2016年2月14日日曜日

2016/1/17~1/23の知財高裁判決



2016117日から2016123日までになされた裁判は、侵害訴訟1(省略します)、審決取消訴訟5件(特許1件、商標4件)です。

1.審決取消訴訟

(1) 平成27(行ケ)10182  審決(取消・成立)取消
平成28121日判決 請求棄却(3部)
商標権
不使用(50条)

*コメント
通常使用権者による本件商標の使用とされるには、本件商標の使用許諾契約が存在していたことの裏付けが必要とされました。

(2) 平成27(行ケ)10181  審決(取消・成立)取消
平成28121日判決 請求棄却(3部)
商標権
不使用(50条)

*コメントは省略します。

(3 )平成27(行ケ)10046  審決(拒絶)取消
平成28121日判決 請求棄却(3部)
特許権 (洋式便器)
新規性,進歩性,手続違背

*コメント
審判において新たな文献を追加して拒絶とする場合でも、追加の内容が設計事項レベルである場合には、拒絶理由を通知することなく、拒絶審決することは手続違背ではないと判断されました。厳しいですね・・・。

(4) 27()10159  審決(拒絶)取消
平成28120日判決 審決取消(4部)
商標権
類似性(4111号)

*コメントはありません。

(5) 平成27()10158  審決(拒絶)取消
平成28120日判決 審決取消(4部)
商標権 (REEBOK ROYAL FLAG)
類似性(4111号)

*コメントはありません。

2016年2月6日土曜日

ブランド・ドリブン・イノベーション、ブランド思考など

自分は主に特許の仕事をしておりますが、中小企業の仕事をする場合には、特許だけという訳には行きませんので、意匠、商標の仕事もすることになります。

知財権的にいえば、特許は技術を守り、意匠はデザインを守り、商標はブランドを守ります。こう言いますと、技術とデザインとブランドとは別個独立のものとも感じてしまいます。

よく言われますのが、一つの製品には多数の技術が使われているということです(医薬品除く)。デザインはどうかといえば、これは1つの製品に1つとなります(部分意匠というものもありますが・・・)。

そして、事業とはいろいろな種類の商品(ポートフォリオ)を売ることで成り立ち、このような事業についてブランドが構築されます(1商品1ブランドもあるかもしれませんが・・・。)。

そうしますと、これらの関係は以下の階層構造になるかと思います。



こう見ますと、技術は事業とは距離があるという感じがします。技術で勝って、事業で負ける、という言葉もありますが、技術ばかりを見ていますと、事業がよくわからなくなるのではないでしょうか。

デザインというのは中間に位置することから、事業もある程度見え、技術も見えることから、いいポジションといえるかもしれません、デザイン思考が近年もてはやされるのは、こういう事情かもしれません。

そう考えますと、今後はブランドを起点にテクノロジーを考えるという概念が出てくると思います。例えば、ブランド・ドリブン・イノベーションや、ブランド思考という概念となるかもしれません(本ブログで先使用権を確保・・・)。

とりあえず、ブランド戦略の本を買い込みましたので、少し研究してみようと思います。

2016年1月30日土曜日

2015/12/27~2016/1/16の知財高裁判決


20151227日から2016116日までになされた裁判は、侵害訴訟0件、審決取消訴訟5件(特許4件、商標1件)です。

1.審決取消訴訟

(1) 平成27(行ケ)10089  審決(拒絶)取消
平成28114日判決 請求棄却(1部)
特許権 (水位警報制御装置)
新規性(引用発明の認定,相違点の認定)

*コメント
原告は特許庁の引用発明の認定に誤りがあると主張しましたが、認められませんでした。

(2) 平成27(行ケ)10069  審決(無効・成立)取消
平成28114日 請求棄却(1部)
特許権 (棒状ライト)
公然実施

*コメント
「分解不可」と注意書きがされている部分を分解して公然実施と認定することの可否について争われましたが、分解することは所有者の自由ということで、公然実施と認定されてしまいました。

(3) 平成27(行ケ)10020  審決(拒絶)取消
平成28114日判決 請求棄却(1部)
特許権 (非球面レンズを有する拡大ルーペ)
進歩性

*コメント
周知技術3をそのまま適用するか,あるいは,周知技術3の構成のうち対物レンズの上部に関する部分の技術のみを適用するか,下部に関する部分の技術のみを適用するかは,実現すべき軽量化の程度の問題にすぎないから,いずれを採用するかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項であるといえるとされました。周知技術にさらに変形を加えて、組み合わせ容易とされてしまうとは、ちょっと厳しいですね・・・。

(4) 平成27(ケ)10096  審決(拒絶)取消
平成28113日判決 請求棄却(2部)
商標権
類似性(4条1項11号)

*コメント
4条1項11号の判断時期について争われ?ましたが、原則通り査定時とされました。査定時と登録時の間に引用商標が不使用取消により消滅したという事情から、原告は登録時を判断時としたかったようです。

(5) 平成27(行ケ)10016  審決(拒絶)取消
平成28113日判決 請求棄却(2部)
特許権 (細胞培養物において増殖されたインフルエンザウイルスから調製された非ビリオン抗原を含むアジュバントワクチン)
進歩性

*コメント
補正発明に顕著な効果があるか否かが争いになりましたが、明細書の記載から顕著な効果があるとは認められないとされました。補正後の構成と明細書に記載の効果との間に論理的整合性がないと、訴訟ではきびしく見られてしまうようです。

2016年1月23日土曜日

相乗効果のリスクについて

某アイドルグループの移籍話がニュースとなりました。しかし、うまくゆかなかったようです。

グループ5人が同時に移籍するというのは事務所にも経営上の打撃がありますので、 事務所は簡単には許さないでしょう。

移籍するには、一旦グループを解散して、メンバー個別に事務所と交渉するしかないとも思います。

しかし、それも無理なことがわかります。なぜなら、グループ全体として魅力が生じているからで、メンバー個々に関しては、そこまでではなく、解散した場合には、仕事が減り、収入も減ると思われるからです。

グループのメリットは、メンバー個々の個性が組み合わさることにより、魅力の相乗効果が生じ、これにより、売れる可能性が高いことがあると思います。

昔のアイドルといえば、個人で活動するケースが多かったのですが、最近は、グループだらけなのは、売りやすいという側面があると思います。

そして、今回の事件では、辞められにくいという効果があることも確認されました・・・。

そうしますと、グループは売れやすいというメリットがありますが、逆にいえば、 グループで売れれば売れるほど、個人では活動できなくなる、という側面もあると思います。

この事件が人々の興味を引くのは、誰にでも似たような経験があるからと思います。

私も、以前ある人とチームを組んで働いていましたが、その時は、結構大きな仕事となり、順調すぎて、ちょっと自分の能力を超えており怖い気もしました。

案の定、その方が諸事情により辞められたとき、仕事がなんとなくうまくゆかなくなり、自分の能力のなさを実感するとともに、チームを組むことにより、その相乗効果で、実力以上の仕事をこなせていたのだな、と感じました。

そうしますと、チームを組むというのはリスクがあるということにもなります。今後は、チームを組んで仕事をすべきか、それとも、個人でなんでもこなせるように仕事のスキルを身につけるべきか、悩むところでもあります。

少なくとも、今の状況は自分の実力なのか、チームの能力なのか、チームに依存していないか、チームがなくなった場合に食べてゆけるか、等々常に確認してゆく必要があるようです。

note へしばらく移転します。

  https://note.com/ip_design  へしばらく移転します。