特許は陣取り合戦のようなものだとお話しました。そこでは、出願の数がものをいうのですが、1件で広い特許を取ればいいという意見もあると思います。多数出願を行うと費用がかかりますので、1件で広い権利が取れればコスト削減になります。
しかしながら、この広い特許をとるというのはなかなか容易ではありません。広い権利とはすなわち特許請求の範囲の表現が広いこと意味するのですが、特許請求の範囲を広い表現とすると、公知技術を含む可能性が高くなり、審査において新規性、進歩性無しとして拒絶されてしまう可能性が高いからです。
したがって、可能な限り広い権利を取るためには、審査、審判、訴訟を通じて、拒絶理由となるリスクを勘案しつつ、特許請求の範囲を根気よく確定してゆくことが必要です。
先日某所で、某企業の方が、「うちで雇っている弁理士が、とても狭い範囲に特許請求の範囲を補正しようとしたので、クビにしてやったぜ。」と、大きな声でしゃべっていましたが、どのような権利を取るかはあくまでも企業の経営判断であり、弁理士が権利範囲を確定するわけではありません。
弁理士は拒絶とならないよう安全サイドで考えますが、拒絶となるリスクを出願人がとれれば、弁理士としても広い権利にチャレンジできると思います。このように、よい権利を取るためには企業が弁理士に拒絶のリスクをかぶせるのは、あまり得策とはいえないでしょう。
リスクをとれなければリターンもありません。
2011年8月8日月曜日
2011年8月7日日曜日
陣取り合戦について
「下町ロケット」では、主人公が経営する佃製作所(T社)がナカシマ工業(N社)に訴えられるエピソードが前半の山場ですが、いろいろ興味深いのでいろいろ考えてみたいと思います。
T社は以前N社から、T社の製品(エンジン)が、N社特許権を侵害しているとの警告を受け、そのときは侵害していないとの結果となったが、しばらくしていきなり侵害訴訟を提起され主人公が当惑することになります。
では、以前は特許権を侵害していないものが、時間が経つと特許権を侵害するということはあるのでしょうか?
当初の状態では、このような感じです。
T社は自己の実施の製品(エンジン)に対応した特許権を保有している、ただし、その特許はクレームの記載が悪く、製品(エンジン)の技術をすべてカバーする特許とはなっていない。
一方、N社はT社の製品に関連する特許権を有しているが、T社の製品はN社の特許権を侵害するまでとはなっていない。
ただし、そのままほおっておくと、次のようなことが起こります。
自社の製品(エンジン):図中の点線の円は、時間と共に技術的に改良がなされ、次第に大きな円(技術範囲)と変化してゆきます。したがって、自社の特許が自社の製品をカバーしている範囲は相対的に狭くなってゆきます。また、自社の製品の範囲が広がるため他社の権利を侵害する可能性が高まります。
一方、N社はT社の権利を模倣して次々と改良発明を特許化してゆきます。N社の技術は公開されていますので模倣、改良は容易です。 さらに、出願を進めると、T社の製品を完全に包囲することが可能となり、T社はN社の特許を利用しなければ、これ以上製品の改良を進められないことになります。
このように、特許出願戦略とは陣取り合戦のようなもので、排他的力を有効に機能させるためにはある程度の出願数が必要といえるでしょう。最近は特許は量より質といわれ出願数が低下する傾向がありますが、量が重要であることに注意が必要と思います。
また、時間と共に勢力が変化しますので、継続的な特許の監視が必要です。
ただし、中小企業の場合には大企業のように年に何千件も出願するわけにはいきませんので、対応をどうするかを考えねばなりません。対応としては次の2つが考えられると思います。
(1)改良発明については細目に出願をしてゆく。
たとえ年1件出願でも、10年で10件出願となるわけですから、長い目で見て地道に特許網が強化されてゆくことになり、他社からの模倣や他社の権利の発生を邪魔できる可能性が高まります。
(2)特許情報の細目な収集
定期的に自社製品関連の特許情報を収集しておくことにより、あやしい動きを見せる企業を早期に察知することができ、手遅れにならない段階でいろいろな対応をとる余裕ができます。
いずれにしましても、特許出願とは陣取り合戦をイメージしていただくと、次にどう手を打てばよいか考えやすいと思います。
(当社からのお知らせ)
神奈川県内の中小企業様向けに知的財産に関するセミナーを企画させていただきました。詳しくは、当社ホームページを参照願います。
T社は以前N社から、T社の製品(エンジン)が、N社特許権を侵害しているとの警告を受け、そのときは侵害していないとの結果となったが、しばらくしていきなり侵害訴訟を提起され主人公が当惑することになります。
では、以前は特許権を侵害していないものが、時間が経つと特許権を侵害するということはあるのでしょうか?
