遅ればせながら「下町ロケット」を読みました。知財ネタで直木賞を受賞した異色の小説ですので、知財業界に身をおくものとしては読まねばならないと思いました。
話のスジとしましては、主人公の経営する中小企業の特許権をめぐって、大企業との熾烈な知財の争いが描かれます。この話の中心となるのは主人公が有する大企業を脅かすほど強力な特許権の存在です。
さらに詳しくは本を読んでいただくとして・・・、実際に中小企業が大企業を脅かすほどの特許を持つことがあるのでしょうか?
大企業が攻めぎ合っている分野に中小企業が進出しても物量(ヒト、モノ、カネ)で力負けてしまいます。したがって、中小企業の技術開発はニッチな分野を見つけて行われ、その特許は大企業の特許取得の範囲と重複しない範囲となるはずです。
発明は累積的な課題解決の結果なされるものであって、ある日突然、強力な特許が出来上がるわけでもありません。したがって、大企業と中小企業とは発明の方向性は自ずと異なり、自然に棲み分けができるのではないでしょうか。
小説の中では主人公が会社の業務内容とは別に独自に開発した特許技術となっていますので、研究開発に余力のある会社なのでしょうが、事業的には無駄な特許権のままとなる可能性が高いです。もちろん、経営者が将来的に大企業とやりあう覚悟があれば別ですが・・・。
いずれにせよ、これだけ正面から特許権の財産的活用をエンターテイメントとして扱った作品はありませんから、企業で知財に関わる方、特に中小企業の方には読んでいただきたい作品です。
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