先日、某企業の知財部長の方の講演をお聞きする機会がありました。その中で出た話として、このようなものがありました。
知財部長さんのところに、部下が「とても広い請求項の記載で権利化できました!」と喜んで報告にきたそうです。
その知財部長さんは、「で、そのクレームで権利行使できるの?」と部下に一言いったそうです。なかなか厳しいお言葉です。
広いクレームで権利化しろ、とはよく言われることですし、弁理士も請求の範囲を記載する場合には、とりあえず広く書きます。狭いと先輩に怒られたりしますし・・・。
しかし、広いクレームは権利行使のときに無効にされやすいという問題があります。審査の結果、特許されたのだから、後で無効とされるのはおかしいと誰でも思います。
ただし、審査官は地球上すべての文献を調査できるものではなく、まれに調査漏れが生ずる場合があります。
したがって、時間とコストをかけて文献調査を行えば、無効の根拠となる資料を探し出すことも可能かと思います。
ある弁護士の方は1億円の調査費用があれば、大抵の特許は無効とできるとおっしゃってましたし、ある調査専門の弁理士の方は、世の中の特許の8割を無効にできる調査能力が自分にはある、とおっしゃってました(敵には回したくありませんね・・・)。
また、訴訟となると、判断主体が特許庁の審査官ではなく、裁判官となるため、同じ証拠でも、事実認定の相違により異なる判断がされる可能性もあります。
実際に、現在の侵害訴訟の原告勝訴率は2~3割程度であり、敗訴の原因として、権利が無効と判断されたケースが約半分となっており、権利の有効性は非常に厳しく判断されます。
そういう観点からすると、クレームの広さ、狭さは、実際の権利行使や権利の用途によって、いろいろ変えてみることも必要かと思います。
例えば、競合他社への牽制、威嚇にしか用いないのであれば、広いクレームでよいと思います。一方、侵害訴訟の可能性がある場合には、公知技術をほぼ含まないような狭いクレームの権利とする必要があると思います。
現実的には、複数の特許で広い、狭いの役割分担をさせることになるのかと思います。
2014年6月14日土曜日
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