2014年5月6日火曜日

専門性と差別化について

先日、旅行の帰りに某地方都市のアウトレットモールに行ってきました。よく知らなかったのですが、アウトレットモールは現在大人気だそうで。なかなかの人手でした。

普段の私はスーツ姿の人に囲まれていることが多いですが、こういう所へゆくと普段見慣れない人たちを観察でき、非常に興味深いです。

やはり、こういう所で驚くのは、若い人たちのファッションです。金髪に近いややショートの茶髪に、西部警察のようなサングラス、 浅黒い肌というルックスの方が、4、5人の集団で歩いていました。

集団で歩いていますので、何かのコスプレかと思いましたが、今流行しているファッションのようです。ただし、皆同じ格好ですので、個性がないというか、わざと無個性にしているのか、とも思いました。

無個性の理由を私なりに考えた結果、これは、個性的であろうとした結果、逆に無個性になってしまったのではないかと思います。

ファッションで個性を出そうとすると、ファッション雑誌やネット情報でいろいろ流行を研究して、自分にあうアイテムを購入するパターンが多いと思います。

しかし、流行にうるさい他の方も同様にファッションを研究して、アイテムを購入すると思いますので、研究熱心であれば有るほど、皆似たようなファッションとなり、個性を出そうとすればするほど、無個性化するというジレンマがあるのではないかと思います。

とはいえ、こういう現象は若者だけに限るわけではありません。以前某研究所の方々と名刺交換する機会があったのですが、最初に名刺交換した方は、名刺に「博士」と入っており、すごいなと思いました。

しかし、以後名刺交換した方々も、名刺に「博士」と入っており、この研究所では「博士」であることが当たり前であり、博士号を持っているだけでは無個性な存在となってしまいます。そうすると、研究所で生き残るためには、さらに差別化のための工夫が必要となると思います。

こういう話は博士に限らず、例えば、法律事務所の弁護士や、特許事務所の弁理士にも同様なことがいえると思います。

差別化のために他の専門性を付加することが良いような気もしますが、人間の能力や時間には限りがありますので手を広げることは効率が悪く、実現性はあまりありません。

そこで、自分の専門分野のレベルを効率よく高めることを考えますが、他のライバルも同様に研究をしておりますので差別化につなげることは難しく、とても優秀な人以外は無個性化するジレンマがあると思います。

そうすると、若者も私のようなおっさんも、個性を出すことは難しいという点で、悩みは同じということになるかと思います。

結局のところ、その分野のリーダ的な存在となることが解決手段の一つと思いますが、そのレベルに到達できるのは一握りの人間のみかもしれません。

2014年3月16日日曜日

始めることと、やめることについて

私は、twitterやっておりまして、タイムラインにリンクされるブログ等をたまに見ることがあります。

そうすると、たまに感銘を受ける意見など見つけることがあります。先日もうなづける意見を見かけました。

内容としましては、起業の相談でして、新しく起業したいのだけれど、今の仕事を辞めなければならなく、どうしたらいいと悩んでいる人への回答でした。

回答としましては、まず始めることだけを考えた方が良い、今の仕事を辞めるのはその次に考えれば良い、とのことでした。

起業というのは自分のアイデアを試す場でもありますので、できるだけ早く始めることが重要です。 しかしながら、成功するかしないかは運次第の面もありますので、リスクが高い状況にもなります。

そこで、今の仕事を続けながら新しいことにチャレンジすれば、現在の仕事から生活に必要な収入は得られますし、起業がうまくゆくか知見も得られることになります。

もちろん、会社には副業禁止規程がある場合もありますので、その場合には会社を辞めざるを得ませんが、できるだけ粘ってみるのもいいかもしれません。

そういえば、バイオベンチャーが生き残る方法について、以前見聞きしたことがあるのですが、これも似たようなものがありました。

バイオ関連の製品は実用化に十年単位の時間が必要となりますので、メインの仕事のみで事業を進めますと、資金不足で立ちいかなくなる可能性が高くなるそうです。

したがって、事業内容に、試験業務や検査業務などの日銭を稼げる仕事を含めたほうがいいそうです。これなら、ある程度の収益を得られますので、製品上市まで生き残ることができる可能性が高まります。

こういう考えは、いわゆるリスク分散、リスクヘッジ、リスクマネジメントなどとも言われます。

資本主義の世界では、リスクがリターンにつながることになります。ただし、リスクが高いということは、失敗する可能性も高まりますので、リスクを自分が取れる範囲に制御する必要があります。

会社を辞めて起業することは非常にリスクが高いので、大きなリターンを得られる可能性は高まりますが、同時に、大きな負債を抱える可能性もあります。

したがって、自分が採れるリスク量を見積もり、適切なリスク分散を図ることが重要となります。

例えば、独身の人や、家が金持ちの人などは、比較的リスクが取りやすいので、後先考えず起業してもよいかもしれません。その場合にはうまく行けば、高いリターンを得られるでしょう。

一方、家庭がある人や、借金しなければ起業できない人の場合には、リスク分散を真剣に考える必要があると思います。この場合、成功しても得られるリターンは下がりますが、徐々にリスクを採れるような仕事を増やしてゆけばよいと思います。

