2017年10月14日土曜日

人間性のいらない仕事について

先日、高校の同期の男が暗黒舞踏の世界で成功している、という話をSNS経由で知りました。

なんでも、平井堅のPVで踊ってるそうで、自分はPVをちょっとテレビで見た記憶はあるのですが、こわいという印象しかありませんでした・・・。

私のようなレベルの低い人間からすると、暗黒舞踏で生活できるなんて、すごいなと、舞踏の内容よりも収入の方が気になったりもします。

暗黒舞踏を知らない私がいうのもなんですが、こういう世界で生きてゆくためには、特殊なセンスが必要と思います。

単なる舞踏テクニックだけでは見る人の心に染み入らない(すなわち、お金を出さない)とも思いますので、一般人が知ることは無い、人生経験から滲み出る、内心の世界観の潤沢さが必要と思います。

こういう内心の世界観をここでは、ひとまず人間性とします。こういう人間性が必要な仕事は、芸術家とかデザイナーということになるでしょうか。

一方、世の中の仕事のほとんどは人間性が不要であり、論理的に仕事を処理すればよい仕事となります。弁理士の仕事も100%論理の世界であり、仕事の処理に人間性は不要です。

そういう意味では、特別な才能がある人が人間性のある仕事をし、私のような才能のない人間は、人間性のない仕事をすればよい・・・、というのが今までの話でした。

しかし、そうも言えない状況が生じつつあります。それはAI(+ロボット)の進化です。

AIは論理的な仕事が得意ですので、人間性のいらない仕事はAIに置換されてゆくことが考えられます。弁理士の仕事も92%がAIに置換可能というニュースもありました。

もちろん、危険性の高い仕事や負荷の高い仕事はAI(+ロボット)に置換することがよいのですが、普通の仕事もAIとなると、一般人は失業して生活できません。

そうしますと、今後はAIに置換されないように、自分の仕事に人間性を取り入れてゆくしかないのかと感じます。

そういう意味では、仕事を一生懸命やることもいいですが、今後は仕事以外の本を読んだり、芸術作品に触れたり、いろいろな所を旅するような人間性を高める経験をしてゆくことも必要なのかと思います。

2017年9月30日土曜日

ブランドとデザインについて(その2)

以前こんな記事を書きました経産省の産業競争力とデザインを考える研究会ですが、9月28日(木)に3回目の会議が終了したようです。

2回目までの会議資料が、こちらに開示されております。2回目の配布資料の中に田中委員のプレゼン資料が開示されております(PDFへの直接リンク

この資料の26ページ以降を読みますと(非公表だらけですが・・・)、デザインとブランドの関係が、おぼろげながら見えてまいります。

といっても話は簡単で、統一性のあるデザインを使用し続ければ、ブランド(出所表示)として機能を発揮し始めるいうものかな・・・と思います(詳しくは資料をお読みください)。

他の研究会の様子をみますと、この研究会の取りまとめ内容によって、直ちに法改正がなされることは無いようですが、その結果は今後に生かされる、ということでしょうか。

法改正はすぐにはされないようですが、ブランド化したデザインをうまく保護する手段が今はありませんので、私なりに法改正案を考えてみました。

意匠法の改正からのアプローチとしては、周知性を獲得した意匠については存続期間を(10~20年程度)延長することなどが考えられます。

現状では、存続期間が満了した意匠については誰でも自由に使えるのが建前ですので、存続期間を延長することにより、それを防ぎます。

商標法改正からのアプローチとしましては、意匠権の存続期間が満了した意匠については、立体商標の登録を受けやすくすることが考えられます。

これにより、デザインの保護が意匠法から商標法による保護へ移行できますので、半永久的なデザインの保護が可能です。

不競法も同様の改正を行い、デザインが周知商品等表示として認められやすくすることがあると思います。

と、思い付きで考えましたので、上記案には論理的に穴があるかもしれませんが、ご容赦願います。

余談ですが、田中委員はGKデザインの方で、私が7台乗り継いでいるYAMAHAのバイクは昔からGKデザインによるデザインが多いです。

とはいえ、ブランド化したデザインというのはYAMAHAのバイクにはほとんどなく(SRくらいでしょうか)、一方、ハーレーのデザインはブランド化していますし、HONDAのスーパーカブは立体商標登録まで受けている点でやはりブランド化している点が、なんとも難しいところであります。

2017年9月9日土曜日

リスクの取り方について

以前、私は「技術リスクマネジメント専攻」という専攻の大学院に通っていました(今は名前は変わっております。)

そこで学んだことはもうほとんど覚えていないのですが、今でも覚えていることは、「リスクはリターンの源泉」という考えです。

「ハイリスク・ハイリターン」、「ローリスク・ローリターン」という言葉は誰でも知っているとは思いますが、リスクを取らねばリターンはないというのがビジネスの原則となります。

