2015年7月16日木曜日

法的妥当性について

プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する最高裁判決が平成27年6月5日にありました。

それに応じて、特許庁における審査・審判の取り扱いも修正されました。
(特許庁HP http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C150706.htm )

今後は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合は、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であると判断し、拒絶理由を通知されることになります。

簡単に言えば、プロダクト・バイ・プロセスクレームを書いてはダメ、ということになるでしょうか。

今回の判決により請求項の表現は著しく制限されることになります。 技術分野によっては、発明の保護が十分に図れないという事態が生じるのではないでしょうか。

裁判官は、こう判断することが法的に妥当であると判断したと思いますが、たかだか4名の判事による判断が対世的に効力を持つことに、少々怖さを感じます。

特許は、法律、技術、ビジネスの境界に存在するため、各方面からの検討が必要と思います。しかし、裁判官は、法的妥当性から判断を行います。そうすると、今回の判決は技術的に妥当なのかという疑問があります。

近年、侵害訴訟の原告勝訴率が20%くらいしかないことが問題となっています。裁判官の方のお話を伺ったことがありますが、勝訴率うんぬんを問題にするのはよろしくない、というようなニュアンスの話をされておりました(正確ではありません。)

もちろん、法的には妥当な判断をされていると思いますが、それだけでよいのでしょうか?

企業はボランティアで特許出願をしているわけではありませんので、勝訴率が20%では、特許出願はしませんし、特許権があっても権利行使はしません。

そうすると、権利はあるのに行使しないという、法的に歪んだ状態が作り出されますし、権利行使がされないということは、そもそも、特許法が無意味化(いらない?)するという、法的に変な状態となります。

そう考えると、裁判官の判断が国民経済に不利益な方向に向かわないようにコントロールする必要があると思います。その一つの方法が、適切な立法をしてゆくことがあるのかと思います。

プロダクト・バイ・プロセスクレームについても、ビジネス、技術の分野の方々から、請求項の記載のあるべき姿をヒアリングし、必要であれば立法化してゆくことも必要なのかと考えます。

【PR】“AI、生成AI”による知財業務の効率化、スピード化のセミナーについて(9/27開催)

掲題の件、セミナーの1/4を担当することになりました。私の担当分は、「【第2部】生成AIで革新する特許データ分析」です。URLは以下となります。 AI 生成AI 特許調査 分析 翻訳 技術情報協会はセミナー・出版・通信教育を通じて企業の最前線に立つ研究者、技術者をサポートし社会に...