2012年11月17日土曜日

技術と用途について

最近寒くなってきて、いよいよ鍋の季節になってきました。鍋といえば、レモン鍋というものが登場したことをニュースで知りました。

http://mainichi.jp/select/news/20121116mog00m040018000c.html

レモンに鍋とは思いもつかない組み合わせですが、ニュースにあるように美味しいのであれば、なかなか面白いアイデアと思います。

日本のような人口が減少局面にある国では、レモンのようなコモデティの需要は、伸びることはないと思います。

ただし、新たな用途を見つけ出せば、新たな用途向けの需要が生まれますので、レモンの需要が伸びる可能性があります。

また、皮ごとに煮込めるというのは国産レモンならではですので、安い外国産レモンに需要が流れるおそれもありません。

このように新たな用途を見出す、というのはレモンに限った話ではありません。技術でも同じことがいえます。

例えば、富士フィルムという会社は優れたフィルム製造技術を有しています。ただし、写真用のフィルムの需要は、デジカメの普及もあり、現在ではほとんどなくなりました。

それでは、富士フィルムのフィルム製造技術は消滅したかというと、そうではありません。

現在は、液晶ディスプレイ用の光学フィルムに用途を変えて、フィルム製造技術の開発が続けられております。

このように新たな用途を見出せば、技術が生き残る可能性もでますし、さらに、発展してゆく可能性もあります。

では、新たな用途を見出すにはどうしたらよいかといえば、方法の一つに特許情報の利用があると思います。

IPDLのキーワードに技術内容を簡単に入れて検索を行えば、関連する出願が何百とヒットしますので、それらをざっと見れば技術がいろいろな用途に使用されていることがわかると思います。

このように既存の用途にこだわらず、新規の用途を探してゆくことは、いろいろな分野でも応用がきくと思います。

現状に行き詰まったら、新たな世界を目指すことが必要なのかもしれません。

2012年11月3日土曜日

技術力と事業について

「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか」は妹尾先生の有名な本ですが、技術開発をやっている人間にとっては、どうしても技術力の向上が目的化してしまう傾向があります。

私も技術者をやっていたためか、無意識にそういう考えをしてしまうことがあります。

何年か前、母校の大学を訪問し、私の元指導教官とお話する機会がありました。最近の日本の競争力低下が話題になりましたが、私は「日本は自動車よりナノテクのような未来の技術に投資したほうがよいのではないか」などど意見を述べたところ、元指導教官にこう言われました。

「ナノテクは扱う質量が小さいので雇用を生み出す産業になりにくい。その点、自動車産業は裾野が広く雇用を生み出し、日本人がそれで生活できる。ナノテクは果たしてそういう産業になるのか?」

もちろん、ナノテクも技術の発展によっては主要な産業になる可能性はあると思いますが、当時の私は、技術力のみ目を奪われ、日本人全体の生活にまで考えが及んでいませんでした。

つまり、技術力はあくまで手段であって、日本人の生活向上が目的であるという当たり前のことに気がついていなかった訳です。

そう考えれば、技術力というのも必ずしも必須の要件では無いことにも気が付きます。

例えば、日露戦争で活躍した戦艦三笠は日本製ではなくイギリス製です。当時の明治政府の首脳は、戊辰戦争、西南戦争などの戦火の生き残りですので、最新の兵器しか役に立たないことが実感としてあったとされます。

したがって、戦争に勝つ目的のために、外国の最新技術を導入することは当たり前であり、自国技術にこだわることはありませんでした。

また、企業には知財部というものがあり、主に特許出願業務などを行なっていますが、今から40~50年くらい前は特許部といい、その主な業務は、外国からの技術導入でした。

当時の日本企業は発展途上であり、外国の優れた技術を導入して事業化するのが一般的でした。当時の特許マンはアメリカ、ヨーロッパを飛び回り、いろいろな企業のライセンスを得ることが、重要な任務でした。

外国の空港で、ライバル企業の人間と出会うと、どのような企業とライセンス交渉を行なっているかバレてしまいますので、海外では変装したり、中国人を装っていたりスパイ小説のようなこともあったそうです。