世間一般の常識では、一つの仕事を続けながらもう一つの仕事を始めることは、男らしくないとか、自分を追い込んでないので失敗するとか、真剣味がないとか外野からいろいろ言われることになります。

しかしながら、過剰にリスクをとった場合には、失敗したときに再起不能となるおそれがあります。やはり、自分や家族の生活が一番重要なのであり、起業などというものは、生活を守る範囲でやればいい程度のものと思います。

したがって、こういう外野の声は無視して、まずは、自分の置かれた状況や資金量を冷静には把握して、採れるリスクを見積もり、自分に採れるリスク内で起業することが、自分の身を守るためには必要と思います。

2014年3月6日木曜日

知財のガラパゴス化について

先日研修で大企業の知財部長の方のお話を聞いてまいりました。

やはり大企業ということで、グローバルな観点から知財を捉えている点に強い印象を受けました。

その中で少々気になりましたのが、日本への特許出願の位置づけです。大企業の方から見れば、もはや日本は世界の中の一地域に過ぎません。

大企業は、出願して意味のある国には出願しますが、意味のない国には出願しません。日本はどちらかと言えば、出願する意味のない国になりつつあるようです。

その理由としては、まず、訴訟の勝訴率が低いことがあります。現在日本の特許訴訟の勝訴率は20%位といわれています。

簡単にいえば裁判になれば負けるわけですので、事実上権利行使不能といえます。コストをかけて特許権を取得しても、お飾りにすぎないともいえます。

一方、米国や中国などでは特許権者は訴訟を起こして、侵害する会社を排除することが日常的に行われておりますので、これら国に重点的に出願をすることが経営上有効となります。

さらに、米国などでは特許権の売買も積極的に行われており、特許権自体が価値を持ちますので、このような国で特許権を取ることは、資産形成上にも役に立ちます。

一方、日本では特許権を単独で売却することは難しく、売却できても売却金額は特許権の取得・維持に要した費用程度にしかなりません。

結局、企業のグローバル化が進むと、日本で特許出願する意義が弱くなります。ある企業の方が今でも日本に出願する理由として、技術者のモチベーションの維持くらいしかない、とおっしゃってました。

出願をやめると技術者のモチベーションが下がるので、 お付き合い程度に日本に出願しているといえます。したがって、明細書の品質は特に高くなくてもよいので、安く仕事をしてくれる特許事務所に仕事を出すそうです。

弁理士には辛い話ですが、これが今の日本の現実のようです。

そういう意味では、日本の知財制度はガラパゴス化しているのではと考えます。もう少し特許権が価値を持てるような制度設計や運用をしないと、特許出願件数は減り続けるのではないでしょうか。

そうすると特許出願件数の多い国の発言力が増して、日本の知財の存在感は低下してしまうのではと危惧します。

2014年2月23日日曜日

ドーナツの穴について

本日、次のようなニュースを見つけました。

「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」とは 2ちゃんねるの「難問」に阪大教員が大真面目に答えた!(J-CASTニュース)

残念ながら、この本を私は読んでいないのですが、「穴」という虚無の状態をどう捉えるかについて、アカデミックな考察がなされていると思います。

この「穴」というのは特許請求の範囲を記載する際にも、いろいろ悩むところであります。

特許請求の範囲には、発明の構成要件を記載するのですが、「穴」は実体のない空虚な存在ですので、 実体を記載すべき特許請求の範囲に記載して良いものか、という問題があります。

事実、日本の審査では、特許請求の範囲に「穴」を記載しても記載不備(拒絶理由)とはならない可能性がありますが、アメリカでは「穴」を記載すると記載不備となり、拒絶されるようです。

したがって、構成要件に「穴」と直接的に記載するのではなく、「穴を有する部材」のような実体を伴う構成として、特許請求の範囲に書く工夫が必要となります。

また、「穴」以外にも実体のない表現として、「溝」とか、切り餅事件のような「~がない」とかいう表現も、実際に使えるか注意が必要です。

さらに「穴」として特許された場合に、今度は権利行使できるのかが問題となります。権利行使時にはまず特許請求の範囲の属否を判断することになりますが、その際、構成要件の対比を行うことになります。

実体のある構成要件を対比することは容易ですが、「穴」は実体として存在しませんので、存在しないものを対比するという、なんだかよくわからないことになります。

実際的には「穴を有する部材」として拡大解釈して、対比することになると思います。

さて、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」ですが、私なりに考えますと、 ドーナツを周辺から食べ始めますと、ドーナッツ本体の幅が徐々に縮小し、ドーナツの幅が「0」になった瞬間、ドーナツの穴は認識できなくなります。

ドーナツの穴は、もともと実体がありませんので、 ドーナツの幅が「0」になった瞬間、消滅するのではなく、認識できなくなるだけです。

したがって、認識できるよう別の手段を考えればよいわけで、例えば、ドーナツを食べる過程を画像・動画で撮影し、ドーナツの幅が「0」になった瞬間を記録するとか、ドーナツの穴に、気体、液体、固体を充満させ、虚無の状態を実体化させておくとかすればよいと思います。

note へしばらく移転します。

  https://note.com/ip_design  へしばらく移転します。