2013年8月27日火曜日

知財費用の助成制度について

弊社Facebookページ(https://www.facebook.com/chizaidesign)の方で紹介しておりますが、現在中小企業向けの知財に関する助成制度が様々設けられております。

これは、中小企業を知財の面から支援することにより、国全体の競争力を増大するという政策的意義があるからと思います。

助成の内容としては、外国出願費用の助成に偏っているように思います。近年、グローバル化が叫ばれておりますので、これは妥当とも思いますが、知財活動は、国内出願や特許調査も重要な活動ですので、これらの活動への助成も欲しいところです。

さて、外国出願費用ですが、費用が公的機関から支援されますので、どんどん利用しましょうといいたいところですが、多少の注意点もあります。

(1)審査について
公費を投入するわけですので、やはり審査があります。審査の内容としては、企業の財務状況、ビジネスの有望性、技術の特許性等が様々な専門家により審査されることとなります。

助成の予算は予め決まっておりますので、応募した企業の数が少ない場合には、比較的容易に審査を通過しますが、応募企業が多い場合には、競争率が高くなり、 厳しい審査が行われることとなります。

(2)費用について
助成の割合は1/2程度ですので、全額助成される訳ではありません。したがって、外国出願に関してある程度の費用(百万~数百万程度)は自社で負担する必要があります。

また、助成金は出願が完了し費用が確定した後振り込まれますので、その間数百万円を建て替えておく必要があります。

さらに、外国出願に関しては、権利化に費用がかかること当然ですが、権利化後の権利行使や侵害調査にも、さらに多額の費用がかかります。しかし、これに対する支援はなく、自社で予算を確保しておく必要があります。

(3)手続きについて
審査のために様々な書類を整えて提出する必要がありますが、結構な労力が必要です。

制度によっては出願完了の時期が指定される場合がありますが、多くの国に出願を行う場合には、出願スケジュールとの整合を図ることが難しい場合もあります。

また、特許網の構築という観点からは複数の出願を行いところですが、助成事業は1件の外国出願のみ限定されます。

結局のところ、税金を使うという点からしょうがないとは思いますが、助成制度には様々な制約があります。

ひとつの考えとしては、助成制度に頼らずに、自社で出願した場合の収益計画を立てることが必要と思います。自社のビジネスですから、助成金が下りないから外国出願を取りやめる、という判断にはならないと思います。

ビジネスプランをしっかりたて、外国でのビジネスから得られる収益を予測し、必要な出願を行ってゆくことがまず基本となると思います。

逆に 、しっかりとビジネスプランを立てることができれば、助成金の審査も通り易くなると思いますので、助成を受けられる可能性も増すと思います。

最後になりますが、助成の募集は年1回程度となりますので、タイミングを逃すと翌年度の応募となってしまいます。所在地の自治体の助成スケジュールについて、一度ご確認いただければと思います。

2013年8月4日日曜日

経営者のように考える、について

会社で働いていると、上司からよく「経営者のように考えろ」といわれることがあります。

経営者のように従業員が考えることは、仕事を深く考えるという点では多少の意味もあると思いますが、不必要に従業員を追い込んでいるとも思います。

経営判断といえば、何か前向きな判断や、とても戦略的に優れた判断をするように感じますが、例えば、「やめる」とか「後で考える」とか「外に出す」など、後向きの判断もあります。

しかし、従業員が、「後で考える」などという判断を行うことができるでしょうか?そういう判断をした場合には業務に対する意欲がないと評価されてしまうかもしれません。

従業員に経営者のように考えろという場合には、判断の自由度がない場合がほとんどであり、結局、従業員を給料以上に働かすための方便となっているだけと思います。

また、従業員が何かよい戦略を考えだした場合でも、戦略を実行するために、ヒト・モノ・カネ等の会社の経営資源を使用する必要がありますが、従業員にはそのような権限がなく、結局アイデアがお蔵入りとなることがあります。