しかしながら、日本企業はこのライセンス導入により大きく力をつけ、現在。世界的な成功を得ることができたのは、ご存知のことと思います。

まとめますと、技術力というのはあくまでも手段であって、目的ではありません。技術力があっても事業に失敗することはありますし、逆に、技術力がなくても事業に成功することは可能です。

したがって、まずは、目的を明確化することが必要といえるでしょう。

2012年10月27日土曜日

文章の構成について

現在、知財学会にて発表する資料を作成しています。

こういう資料を作成する場合には、その内容が重要なのは当然なのですが、どちらかといえば文章の構成に悩む場合が多いです。

文章の構成が悪いと、論理の流れを追えなくなりますので、聞いている人はその内容を理解できなくなります。

特に、学会で発表する内容は、聴衆の方も初めて聞くような内容となりますので、論理を補完できず、理解できなくなる可能性が高くなります。

これでは、どんな素晴らしい内容でも、他の人の理解を得ることはできない、というもったいない状況となります。

私も、1週間悩んでおりますが、解決法を今思いつきました。それは、まず、ロジックのみのテンプレートを作成して、それに内容を当てはめてゆくというものです。

これなら、ロジックだけは完成されておりますので、少なくとも内容は理解していただけると思います。

それでは、適当なテンプレートはないかと思いましたが、やはり、自分が日頃から接している特許明細書のテンプレートが使いやすいと思いました。

特許明細書の構成は次のようになってます。

1.発明の名称
2.技術分野
3.背景技術
4.発明が解決しようとする課題
5.課題を解決するための手段
6.発明の効果
7.発明を実施するための形態
8.実施例

特許明細書は、世界的にほぼ同一のフォーマットで作成されますので、特許明細書の論理的な流れは、世界的にも妥当だと認められていると思います。

今回の発表は、「発明」ではありませんが、論理の流れは流用できそうです。

あとは、内容ですが、こちらは、まだまだ時間がかかりそうです・・・。

2012年10月20日土曜日

iPS細胞と国内優先権制度について

ものつくり革新ナビに特許出願及び権利化の戦略について投稿しました。

iPS細胞のような、不確実性の高い技術の特許出願の参考となると思いますので、是非ご参照ください。

(記事はこちらです)
http://www.monodukuri.com/jirei/article/42

この記事を書く際に表現に困ったのが、国内優先権制度の取り扱いです。

国内優先権制度とは、すでに出願した自己の特許出願(先の出願)の発明を含めて包括的な発明として優先権を主張して特許出願(後の出願)をする場合には、その包括的な特許出願 に係る発明のうち、先の出願の出願当初の明細書等に記載されている発明について、新規性、進歩性等の判断に関し出願の時を先の出願の時とする規定です(特許法第41条)。

利用の態様として、以下の例が「特許法概説」 に挙げられています。

(1)単一性利用型
関連のある発明を一つの出願にまとめる手法です。

(2)上位概念抽出型
複数の下位概念の発明をまとめて上位概念化し、発明の範囲を広げる手法です。

(3)実施例補充型
実施例を追加して明細書の記載を充実させる手法です。

具体的な利用の局面としましては、製品発表が迫っている、又は、論文発表が迫っているときに、明細書作成の時間がない場合や、必要なデータが揃っていない場合に、とりあえず手持ちの情報で先の出願を行い、上記(1)~(3)の記載を補充した後の出願を後日行うケースがあります。

これにより、新規性が失われる前に先の出願が行われることになりますので、一安心ということになるはずでした・・・。

しかし、ある判決を境に、 国内優先権制度の有効性について疑問が生じることになりました。

その事件とは、東京高裁平成14(行ケ)539審決取消「人工乳首」事件(裁判所ホームページ)です。

判決の内容についてざっくり申しますと、後の出願で新たに追加した実施例によって、先の出願と後の出願の間に出願された他社の出願に基づいて拒絶されてしまいました。

簡単にいえば、実施例を追加することにより拒絶理由が生じる場合があるということです。

ということで、今後は、国内優先権制度を利用する際には、先の出願の内容を充実させる、ことや、後の出願もできるだけ早く行う、などの対処も必要となるかと思います。

ちょっと細かい話でしたが、 国内優先権制度を利用する際には留意下さい。

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