当初の状態では、このような感じです。
T社は自己の実施の製品(エンジン)に対応した特許権を保有している、ただし、その特許はクレームの記載が悪く、製品(エンジン)の技術をすべてカバーする特許とはなっていない。
一方、N社はT社の製品に関連する特許権を有しているが、T社の製品はN社の特許権を侵害するまでとはなっていない。
ただし、そのままほおっておくと、次のようなことが起こります。
自社の製品(エンジン):図中の点線の円は、時間と共に技術的に改良がなされ、次第に大きな円(技術範囲)と変化してゆきます。したがって、自社の特許が自社の製品をカバーしている範囲は相対的に狭くなってゆきます。また、自社の製品の範囲が広がるため他社の権利を侵害する可能性が高まります。
一方、N社はT社の権利を模倣して次々と改良発明を特許化してゆきます。N社の技術は公開されていますので模倣、改良は容易です。 さらに、出願を進めると、T社の製品を完全に包囲することが可能となり、T社はN社の特許を利用しなければ、これ以上製品の改良を進められないことになります。
このように、特許出願戦略とは陣取り合戦のようなもので、排他的力を有効に機能させるためにはある程度の出願数が必要といえるでしょう。最近は特許は量より質といわれ出願数が低下する傾向がありますが、量が重要であることに注意が必要と思います。
また、時間と共に勢力が変化しますので、継続的な特許の監視が必要です。
ただし、中小企業の場合には大企業のように年に何千件も出願するわけにはいきませんので、対応をどうするかを考えねばなりません。対応としては次の2つが考えられると思います。
(1)改良発明については細目に出願をしてゆく。
たとえ年1件出願でも、10年で10件出願となるわけですから、長い目で見て地道に特許網が強化されてゆくことになり、他社からの模倣や他社の権利の発生を邪魔できる可能性が高まります。
(2)特許情報の細目な収集
定期的に自社製品関連の特許情報を収集しておくことにより、あやしい動きを見せる企業を早期に察知することができ、手遅れにならない段階でいろいろな対応をとる余裕ができます。
いずれにしましても、特許出願とは陣取り合戦をイメージしていただくと、次にどう手を打てばよいか考えやすいと思います。
(当社からのお知らせ)
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2011年8月6日土曜日
IBS-LLP訪問
8月4日(木)に当社鶴見と一緒にIBS-LLP様を訪問させて頂きました。IBS-LLPは、国内2番目のLLP(有限責任事業組合)であり、専門サムライ士業のチームとして主に静岡県内を中心に活動されている組織です。
ミーティングでは、当社鶴見による簡単な知財のレクチャー及び当社の業務のご説明を私からさせていただきました。今後は、IBS-LLP様と当社とでコラボレーションを図れるような活動してゆきたいと思います。
ミーティングの後、私はとんぼ返りで横浜へ帰還いたしましたが、富士市に親類がいる当社鶴見は時間を気にせず、IBS-LLPの方々と飲みに行かれたとのことで、次回は余裕のあるスケジュールで伺いたいと思います。
どうもありがとうございました。
(当社からのお知らせ)
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ミーティングでは、当社鶴見による簡単な知財のレクチャー及び当社の業務のご説明を私からさせていただきました。今後は、IBS-LLP様と当社とでコラボレーションを図れるような活動してゆきたいと思います。
ミーティングの後、私はとんぼ返りで横浜へ帰還いたしましたが、富士市に親類がいる当社鶴見は時間を気にせず、IBS-LLPの方々と飲みに行かれたとのことで、次回は余裕のあるスケジュールで伺いたいと思います。
どうもありがとうございました。
ミーティング風景 |
(当社からのお知らせ)
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2011年8月3日水曜日
プロモーションについて
会社をつくると、兎にも角にもまず宣伝を行わなければなりません。しかしながら、私は会社勤めが長かったため、この宣伝をどうやって行えばいいかよくわかりません。
私に限らず会社勤めのサラリーマンの方は自分のプロモーションなどやったことはないのではないでしょうか。 この理由の一つには、組織内で個人が不用意に目立つと、周囲の反感を買い、足を引っ張られたりすることがあるためと思います。
また、組織全体としての宣伝は会社の宣伝部がやってくれますので、個人がプロモーションを行う必要はありません。
一方、会社を始めると全くの逆な状況となり、自分で積極的にアピールしてゆかなければ仕事が1つもやってきませんので頭の切替が必要となります。
例えば、プロフィールに資格や学歴や実績などをまとめて公開するのですが非常に恥ずかしいものがあります。しかし、恥ずかしがらずにアピールしなければなりません。
では、宣伝にはどのような方法があるのでしょうか。テレビCM、雑誌広告、インターネット、口コミ・・・、などいろいろな方法がありますが、重要なことは、ターゲットとする会社へ宣伝が到達(リーチ)することです。
例えば、当社は知財を扱う会社ですので、主婦や若年層が視聴主体のテレビCMを行ってもあまり意味はありません。 一方、技術系の雑誌などに広告を出せば有効かもしれません(そんな、お金がありませんが・・・)。
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私に限らず会社勤めのサラリーマンの方は自分のプロモーションなどやったことはないのではないでしょうか。 この理由の一つには、組織内で個人が不用意に目立つと、周囲の反感を買い、足を引っ張られたりすることがあるためと思います。
また、組織全体としての宣伝は会社の宣伝部がやってくれますので、個人がプロモーションを行う必要はありません。
一方、会社を始めると全くの逆な状況となり、自分で積極的にアピールしてゆかなければ仕事が1つもやってきませんので頭の切替が必要となります。
例えば、プロフィールに資格や学歴や実績などをまとめて公開するのですが非常に恥ずかしいものがあります。しかし、恥ずかしがらずにアピールしなければなりません。
では、宣伝にはどのような方法があるのでしょうか。テレビCM、雑誌広告、インターネット、口コミ・・・、などいろいろな方法がありますが、重要なことは、ターゲットとする会社へ宣伝が到達(リーチ)することです。
例えば、当社は知財を扱う会社ですので、主婦や若年層が視聴主体のテレビCMを行ってもあまり意味はありません。 一方、技術系の雑誌などに広告を出せば有効かもしれません(そんな、お金がありませんが・・・)。
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