2018年10月17日水曜日

顕在ニーズ、潜在ニーズについて

twitterで知りましたが、アロンアルファの釣名人という製品が売れているそうです。釣りの道具(竿や浮き)を接着することを目的とした製品です。

驚くことに、釣名人というからには釣り人に売れているのかと思えば、そうではなく、Amazonレビューを見ますとギタリストに強く支持されているのがわかります。

ギターを弾くと爪が欠けますので、爪の補強用に、爪にこの釣名人を塗るそうです。

安っぽい言い方をすれば、「釣り」という顕在ニーズに対し、「ギター」という潜在ニーズが見つけられたことになります。

もともと、釣名人の機能としては、「竿をくっつける」があります。これを顕在機能とします。そして、この顕在機能が発揮される状況として「釣り」があります。これを顕在場とします。

潜在ニーズを見つけるには、釣り名人の潜在機能を見つけなけばなりません。

1つの考え方としては、釣り名人の顕在機能である「竿をくっつける」を様々な文言に置き換えることです。

機能は「○○を××する」と表現されますので、この「○○」、「××」を他の用語に置き換えてみます。

この事例では、「竿をくっつける」の「竿」を「爪」に置き換えることにより、潜在機能を「爪をくっつける」としました。

そしてこの潜在機能が発揮できる場(顕在場)になにがあるかといえば「ギター」があった。ということになります(他にも潜在場はあるかもしれません。)

 また、「竿をくっつける」の「くっつける」を「固定する」に置き換えて、潜在機能を「竿を固定する」とすることにより、新たな潜在場が見つかるかもしれません。

要は、 「○○」、「××」を置き換える言葉を考えて潜在機能を決め、その機能を発揮しうる顕在場があるかどうかを考えればよいことになります。





また、逆に「釣り」という顕在場に対する、潜在場を考え、それに対応する顕在機能を考えることにより、「竿をくっつける」という顕在機能に対する潜在機能を考案できるかもしれません。

釣名人の新たな機能を見出したのは、スペインのフラメンコギター奏者のようですが、こういう製品に新たな意味が見いだされる事例というのは多いと思います。

それらを分析すれば、新製品開発のヒントとなるかもしれません。

2018年7月31日火曜日

マーケティングやデザインやブランドなど

最近の国の報告書を読みますと、マーケティングやデザインやブランドなどの横文字が並んでおります。

とはいえ、概念がごちゃごちゃになっているような危惧もあります。特許庁の某広報誌でもデザイン経営の「デザイン」という用語はあえて定義していないということを言っておりました。

まあ、あえて定義しなくてもよいのかもしれませんが、意識せずに使いますと、実務の場では、思わぬ地雷を踏む場合もありますので、整理しておいた方がよいかもしれません。

私の好きな分析手法に3C分析というのがありまして、これは事業を分析するうえで、自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つについて分析する手法です。

よく知られているのはSWOT分析ですが、機会とか脅威とかイメージしにくい分析手法でもあり、3Cの方はイメージしやすいのがメリットと思います。

ここでは、3Cすべてを分析するのを「マーケティング思考」とします。

では、「デザイン思考」では、どうなるかといえば、これは顧客ニーズの分析が重要となります。したがって、分析は、自社(Company)、顧客(Customer)の分析(ニーズ・シーズ分析)が主となります。

そんな競合を無視した分析に意味があるかといえば、ブルーオーシャン戦略などにより、競合が存在しない企業においては有効かもしれません。

有効な分析ツールとしては「QFD」などがあります。

それでは、「ブランド思考」では、どうなるかといえば、自社(Company)の分析(ブランド・アイデンティティの分析)が主となります。

競合・顧客を無視した分析に意味があるかといえば、アップル、ハーレーなど自分の売りたいものを売っている企業においては、有効かもしれません。

有効な分析ツールとしては「ブランドQFD」があります。

以上の関係を、表にまとめると以下のようになります。



例えば、「デザイン思考」的な企業に、競合分析を提案しますと、「あなたデザインをわかってますか?」ということになりますし、「ブランド思考」的な企業に、顧客ニーズ分析を提案しますと、「うちの製品がわかっていない」と、経営者の逆鱗に触れる場合があります。

ということで、用語を仕事で使う場合には、注意しましょうという話でした。

2018年6月14日木曜日

価値もデザインする?

本年度の知的財産戦略ビジョンとやらが内閣府の知財戦略本部から公表されたようです(PDFへのリンク)。

サブタイトルが「価値デザイン社会」を目指して、となっておりまして、なにやら似たようなタイトルの報告書が最近続いているなと感じます。

それでは、特許に関する記載はどのくらいかとキーワード検索をしましたところ、「特許」という用語は1か所に出てくるのみでした・・・。

つまり、最新の日本の知財戦略ビジョンに特許は考慮されていないことになります。

中身をざっと見ましたところ、キラキラワードが多用されており、目につくのが、「シェア」、「みんなでつくる」、「オープンイノベーション」など、みんなでやろう!というような内容でした。

特許権、意匠権、商標権は、独占排他権ですので、これをビジョンに入れますと、上記みんなで一緒にやろうというロジックと整合せず破たんすると思いますので、特許に関する言及を入れることができなかったと思料します。

さらに、委員のコメントとして、「排他権を緩くして新たに共有権を設けよう」などという提案もあり、全体としてはアンチパテント的な方向(共産主義的方向?)なのかな、と感じます。

このビジョンから何を読み取るかは非常に難しく、正直、皆様にも読んでいただいて、皆様の見解を私に教えてほしいくらいです。

とはいえ、 知的財産戦略ビジョンに特許、意匠、商標がまったく考慮されないのは、逆に面白いと感じてしまいました。これは、今の知的財産の概念が、従来の特実意商を超えた人間の精神性も含めた概念となっているともいえると思います。

そういう意味では、「デザイン」に続いて、「知財」もまた、議論の前に定義を明確にしませんと、議論がかみ合わないことになるかと思います。

2018年6月5日火曜日

経営をデザインする

【知財のビジネス価値評価検討タスクフォース 報告書及び経営デザインシートを公表いたしました(内閣府)】との案内がメールでありました。

そこでは、「経営をデザインする」 ものが紹介されておりました。

内容を見ますと、知財が企業の価値創造メカニズムにおいて果たす役割を的確に評価して経営をデザインするためのツール(経営デザインシート)が紹介されておりました。

ざっと目を通しただけですので、良し悪しはよくわからないのですが、 経営デザインシートというのは普及しないだろうなという感想です。

理由は、作るのが大変だから、ということになります。以前にも知的資産経営報告書のようなものもありましたが、普及していないのは、作るのが大変だからということになります。

実際作ってみるとよいものかもしれませんが、工数もかかりますので、費用対効果が明確でないとなかなかつくれません。

またこういうシートの作成は外注できるものではなく、内部情報に通じた企業内部の人(できれば多数の人)で作らないと意味がありませんので、なかなか機会がないと思います。

とはいえ、経営デザインシートなるものを考案できるということは素晴らしいというか、うらやましいと思います。

このブログのタイトルは「知財をデザインする」ですが、当初の目的としては「知財デザインシート」のようなものを考案することができればいいな、という目論見もありました。

しかしながら、「知財デザインシート」のようなものを考える時間が今のところありません。

今の仮説としては、特許、意匠、商標とも、ブランドアイデンティティを用いてまとめて取り扱うことができるのではないかと思っておりますが、考える時間もありません。

ということで、最後は愚痴でした。

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