経営者のように考えたのに実行されることはないのですから、考えた労力がまったく無駄になります。

したがって、経営者のように考えろといわれたら、「判断の自由度」と「経営資源を使用する権限」があるか確認したほうがよいと思います。

ない場合には、社内で波風が立たない程度にやりすごすことが、自分の身を守るために必要と思います。

ところで、実際の経営者は、自由に判断し、経営資源を自由に使用しているかというと、そういうわけではありません。

大企業では会社の方針は役員会などで決定されますので、社長の考えがいつも認められる訳ではありません。反社長派的なグループがある場合にはさらに難しいと思います。

また、株主や銀行への説明責任もありますので、そういうステークホルダーを説得しようとするために、ありきたりの経営戦略を打ち出すことにもつながりかねません。

ということで、従業員へ経営者のように考えることを求める前に、経営者自身が、はたして優れた判断ができているか考える必要があると思います。

2013年7月27日土曜日

ちょっと確認して、について

先日、契約書作成実務の研修を受けたのですが、その講師の弁護士の方のコメントで印象に残りましたのが、「ちょっと」が一番怖いという話でした。

お客さんから、「ちょっと契約書の文面をチェックして」と頼まれ、その通り、簡単にチェックしてOKを出してしまうと、その後契約書に問題が発生した場合、チェックした弁護士の責任となってしまうケースがあるそうです。

契約書の文面のチェックを仕事として正式に受任した場合には数十万から数百万(数千万?)の費用が発生すると思いますが、ちょっとチェックの場合には、10万円程度もしくは「ただ」で行う場合が多いと思います。

ただし、10万円のレベルで仕事をしてしまうと、思わぬ責任問題が生じるので、仕事を受任するときに注意が必要という話でした。

私も同じような悩みを感じるときがあります。この発明は特許になるかちょっと教えて、とか、この製品はうちの特許権を侵害しているかちょっと教えて、と頼まれる場合があります。

特に会議の場などで、こういう質問をされると非常に困ります。即答できないとプロとして恥ずかしいと思う反面、特許性の判断は非常に難しく、先行技術を調査して、相違点の検討などに時間をかけて、ようやくそれなりの結論を導き出せますので、即答するのは無責任とも考えてしまいます。

さらに、「ちょっと」とお願いされる場合には、要は、「ただ」でやって、サービスでやってとの暗黙の要望もあり、この場合には、調査費用は請求できず、赤字となってしまいます。

そもそも日本では「サービス」にお金を払うという意識が低く(サービス残業という言葉もあるくらいですし・・・)、サービス業が成立しにくい国なのかも知れません。

脱線しましたが、「ちょっと」依頼された場合には、「ちょっと」出来る範囲の仕事の内容をお客さんに説明して合意をとり、その合意内容を書面で残すことが必要と思います。

また、結局「ちょっと」で請け負った仕事では内容が不十分な場合も多いと思いますので、正式な料金をお客さんに理解していただき、正式に仕事を受任する努力も必要かもしれません。


2013年7月20日土曜日

仕事のマニュアル化について

特許事務所で働いていたりすると、人の出入りが激しいため、仕事の引き継ぎ作業が大変だったりします。そういう時は仕事の内容がマニュアル化されていると、引き継ぎも楽に行えます。

事務所の経営から見た場合には、人の出入りのリスクに対応するため、業務のマニュアル化が必須ともいえます。

ただし、マニュアル化というのは従業員にとっては、良くもあり悪くもあります。

良い点としましては、マニュアル化により業務内容が明確となりますので、忙しい時や急用があるときは他の人に仕事を分担してもらうことができます。

悪い点としましては、仕事が特定の人のスキルに依存しなくなりますので、いわゆる「自分の代わりはいくらでもいる」という状態になり、他の人との競争の結果、解雇されやすくなったり、給料が低く抑えられたりします。

特許事務所では、ひとりで仕事を抱え込んでいる人もいますが、そういう人はマニュアル化に抵抗して、自分を守っているのかもしれません・・・。

さて、同じようなことが、技術の標準化にもいえると思います。

近年、知財戦略の一環として、国際技術標準に取り組む企業が増え、国もその後押しをしています。

ただし、何でもかんでも標準にすればよいというものではありません。技術の標準が進みますと、一定の品質の製品を誰でも製造することができるようになります。

したがって、標準を満たした製品であれば、結局安く作れる企業や国の製品が市場のシェアを伸ばすことになります。

例えば、パソコンや携帯電話は、安く作れる企業の製品がシェアを伸ばし、日本の製品は苦しい戦いを強いられております。

一昔前では、信頼出来るブランドの製品しか売れませんでしたが、今では、同様の規格で製造されておりますので、後は価格勝負となります。

したがって、標準化活動というのは、実際には自社のコア技術が標準化されないようにする活動ともいえます。

自社のコア技術についてはブラックボックス化し、その周辺の重要性の低い部分を標準化してゆくことにより、「自社の代わりはいくらでもいる」という状況を回避できるのではと思います。
 

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