特許権をとる意味としては他社に対する参入障壁を築くことがあります。
これは、自社技術について独占排他権である特許権を多数取得して特許網を築くことにより、他社が自社事業に侵入することを防止し、事業を独占するという考えです。
大企業の場合には多数の特許出願を行うことができるため、特許権による参入障壁を築くことが知財戦略の基本となります。
一方、中小企業の場合には、多数の特許出願を行うことができないため、完全な参入障壁を築くことはできません。したがって、特許出願をしても無駄になることが多く、特許出願の意義について疑問をもつ企業も多いのではないでしょうか。
しかしながら、特許権というものは参入障壁という機能を持つだけではなく、参入促進という機能も持つことにも留意が必要です。参入促進機能としては以下のようなものがあるかと思います。
1つ目は、他社から権利行使されにくくなることです。中小企業が新規事業に参入する場合には、既にその事業領域に存在する企業から特許権の行使等の妨害を受けることとなります。
その場合、必須特許を1、2個持っていれば、 他社から権利行使される可能性が低くなります。なぜなら、こちらには必須特許があるので、訴えられたら訴え返せばよいからです。訴訟合戦を防ぐためにも相手は権利行使に慎重になるでしょう。
2つ目は、アライアンスの目安となることです。大企業は常に特許情報に目を光らせてますので、特許出願を行うことにより、自社の技術が大企業の目に留まる可能性があります。技術の補完効果が高ければ大企業とのアライアンスにより、その技術分野に参入することができます。
3つ目は、銀行から融資を受けやすくなることです。必須特許をいくつか保有していれば、会社の技術力の証明になりますし、事業が成功する可能性も高まりますので銀行から融資を受けやすくなります。資金力があれば新規参入も容易になるでしょう。
このように、中小企業の場合には、特許権の参入促進機能が今後は重要となると思います。
また、中小企業の特許戦略は、ただ特許出願を沢山だすのではなく、必須特許に絞って、効果的に出願を行うことが重要と思いますので、特許戦略を立てる場合には参考にしていただければと思います。
2012年3月7日水曜日
2012年3月4日日曜日
知財コンサルティングについて
最近、知財コンサルティングという言葉をよく聞きます。知財コンサルティングとは、知財によって顧客の課題を解決することをいいます。
知財コンサルティングの背景としては、特許出願の数が企業の競争力強化に必ずしもつながっていないことや、特許出願件数が減少し特許出願以外の業務を開発する必要がある弁理士側の事情などがあります。
知財コンサルティングの手法については開発途上であり、確固たるコンサルティングスタイルはありません。現状の知財コンサルティングは以下の2つのスタイルがあると思います。
一つ目は、一般的な経営コンサルティングを主体とする方法です。これは、財務分析、SWOT、3C、4P、バランストスコアカード、バリューチェインなど既存の経営コンサルのフレームワークを使用して行うコンサルティングです。
この手法の場合には、知財が考慮される部分が少なく、知財コンサルティングではなく、ただの経営コンサルティングとなる場合があります。
経営コンサルティングの結果に基づいて、特許出願をしましょう、知財教育をしましょう、となりますので、経営上の課題と、解決手段としての知財と、の結びつきのロジックが弱くなります。
二つ目は、コンテンツコンサルティングです。これは、特許出願しましょう、知財教育をしましょう、とひたすら顧客に提案する手法です。
この手法は顧客の課題を解決するものではなく、解決手段を顧客に提示するのみでありますので、顧客が課題を認識していない場合には効果がありません。
このように、解決手段としての知財権の取得につながる、実践的な課題分析手法がない、ことが現状の知財コンサルティングの課題ということができると思います。
この課題を解決するための一つの方法としては、特許情報を活用することがあると思います。特許情報には様々な情報が含まれていますので、これを利用して経営分析を行えば、経営と知財権との関係が明らかになるのではないでしょうか。
例えば、特許情報を3C分析に適用する場合を考えれば、「市場(customer)」については、特許情報のマクロ分析により技術動向を分析することが可能です。「競合(competitor)」、「自社(company)」については、出願人ごとの出願件数や技術動向を分析することが可能です。
さらに、特許解析ソフト(マップソフト)を使用すれば、技術内容の対比や、時系列変化を自動的にPCで処理したアウトプットを容易に得ることが可能です。
このように既存の手法をアレンジすれば簡単にアイデアが出ると思いますので、特許情報を活用した知財コンサルティング手法をいろいろ開発してみてはいかがでしょうか。
知財コンサルティングの背景としては、特許出願の数が企業の競争力強化に必ずしもつながっていないことや、特許出願件数が減少し特許出願以外の業務を開発する必要がある弁理士側の事情などがあります。
知財コンサルティングの手法については開発途上であり、確固たるコンサルティングスタイルはありません。現状の知財コンサルティングは以下の2つのスタイルがあると思います。
一つ目は、一般的な経営コンサルティングを主体とする方法です。これは、財務分析、SWOT、3C、4P、バランストスコアカード、バリューチェインなど既存の経営コンサルのフレームワークを使用して行うコンサルティングです。
この手法の場合には、知財が考慮される部分が少なく、知財コンサルティングではなく、ただの経営コンサルティングとなる場合があります。
経営コンサルティングの結果に基づいて、特許出願をしましょう、知財教育をしましょう、となりますので、経営上の課題と、解決手段としての知財と、の結びつきのロジックが弱くなります。
二つ目は、コンテンツコンサルティングです。これは、特許出願しましょう、知財教育をしましょう、とひたすら顧客に提案する手法です。
この手法は顧客の課題を解決するものではなく、解決手段を顧客に提示するのみでありますので、顧客が課題を認識していない場合には効果がありません。
このように、解決手段としての知財権の取得につながる、実践的な課題分析手法がない、ことが現状の知財コンサルティングの課題ということができると思います。
この課題を解決するための一つの方法としては、特許情報を活用することがあると思います。特許情報には様々な情報が含まれていますので、これを利用して経営分析を行えば、経営と知財権との関係が明らかになるのではないでしょうか。
例えば、特許情報を3C分析に適用する場合を考えれば、「市場(customer)」については、特許情報のマクロ分析により技術動向を分析することが可能です。「競合(competitor)」、「自社(company)」については、出願人ごとの出願件数や技術動向を分析することが可能です。
さらに、特許解析ソフト(マップソフト)を使用すれば、技術内容の対比や、時系列変化を自動的にPCで処理したアウトプットを容易に得ることが可能です。
このように既存の手法をアレンジすれば簡単にアイデアが出ると思いますので、特許情報を活用した知財コンサルティング手法をいろいろ開発してみてはいかがでしょうか。
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