大変遅ればせながら野村監督の書かれた「弱者の兵法」を読みました。この本には印象に残る考え方(成功する確率の高い作戦を採用するだけ、プロフェッショナルのプロはプロセスのプロなど)が、様々記載されておりますが、知財の仕事をしている当方に特に印象に残った言葉は、弱者が強者に打ち勝つには「無形の力」を使うしか無いという言葉でした。
野村監督が現役当時には王、長島という超天才がライバルとして存在したため、通常の努力ではとてもかなわないことが明白であり、野村監督がどう対処したかといえば情報を様々集めて分析することにより(すなわち、無形の力)、天才を超える成績を残すことを可能としたそうです。
体力や技術(すなわち有形の力)は有限であるのに対し、情報(すなわち無形の力) は無限ですので、アメリカ人に体力が劣り、技術で天才に劣る人間には、この無限の力を利用することが有用であるということです。
さて、企業の経営に話を転じれば、中小企業においてもこの無形の力を利用することが、大企業に打ち勝つ一つの方法といえるでしょう。したがって、技術開発においては特許情報を検索して解析し、自社の戦略にフィードバックすることが必要です。
この無形の力を最大限利用している国といえば、やはり米国でしょう。アメリカは国にCIAという組織があることからもわかるように、企業でも情報の収集や分析に多額の予算を投じております。また、コンペティティブ・インテリジェンスといって、様々な情報を企業の競争力に結びつける研究も盛んです。
また、アップルの株の時価総額は世界一となりましたが、企業価値を構成する要素の大部分が特許やブランド、そして社外秘ノウハウ等の無形財産であるといわれています。
このように強者である米国ですら無形の力を活用しているのですから、日本企業がこの先生きのこるためにも、無形の力を利用することを真剣に考えなければならないでしょう。