2017年4月8日土曜日

アイデア出しについて

クライアントのところへ明細書作成相談へ伺うと、権利を含まらせたいので、実施例や変形例を追加してほしいと要望されることがあります。

私もこの仕事を始めて10年になりますので、得意の技術分野でしたらアイデアは無数に浮かぶのですが(実現可能性はない単なる思い付きである場合が多いですが・・・)、少し悩むところがあります。

それは、新しいアイデアの発明者がどうなるかということです。

私がアイデアを出した場合には、少なくとも発明者の1人に私が加わるのが特許法上の原則ですが、クライアントとしては実施例を追加する程度はサービスの一つに過ぎないとの認識と思いますので、発明者に加えることはしないと思います。

その場合には、冒認出願ということになり、拒絶・無効の理由となりますが、弁理士としてもクライアントとの間に波風を立てたくないため何も言わないと思います。

とはいえ、そのアイデアが当たった場合には(可能性はとても低いと思いますが・・・)、正当な対価を受けられないことになります。

そもそも、無体財産を守るべき弁理士が、アイデアを安売りするようなマインドでよいのかという疑問もあり、無価値でアイデアを出すようなことは慎むべきと考えます。

このあたりの心の整理がつかないので、クライアントでのアイデア出しの現場に立ち会う場合には、私からはアイデアを出さず、もっぱらファシリテーションに専念することにしています。

昔、インテレクチュアルベンチャースという会社を見学させていただいたことがあるのですが、そこでは弁理士や専門家の方が集まって発明創出会議を行い、固まったアイデアから順次出願してゆくという活動をされておりました。

アメリカではこのようなビジネスが成立していることから、アイデア自体を重視し、それを収益につなげていることがわかります。

そうしますと、私も今後は、発明者に加えていただけるクライアントに関しては積極的にアイデア出しをしてゆけるかなと考えています。まあ、いやがられると思いますし、それなら他の弁理士に頼むということになりそうですが・・・。

2017年1月21日土曜日

ノウハウは特許出願しない? (その2)

はじめてしりましたが、空売り専門の投資顧問というのがあるそうで、先日そこが作成したレポート(ネット上で公開されています。)を読みました。

レポートは青色ダイオード訴訟の代理人であったこともある(今は投資顧問の代表とのこと)、有名な弁護士の方が書かれたそうで、 なかなか手厳しい内容でした。

空売り専門ということで、(攻撃?)対象の企業の株価が下がるような内容なのですが、その一つに、「製造方法については、ノウハウ秘匿としているが、特許権が10件程度しかなく、参入障壁を築けていない」との指摘がありました。

確かにノウハウ秘匿といえど、巨大資本が参入し始めると、容易にキャッチアップされてしまうでしょうから、特許権がない場合には、容易に市場参入されてしまいます。

そうすると、ノウハウについても出願することも必要かと思います。

また、それでも、ノウハウを出願しない場合には、特許権の数が足らず、参入障壁が気づけませんので、他の技術(物の発明など)について、積極的に出願し、特許権の不足を補うことも必要かと思います。

結局のところ、ノウハウだから出願しない、のではなく、参入障壁の観点から、必要な特許網を構築するために、過不足なく出願してゆくことが必要と思います。

2017年1月10日火曜日

ノウハウは特許出願しない?

最近は製造方法等のノウハウは特許出願しないよう、各方面から厳しくいわれることが多いと思います。

その理由としては、権利化しても権利行使しにくいことや、ノウハウを真似されてしまうことがあります。それだったら、特許出願せずに秘密にしておこうという考えです。

実際その通りとは思いますが、一つだけ注意が必要なことがあります。それは、他社が権利化してしまう事態の発生です。

自社ノウハウといえど、他社も新しい技術を開発できるよう大変な努力していますので、独力でそのノウハウに到達してしまう可能は十分あります。

他社が権利化してしまいますと、自社ノウハウといえど実施不能となります。 これは大変な事態です。

ノウハウは権利行使しにくいから、こっそり実施を継続すればよいとも考えてしまいますが、裁判になれば、立証責任が転換し、自己の実施態様を具体的に開示しなければなりませんので(特許法104条の2)、まったく秘密という訳にはまいりません。

先使用権があるではないかとも考えますが、先使用権を立証するには、常日頃から事業に関わる文書を公証役場へもってゆき、確定日付を得ておき、その資料を数十年保管するくらいの管理体制が必要です。

また、国内のみで事業をしている企業であれば問題ありませんが、グローバルに展開している企業の場合には、海外での実施に対して先使用権を主張することは、困難といえます。

そうしますと、ノウハウを特許出願しない、ことにも、大きなリスクがあることがわかります。したがって、盲目的に、ノウハウを特許出願しない、とするのは、どうだかとも思います。

それでは、どうすればよいかといえば、ノウハウを当面は秘匿するにしても、特許情報調査の結果、他社の権利化の可能性が高まった場合には、自社としても特許出願することに切り替えるような判断も必要かと思います。

2017年1月4日水曜日

戦略と戦術について

大河ドラマの真田丸が先日最終回を迎えました。個人的には、可もなく不可もないというような印象でしたが、話の流れがよいためか、めずらしく第一話から最終回まですべて視聴できました。

話としましては、前半は父の真田昌幸の戦い、後半は子の真田幸村の戦いが描かれていたと思いますが、前半の方が面白かったように感じます。

それは、なぜかといえば、真田昌幸は大名(弱小ではありますが)であったのに対し、真田幸村は最後まで一武将に過ぎなかったためかと思います。

真田昌幸は大名でしたので、まず、どの大名と組むか、どの大名と敵対するか、政治的な検討を行い、大きな戦略を定めてから、籠城、奇襲などの戦術を選択できます。

一方、真田幸村は、一武将にすぎませんでしたので、戦略にかかわることができず、出城を築くなどの戦術を実行するのがせいぜいでした。

よく言われますのが、戦術のミスを戦略でカバーすることは可能であるが、戦略のミスを戦術でカバーすることはできないとされます。

真田幸村が、どんなに優れた戦術を用いても、戦略が貧弱な場合には、戦いに勝利することは不可能です。(もちろん、真田幸村はそんなことは百も承知で、大阪方に味方したとは思います。)

ということで、テレビを見る方としては、そのあたりの行き詰まり感が、なんとも息苦しく感じました。

とはいえ、こういう話は現代にも通じるものがあります。

技術で勝って事業で負ける・・という話しがありますが、技術というのは戦術で、事業は戦略に相当します。

日本の技術者は優秀ですので技術で負けることはないと思いますが、事業戦略が良くなかったためか、日本企業の競争力は低下しつつあります。

逆にいえば、日本の技術者は、経営戦略がうまくいっている企業に転職すれば、その能力を最大限に発揮できるのではとも考えてしまいます。

真田幸村は戦略が巧みな大名(徳川家)に寝返ることはありませんでしたが、そのために、豊臣とともに死ぬことになりました。

もし自分が優秀な技術者であったなら、経営戦略の巧みな企業に転職して力を発揮するか、それとも、企業に残って最後まで奮戦するか、どちらの選択をするのか、いろいろと考えてしまいます。

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