ある有望な技術のアイデアがある場合、特許権の取得と製品化のタイミングをどう調整するかは非常に悩ましいところです。
大企業の場合には、自社で製造し販売ルートを確保し、宣伝も行う能力があります(資金も豊富です)ので、特許活動はある程度計画的に行えると思います。
しかしながら、中小企業の場合には、製造を外部に委託したり、場合によっては、大企業に技術を売り込みにいったり、販売ルートを確保したり、そもそも製品化しても採算にのるのか?という様々な課題があります。
ここで、特許活動を先行させた場合にはお金にならない無駄な特許を取得してしまう可能性があります。
したがって、中小企業の場合には、事業化の活動と同期させて特許活動を行い、無駄な特許出願による費用が発生することを防止する必要があると思います。
特許取得までには大まかに言って、特許出願、出願公開、審査請求などのイベントがありますので、その時々の事業化活動の留意点について考えたいと思います
まず、特許出願ですが、特許は早いもの勝ちともいえますので、アイデアが固まった段階で早期に出願する必要があります。
ただし、この段階ではまだ営業活動はしないでください。特許出願から1年6月の間は特許出願の内容は公開されませんので、この間に営業活動をしてしまうと発明を真似され出願されてしまうおそれがあります。
この期間は、改良発明の出願や国内優先の利用を考えて、事業を守れる特許網の構築を行いたいところです。
ただし、直ぐにでも売れそうなどの特別の事情がある場合には、別途秘密保持契約を結んで情報を開示するような営業活動が求められます。
次に、出願公開ですがこの出願公開により、発明の内容は秘密の状態から脱しますので、特許公開公報を手にいろいろな人と会って、事業化の活動を行うことが可能です。
ただし、この場合でも明細書に記載されていない特別のノウハウや改良発明の可能性については模倣を防ぐ意味でうかつにしゃべらないようにした方が無難です。
最後、審査請求ですが、ここではまず請求項の内容の最終確認をしたいところです。最終的な製品はその後の改良などにより、出願当初の請求項の範囲から外れている可能性があります。
したがいまして、この点の確認が必要ですが専門知識が必要ですので弁理士に依頼するのが無難です(費用はかかりますが・・・)。
製品が出願当初の請求項の範囲から外れている場合には、請求項を補正したり、国内優先件制度を利用したり、場合によっては、新たな出願をしたりします。
また、同時に特許になりそうか否か確認をしておきたいところです。審査請求には多少安くはなりましたが費用がかかりますので、ある程度の見通しを持って審査請求することにより、費用をセーブできます。
以上、特許出願のスケジュールから対応を考えて見ましたが、製品化のスケジュールから対応を考えて見たり、研究開発のスケジュールから考えてみると、いろいろな作戦が練れると思います。