られることになります。

結局私の場合には、何でもすることが逆に競争力を奪うことになり、逆に、照明装置を開発された方は、照明という技術分野に集中することにより競争優位が得られたということになります。

したがって、差別化でき応用範囲の広い特定の分野に集中して実務経験を積み重ねることが、会社内における一つの生き残り戦略になると思います。

ただ、私の場合、いろいろやったことが無駄になったかというとそうでもありません。予算管理を通じて得たお金の知識は会社を作る際に役立ちましたし、広く様々な製造機械に接した経験は、その後明細書を書く際の基礎知識として活用できてます。

まあ、これは会社を辞めたからいえることで、会社に残っていたら過労で倒れていたかもしれませんが・・・。

ということで、広くやるか、狭くやるか、自分のキャリアプランと合わせて考えてみてはいかがでしょうか。

2012年2月10日金曜日

中小企業の特許戦略について

これからの企業には特許戦略が重要といわれています。大企業の場合には、自社の製品・サービスを防護できる特許網を築くことが特許戦略の要となります。したがって、多数の出願を戦略的に出願してゆくことが求められます。

このような大企業の特許戦略については、参考となる文献が多く存在し様々な手法が研究されているため、 これら情報に基づいて自社に適合する特許戦略を構築することが可能といえます。

一方、中小企業の特許戦略については、参考となる文献も少なく、研究されている手法も少ないため、情報不足の感もあり、効果的な中小企業の特許戦略というものは存在しません。

大企業向けの特許戦略を中小企業に適応することは可能な部分もありますが、可能でない部分も多くあります。例えば、中小企業は資力が大企業ほど潤沢ではないため、多数の特許による特許網を構築することは困難といえます。

それでは、中小企業の特許戦略はどのようにすればよいのでしょうか。

まず、オーソドックスに自社開発製品を守ることができるよう特許出願を行なってゆくことが考えられます。

ただし、大企業との競争に巻きこまれないように、ニッチな分野で製品開発を行い、出願を行なってゆく必要があります。また、ニッチな分野であれば出願件数が少なくても製品を保護できる場合もあると思います。

一方、下請けを主とする中小企業の場合には自社製品がない企業も多いと思います。この場合には、保護対象が存在しませんので特許戦略が必要ないともいえます。

しかしながら、特許戦略がない場合には、差別化できずコスト削減競争に巻き込まれることになります。

対応としては、大企業が欲しい技術を、先手を打って技術開発を行い、特許網を築いてしまうことが考えられます。この場合には大企業は高いお金を出してでも技術を入手したいと考えますので、コスト削減の圧力がかかることはありません。

では、先回りして技術開発を行うことは可能なのでしょうか?

方法としては、大企業の特許情報を解析して、大企業の抱える課題を分析し、自社の強みをもってその課題を解決する方法を考案することがあると思います(ソリューションビジネスへの転換ともいえます)。

大企業が課題を提示してくる前に、課題を解決してしまうというのは格好いいと思いますので是非実践してみてください。

2012年2月4日土曜日

3つの I

私は知財に関わる仕事をしておりますが、そのときどきで知財という概念の捉え方が変化している気がします。ここでは「3つのI」で説明したいと思います。

1つ目は、Invention、すなわち発明です。メーカーの技術者であった時代は、技術的優位性を有する発明を行う努力をし、現在は代理人として法的な観点から発明を捉えて明細書の作成を行っています。

発明は、先行技術に対する相違と効果が重要なわけで、いろいろ先行技術をサーチしながら新たな構成要件を加えたりします。したがって、発明の多くは、改良を積み重ねたものになります。

従来は、知財活動といえばこのような発明創出を示すものだったのですが、近年、日本は特許出願件数多い割には事業の強みに結びついていないとの指摘がなされ、実際に国際競争力が低下しつつありました。

2つ目は、Innovation、イノベーションです。 発明は従来技術の改良の積み重ねとなりますので、大きな技術的な変化を伴うわけではありません。日本はこの改良発明に強みを有していました。

ところが、こういう地道な改良を飛び越えた技術革新(イノベーション)がなされる場合があり、イノベーションが生じると地道な改良が全く役に立たなくなりますので、アメリカのイノベーション戦略によって日本の競争力は低下したわけです。

イノベーションを図るには、技術とビジネスモデルの融合を図ることが有効であり、事業部門と開発部門と知財部門の協業、すなわち三位一体の経営が必要となります。

3つ目は、Intelligence、すなわち、情報を生かした事業活動です。知財というのは技術情報の塊と捉えることができ、それらの情報が特許データベースから容易に取り出すことができますので、これを利用しない手はありません。

現在は、特許情報を研究開発活動と結びつけたり、マーケティング活動と結び付けたりできないか考えています。このあたりも、三位一体の経営が必要です。

そこで、Invention、Innovation及びIntelligenceの面から知財の様々な活用を図り三位一体の経営を実現するために立ち上げましたのが、株式会社知財デザインです。

と、最後は宣伝になりましたが、単に特許出願を行うだけでなく、経営に貢献する知財の活用法を様々考えてみることも必要と思います。

2012年1月31日火曜日

リストラについて

NECが従業員を1万人リストラするというニュースを最近聞きました。近年の事業環境の激変に耐えられなくなってきたのでしょうか。

私は以前NECで生産技術者として働いておりましたが、10年ほど前に自主的に退職いたしました。その理由は会社全体がソフトウェア関係の事業を強化する中、自分の居所が無くなりつつあったからです。独身であり身軽だったという事情もあります。

さて、会社と従業員の関係は、以前お話しした大企業と下請けの関係に似ていると思います。つまり、会社が「課題」を提供し、従業員はその「解決手段」を提供します。

会社の「課題」は変化してゆきますから、その「課題」に対する「解決手段」を提供できない従業員はリストラ候補となると考えられます。

私の例でいえば、会社の課題は「ものづくり」から「ソリューション事業」へ変化してゆきましたので、「ものつくり」に対する解決手段しか提供できない私は遅かれ早かれリストラされる運命にあったといえます。

どうすればよいかといえばこれは難しい問題ですが、3つの考え方があると思います。

1つめは、解決手段としてより高度な技能を身につけることです。私の例であれば、生産現場は完全に無くなるわけではありませんので、より高度な設計技術を身につけることにより、生き残りを図る戦術です。

しかしながら、この方法は誰もが考える手段ですので、小さくなるパイの中では椅子取りゲームのように競争が激化し、レッドオーシャンの中に飛び込むことになります。

2つめは、解決手段として現在とは異なる技能を身につけることです。例えば、機械技術者がプログラミング能力を新たに身につけて生き残りを図る戦術です。

しかしながら、新たな技能を身につけるためには多くの時間が必要であり、他部署へ異動させてもらうなどの配慮が必要と思います。しかし、異動希望が叶えられる可能性は低いとも考えます。

3つめは、解決手段を提供することは諦め、課題を提供する側に回る、すなわち、起業するということです。

この場合には会社を辞めなければなりませんのでリスクが高いといえます。会社によっては社内ベンチャー制度もあるようですが、有効に活用されている例はあまり聞きません。

このように、会社で働いている間には、今の技能を高めるという1つめの手段しかとれませんので、競争が過酷になる、つまり生き残れる可能性が低くなるジレンマがあります。

しかしながら、夜間の社会人大学院に通うとか、週末起業をするなどして、2、3つめの手段を取ることも可能ですので、金銭的・精神的に余裕があるうちに次の手をいろいろ考えることも必要と思います。

note へしばらく移転します。

  https://note.com/ip_design  へしばらく移転します。