2012年2月17日金曜日

特許権の売却について

この仕事をしていると特許権を売却したいとの要望が寄せられることがあります。この場合には買ってくれそうな企業を当たるとか、特許流通業者の方に相談するなどの対応をとります。

しかしながら、適当な売却先を見つけることは非常に難しいです。以前、特許流通業者の方に相談したことがあったのですが、「この特許は売れません」の一言で帰られてしまいました。専門業者の方でこの状態ですから一般の方が売却先を見つけることはほぼ不可能といえるでしょう。

特許権は知的財産権の一種であり財産的価値があるとされます。したがって、すぐに売れてもいいような気がしますが実際にはそうはなりません。なぜでしょうか?

私の勝手な考えでは、その理由は特許権自体の価値が見えないためだと思います。特許権の中身を示す特許明細書は単なる法律的、技術的言語の羅列にすぎませんので、価値がよくわかりません。 したがって、特許権を売るためには、特許権の価値が見えるようにしなければなりません。

価値を可視化する一つの手段としては、具体的な特許製品(自動車など)を提示して売り込み、この製品に付随した形で特許権を売り込むことが考えられます。具体的な製品があれば技術的な価値がわかりますし、売れそうかどうか経済的な価値も判断できます。

二つ目の手段としては、特許権を購入した場合、収益が向上する企業を見つけて営業することが考えられます。例えば、自動車のメーカーに対して、この特許権の技術を導入した場合には、さらに燃費が向上し商品性が上がるなどのプレゼンを行えば購入につながるかもしれません。

そのような企業を探す方法としては特許情報を活用することが考えられます。特許明細書の特許分類や技術キーワードに基づいて特許調査を行い、検索結果に頻出する出願人や権利者が営業の候補となると思います。

このように、特許権自体に価値は見出しにくく、特定の製品やビジネスモデルと組み合わさった場合にのみ、その価値は明確になります。

したがって、特許権を売却する場合には、特許明細書の記載のみでプレゼンするのではなく、製品や収益モデルも合わせてプレゼンすることも考えてみてはいかがでしょう。

2012年2月13日月曜日

個人のコア・コンピタンス経営について

私は、生産機械の製造をする仕事をしておりました。この仕事は、機械の設計のみならず、エレキ、ソフトの基本設計、資材の購入管理、工数管理、日程管理等、様々な仕事をせねばならず、プロジェクトを終えると一種の燃え尽き感が生じる程でした。

1つ目のプロジェクトは1年~2年程度でひとまず完了します。その後、2つ目のプロジェクトに関わった時に、仕事のキツさが変わらないということに驚きと絶望を感じました。

1つ目と2つ目のプロジェクトは技術的関連が低い(塗布装置と搭載装置など)ため、2つ目のプロジェクトも「0」からのスタートとなり、仕事のノウハウ蓄積による負荷の軽減を期待できず、同じキツさを繰り返すことになりました。

それでも3つ目のプロジェクトまではこなしましたが、その時点で30歳を超え、トレッドミルのようなこの仕事を続けることは体力的に難しいと判断し、転職することにしました。

そういう部署でしたが、比較的ゆったりと仕事をしている人もいました。その方は、ある特殊な照明装置を開発された方です。照明装置の構造はとても簡単なのですが、汎用性があり、様々な装置に流用されていました。

照明装置の受注があれば、設計図面を工場に流すだけでよいため、特に自分の作業は生じず、仕事を右から左に流すだけの仕事になります。したがって、多くの仕事を同時にこなすことができ、それなりに売上を上げられます。

また、私の場合には製造装置全体を担当する仕事でしたので、装置に不具合が生じれば、土日、深夜を問わず電話がかかってくるような仕事でしたが、その照明装置に関しては、数多く生産され不具合の多くがすでに潰されていますので、緊急の仕事が生じることもありません。

そして、その照明装置に関しては特許権が取得されておりましたので、模倣が生じることもなく、さらに高性能な別の装置が開発されるまでは、安定して受注が得られることになります。

結局私の場合には、何でもすることが逆に競争力を奪うことになり、逆に、照明装置を開発された方は、照明という技術分野に集中することにより競争優位が得られたということになります。

したがって、差別化でき応用範囲の広い特定の分野に集中して実務経験を積み重ねることが、会社内における一つの生き残り戦略になると思います。

ただ、私の場合、いろいろやったことが無駄になったかというとそうでもありません。予算管理を通じて得たお金の知識は会社を作る際に役立ちましたし、広く様々な製造機械に接した経験は、その後明細書を書く際の基礎知識として活用できてます。

まあ、これは会社を辞めたからいえることで、会社に残っていたら過労で倒れていたかもしれませんが・・・。

ということで、広くやるか、狭くやるか、自分のキャリアプランと合わせて考えてみてはいかがでしょうか。

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