ものつくり革新ナビに特許出願及び権利化の戦略について投稿しました。
iPS細胞のような、不確実性の高い技術の特許出願の参考となると思いますので、是非ご参照ください。
(記事はこちらです)
http://www.monodukuri.com/jirei/article/42
この記事を書く際に表現に困ったのが、国内優先権制度の取り扱いです。
国内優先権制度とは、すでに出願した自己の特許出願(先の出願)の発明を含めて包括的な発明として優先権を主張して特許出願(後の出願)をする場合には、その包括的な特許出願
に係る発明のうち、先の出願の出願当初の明細書等に記載されている発明について、新規性、進歩性等の判断に関し出願の時を先の出願の時とする規定です(特許法第41条)。
利用の態様として、以下の例が「特許法概説」 に挙げられています。
(1)単一性利用型
関連のある発明を一つの出願にまとめる手法です。
(2)上位概念抽出型
複数の下位概念の発明をまとめて上位概念化し、発明の範囲を広げる手法です。
(3)実施例補充型
実施例を追加して明細書の記載を充実させる手法です。
具体的な利用の局面としましては、製品発表が迫っている、又は、論文発表が迫っているときに、明細書作成の時間がない場合や、必要なデータが揃っていない場合に、とりあえず手持ちの情報で先の出願を行い、上記(1)~(3)の記載を補充した後の出願を後日行うケースがあります。
これにより、新規性が失われる前に先の出願が行われることになりますので、一安心ということになるはずでした・・・。
しかし、ある判決を境に、 国内優先権制度の有効性について疑問が生じることになりました。
その事件とは、東京高裁平成14(行ケ)539審決取消「人工乳首」事件(裁判所ホームページ)です。
判決の内容についてざっくり申しますと、後の出願で新たに追加した実施例によって、先の出願と後の出願の間に出願された他社の出願に基づいて拒絶されてしまいました。
簡単にいえば、実施例を追加することにより拒絶理由が生じる場合があるということです。
ということで、今後は、国内優先権制度を利用する際には、先の出願の内容を充実させる、ことや、後の出願もできるだけ早く行う、などの対処も必要となるかと思います。
ちょっと細かい話でしたが、 国内優先権制度を利用する際には留意下さい。