私は、普通に学校教育を受けて、その後、いわゆる大企業で働いておりましたが、そのような経歴ですと、「リスクは悪」のようなマインドとなり、リスクを避けるような判断をする思考となりがちです。

そのため、ローリスク・ローリターンの人生となってしまいましたが、仕事をする際には、この原則を常に考えておかないと、まずいことになります。

話は飛びますが、以前、弁理士会の研修で「ベンチャー支援」という講義を受けましたが、そこで講師の方が強調されていましたのが、ベンチャーで一番重要なのが「成長」ということです。

1年で規模を倍にする、2年で4倍にするような規模の拡大を図ることがベンチャーの使命だそうです。

私は、ベンチャーはお金のない小規模企業のようなイメージをもっていましたが、そういう訳でもなく、投資家からお金を集めようとすれば、それなりに集まるそうです。ただし、お金の使い道は「成長」に寄与することが必須です。

ベンチャーの特許出願についても、成長に寄与することが説明できれば、費用をかけることも厭わない、ということでした。

結局のところ、ベンチャーは「リスクを取って成長する」タイプの会社と思います。資金・費用については2の次です。

さて、そういうベンチャーを、ローリスク・ローリターンのマインドで携わるとまずいことになります。例えば、この請求項は広すぎるからリスクを減らすため狭くしよう、特許出願は費用がかかるからやめて節約しよう、などとリスクを減らすようなアドバイスをしがちとなります。

大企業の場合には、リスクを減らす考えも有用ですが、ベンチャーの場合には、ある程度リスクをとってゆかないと、成長できずにジリ貧となります。

そうすると、ベンチャーの場合にはリスキーな判断をすることも必要となりますが、これはなかなか怖くてできないところもあります。

とりあえず、大企業の仕事の場合にはリスクを減らすことを考え、ベンチャーの仕事の場合にはある程度リスクをとるような考えで進めるしかないのかもしれません。 


2017年8月15日火曜日

日本の特許制度の大欠陥?

「日本の特許制度の大欠陥、アイデアが世界中に流出する理由」、というネット記事を見かけました(リンクは割愛いたします)。

記事の内容については、新井先生の書かれた『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』という書籍の解説記事のようです。

こういう題名ですと、日本の特許制度に大きな欠陥があるような感じになりますが、諸外国の特許制度は統一が図られておりますので、日本の特許制度特有の欠陥というものはないと思います。

あとは、特許制度自体に欠陥があるのかどうなのか、アンチパテント、プロパテント等の考えもありますが、上記ネット記事はそこまで言及するものではありません。

上記記事の内容(新井先生の書籍ではありません)につきましては、簡単言えば、特許公開により技術が公開され、競合に模倣されるから、秘匿可能な技術については出願しないようにしましょう、という感じでしょうか(厳密に読んでいませんが・・・。)

こういう記事を読みますと、頭の中が20年くらい前で止まっているのかな、と感じます。20年くらい前でしたら、日本の技術力は世界一のレベルにあり、特許出願件数も世界一でした。したがって、日本の技術は盗まれる側でした。

しかし、現在では、日本の技術の多くがキャッチアップされ、出願件数も諸外国に抜かれております。そうすると、現在では、外国公開特許情報を分析して、技術を盗んでやろう(もちろん権利侵害にならない範囲ですが・・・)、という考え、すなわち盗む側にそろそろなると思います。

ノウハウ秘匿戦略に良い悪いはないのですが、ノウハウ秘匿戦略を選択する場合には、先使用権を確保することが必須となります。これは、競合が権利化した場合には、自社実施が不可能となるからです。

もちろん、製造方法は、ばれないからいいという考えもありますが、権利侵害を放置するのは、コンプライアンス上問題がありますので、まともな会社でしたら、自社実施をやめると思います。

国内だけのビジネスを実施している会社でしたら、先使用権は日本国内のみで確保すればよいのですが、グローバルなビジネスを展開している企業でしたら、各国ごとに先使用権確保の作業をしなければなりませんので、大変です。

個人的には、競合他社が権利化しそうなノウハウにつきましては、先んじて権利化することもよいのではと思います。そうすることにより、先使用権確保の作業の負担が低減できます。

もちろんコカ・コーラの製法のような、競合他社が永遠に開発不可能な技術については、秘匿戦略でよいと思います。

さて、こういうネット記事というものは著作権法上どうなのかという気もします。書籍の要約でも翻案権の侵害になりますので、著作権者の許諾を得ていると思いますが、著作者の意図と違うような解釈がなされる要約の場合には、同一性保持権とか問題になりそうな気もします(もちろん同意があればよいのですが)。

要約の内容が、著者の意図と多少異なっているようですので、気になるところです。


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