先日のニュースで弁護士の就職難が深刻化していることが報じられました。弁護士会の会費は年間50万円程だそうで、それ以上の売上を上げられなければ登録すらできません。
一昔前では弁護士といえば高収入が保証された仕事でしたが、なぜこのような事態となったのでしょうか。弁護士の需要と供給に不均衡が生じていることが主たる理由と思いますが、知識の価値が低下してることも理由の一つと思います。
弁護士になるには1日24時間厳しい勉強をして法律の知識を身につけなければなりません。昔はこの知識自体に非常に価値があったといえます。しかしながら、ネットが普及した現在ではある程度の法律の知識は無料で入手できますので、知識の価値は低下しているといえるでしょう。
また、社会の変化が早く、複雑化しており、所詮過去の体系である知識がたくさんあっても役に立たないという事情もあると思います。
現在求められているのは、 知識を使いこなす知恵だと思います。知恵はネットを調べて身につくものではなく、また、社会の変化や複雑化に対応するために必要な能力と思います。
ただし、知恵というものは学校で学べるものではなく、実務を通じて悩んだり、課題を解決することを通じて身につくものと思います。そう考えると、就職先のない弁護士はまずどうにかして実務経験を得る必要があるということになります。
では、実務経験を積めば安心なのかというとそうでもありません。 実務に注力しすぎて知識のインプットが不足してくると、自分の中の知識が陳腐化してゆきます。知恵というのは、知識の組み合わせを考えることですので、知識が陳腐化すると知恵も陳腐化してしまいます。
また、知識が不足していると知識の組み合わせの数も不足しますので、知恵の絶対量も不足することになります。このように、知識と知恵というものは、互いに関係するものであり、実務経験を積みつつ継続して知識を増やす努力が必要といえます。
そういう意味では、ロースクールとは、実務経験のある社会人を受け入れたり、実務家教員を雇ったりして、実務と知識をうまくバランスさせることができる筈でしたが、就職難が生じていることを考えると、まだまだ改善の余地があるようです。