2020年3月8日日曜日

特許が生き残るには。

先日、先行技術調査をしていましたら、2000年代前半のビジネスモデル関係の出願をいくつか見つけました。

経過情報を見ましたところ、軒並み「発明ではない」という理由で拒絶査定となっておりました。

明細書を幾らしっかり書いても、数行の拒絶理由で処理されてしまいますので、出願する方としては、やってられないような気持だったのではないでしょうか。

確か、当時のビジネスモデルの特許査定率は20%程度だったと思います(今はもっと高いようです)。

なぜ、このようなこととなったかといえば、一つにはビジネスモデルのような特許を認めると、独占権が乱立して経済活動が阻害されるというアンチパテント的な意見があったと思います。

また、当時は審査の滞貨が増大しており、これ以上特許出願が増えると困るという事情もあったと思います。

とはいえ、今考えれば、このときビジネスモデル特許を積極的に保護していれば、今のような出願件数低下に苦しむことはなかったのだろうなと思います。

また、近年、商標法や意匠法はサービス業対応の法改正がなされ、内容が世の中の変化についていけている気がしますが、特許法の方もそろそろ世の中の変化に合わせる必要があるのではないでしょうか。

ここで問題となりますのが、特許法における発明の定義に「自然法則の利用」という要件が入っているところです。

私の勝手な予想ですが、今後の技術開発は、AIなどの仮想空間や、ブランド・デザインなどの心理空間へ伸長してゆくと考えます。



しかし、特許法の保護対象は物理空間内に限られますので、仮想空間内や心理空間内の発明特定事項は、人為的取り決めとかに過ぎず、自然法則を利用せず、発明でない、すなわち特許できない、となってしまうのではないでしょうか。

今の特許実務では、物理空間内の発明特定事項(サーバーやネットワークなどのハードウェア)などを無理やり含ませて請求項を記載しますが、このようなハードウェア依存の請求項では、発明をうまく保護できません。

そうしますと、発明の定義を変えて、仮想空間や心理空間の発明をうまく保護できるような特許法の改正が望まれますが、まあ、どうなんでしょうか?

2020年3月1日日曜日

パテント誌の件

3/16ごろ発行のパテント誌3月号にわたくしの論文が掲載されることとなりました。

12月に投稿しましたので、早くても5、6月号掲載という予想でしたが、ページに空きがあったのか、早くなりました。

3月号の特集は「知財と刑事罰」ということで、非常に興味深いテーマですので、これだけでも買う価値はあると思います。

パテント誌は本屋には売っておりませんが、弁理士会のホームページから誰でも買うことができます(900円+送料)。

が、パテント誌の内容は数か月後に弁理士会のホームページで無料公開されますので、実は無理に買う必要もありません。

わたくしの論文は例のごとく「テキストマイニングによるブランドQFD作成」というテーマですが、論文作成には苦慮いたしました。

パテント誌の文章は2段組みですが、うまく図がレイアウトできないというか、大きくなったり、小さくなったりで、どうしようもなくなったので、パテント誌の編集の方にレイアウトをお任せしました。

論文のこだわりとしましては、テキストマイニングにありがちな「例の図」を使用しないよう頑張ったところにあります。

例の図とは、共起マップのことで、この図を出しますと、テキストマイニング感がでてまいりますが、わたくしはいつも思うのですが、この図の意味を理解できる人間はいるのか?理解できない私が馬鹿なのか?と感じます。

特許解析のアウトプットとしてヒートマップとか共起マップとかを出してくるのを見かけますが、人間が理解できる図は1次元か、マトリクス図程度が限度だと思いますので、今回は共起マップをできるだけ出さないようにしております。

ということで、詳しい内容については後日ということでよろしくお願いいたします。

2020年1月27日月曜日

分析と発想について

デザイン科学概論という本を読んでおりますが、理解度は2割といったところです。

しかしながら、いろいろ気付きがありました。

デザイン思考においては、分析→発想→評価というステップをとることが重要となります。

つまり、「分析」で終わるのではなく、次のステップの「発想」が重要となります(もちろん、その次の「評価」も重要ですが・・・)。

私も以前から特許情報分析に関して、もやもや感がありましたが、これは分析した次はどうするのか?という疑問があったからです。

発想ができませんと、発明も生まれませんので、特許出願も増えない(特許明細書を書く仕事も増えず、貧乏弁理士のまま・・・)という深刻なことになります。

デザイン科学概論という本では、この点に関してフォローされておりまして、M-BAR(多空間発想法)というものが提案されております(こういう内容が想起できないネーミングは困りますが・・・)。

M-BARでも、結局は従来の発想法であるブレインストーミングやKJ法を使用するのですが、多空間化されている点で、ちょっとわかりやすいことになっております。

この本では、分析・評価はM-QFD(多空間QFD)で行い、発想はM-BAR(多空間発想法)で行うという、穴のない、なかなか優れた内容となっております(この本は、何年か前、SNS上で話題になったようです。)

さらに都合のよいことに、M-QFDとM-BARとの関係は、わたくしが12月の知財学会で発表しましたブランドQFDとコンテクストの関係と類似しておりますので、いろいろ応用が利きそうです(知財学会での発表内容については年内に何らかの形で公表します)。

そうしますと、最終的には多空間QFDを用いて、ブランド・デザイン・テクノロジーの分析をし、多空間モデルを用いて、ブランド・デザイン・テクノロジーの発想を行うというのが、一つの目標となるでしょうか。

2年後くらいには、このような感じでまとめられればと思います。

2020年1月15日水曜日

デザインQFDの論理付けについて

現在、QFDをデザイン思考に使用した例の調査をしております。

J-GLOBALやGoogle Scholarなどの無料の検索システムを使用して検索してみましたが、よい文献がありませんでした。

自分で考えねばならないかと、あきらめかけていたところ、丸善の技術書籍コーナーで、「デザイン科学概論(慶應義塾大学出版会)」という2018年の書籍を発見しました。

この本には分析・評価を主な狙いとした「M-QFD」が紹介されております。

ということで、この「M-QFD」をテキストマイニングで作成すれば、デザインに使用するQFDの事例が作れることになります。

この「M-QFD」は、軸が、「価値」、「意味」、「状態」、「属性」と4つもあるので、若干軸が多い気がします。容易に理解できる軸の数は3つくらいと思います。そこで、少々アレンジが必要と思います。

また、「価値」、「意味」の意味が分かりにくいので、デザイン思考で一般的に用いられる「ニーズ」とかの用語を使用したいところです。

そもそも、この「M-QFD」は、松岡先生の独自理論である多空間デザインモデルに依拠したものとなりますので、はたしてこれに乗っかりすぎるのもどうかと悩みます。

多空間デザインモデルは少々難解ですので、シンプルにしませんと使い勝手が悪そうです。その点、デザイン思考はとっつきやすいものがあります(実行するのは難しいのかもしれませんが)。

また、「M-QFD」というネーミングもわかりにくいので、今後は「デザインQFD」という名前で行こうと思います。

と、いろいろとケチをつけましたが、この書籍の発見により、論理付けの労力が大きく低減されることになりそうなので、本を読みこみたいと思います。

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