本日は弁理士会の研修で、「発明の単一性の要件」及び「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準の改訂について勉強して参りました。
この中の「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」とは、平成18年の特許法改正により新たに設けられた規定で、特許法第17条の2第4項に以下の規定があります。
前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。
上記規定の「第三十七条の発明の単一性の要件を満たす」とは、特別な技術的特徴(STF)を共有する関係をいいます。
そして、発明の特別な技術的特徴(STF)を変更する補正は、拒絶の理由(特49条1号)となります。
なぜこのような規定が設けられたかといえば、請求項の補正を自由に認めると審査の負担が増えるからです。つまり、審査に時間を掛けたくないという行政庁からの要望により設けられた規定といえます。
私はここ数年この規定に非常に悩まされてきました。本規定の認定は審査官の裁量が大きく、多少乱用気味の時期もあったと思います。
請求項に進歩性なし(29条違反)⇒進歩性もないのでSTFもなし(37条違反)⇒STFを追加する補正は技術的特徴の変更に該当(特17条の2違反)の連続攻撃には非常にまいりました。
ストリートファイターというゲームにコンボ攻撃というものがありました、まさにこのような抜けられない状態となり非常に困りました。
特許法第17条の2第4項の拒絶理由が通知されると、審査官の裁量が大きいため反論は事実上不可能であり、審判を請求するか分割出願を行い、審査官、審判官を違う人にするしかありません。
ただし、資力に乏しい中小企業の場合には、審判や分割出願を行うことは費用的に難しい場合もあり、その場合には拒絶理由を受け入れるしかありません。
ただし、これは非常に問題です。なぜなら、 特許法第17条の2第4項の拒絶理由は形式的要件にすぎないからです。
新規性や進歩性のような実体的要件により拒絶されるのであれば、権利化をあきらめることもしょうがないと思いますが、補正の仕方うんぬんで権利化できないのは問題があります。
例えば、青色LEDの製法のような革新的な発明が、補正うんぬんで拒絶されてしまっては、国家的損失につながると思います。
さらに、このような形式的要件にエネルギーを投入することは非生産的でもあり、知財の創造という生産的な活動にエネルギーを投入したいという希望もありました。
さて、本規定の運用はよほど評判が悪かったのか、平成25年7月1日以降の審査から運用が変わりました。
具体的には「必要以上に厳格に適用することがないようにする」だそうです。今後の審査がよりよく改善されることを期待しております。