2013年9月16日月曜日

パテントマップについて

特許情報解析の方法の一つにパテントマップがあります。

パテントマップは、数百~数千件の特許出願から、キーワードや特許分類を抽出して図表化するものです。

私もこの業界に入ってパテントマップというものを初めて見たのですが、正直何を示しているのかよくわからない、というのが最初の感想でした。

出願人別の出願件数ランキングぐらいでしたら、あの会社の出願が多い、というレベルでの理解は可能です。

しかし、軸にIPC、Fタームなどの特許分類をとった場合には、特許分類が何を示しているのかわからず、大変理解が難しくなります。

さらに、近年ではテキストマイニング等の言語処理技術を利用して、分布図や等高線図のような図を出力するソフトがありますが、 こういう図から何を読み取るべきか非常に悩みます。

そこで、パテントマップを理解するために、自腹でパテントマップソフトを購入し、自分でつくってみることにしました。

自分でつくると、パテントマップを作る過程の試行錯誤も知識として加わりますので、最終的なパテントマップの意味内容がかなり理解できるようになりました。

ただし、これではクライアントにパテントマップを見せるときに困ります。自分は理解できていますが、クライアントは理解できないという事態に繋がります。

そこで現在はクライアントと一緒にパテントマップを作成するようにしています。

パテントマップ作成の試行錯誤を共有することによりパテントマップの理解も深まりますし、将来的にはパテントマップを自社独自で作成できるようにもなります。

もう一つの考え方としては、ソフトに頼らずマニュアルでパテントマップを作ることがあると思います。

従来のパテントマップは、特許明細書からキーワードや特許分類を自動的・機械的に抽出して出力するだけですので、特許明細書に書かれている技術内容を正確に抽出できるわけではありません。

したがって、人間が1件1件明細書を読み、キーワードをマニュアルで抽出してパテントマップを作成すれば、より理解しやすいマップを作れると思います。

しかし、この作業は多大な労力が必要となるデメリットがあります。この辺りは、あきらめて地道に作業するか、情報処理技術の進歩を待つしかなさそうです。

2013年9月6日金曜日

特許調査テクニック(研修備忘録)

弁理士には法で定められた研修制度というものがありまして、所定の期間で所定の単位を取得しなければなりません。

私も月1回程度研修に参加してるのですが、時間が経つと勉強したことを忘れてしまうことが多いため、研修で気付いたことを備忘録的に書きたいと思います。

なお、以下の記載には、私の記憶違いや認識の誤りの部分もあるかと思いますので、さらに詳しく知りたい方は、講師の出されている書籍や論文をお読みいただければと思います。

本日の研修は、ランドンIP合同会社の野崎さんが講師の「弁理士が知っておきたい特許調査テクニック」でした。

先行技術調査では、ターゲットとなる特許文献を収集するために、検索式を考える必要があります。検索式を構築するにあたり講義では、特許検索マトリクスの作成が提案されておりました。

特許検索マトリクスは、横軸に調査対象の背景技術、課題・目的、技術的特徴・解決手段を配し、縦軸に、検索キーワード、キーワード同義語、IPC、FI、Fタームが配された表です。

つまり、特許検索マトリクスの横軸は異なる概念が配され、縦軸には同じ概念が配されることになります。

そして、特許検索マトリクスの空欄に、必要な情報を記入してゆきます。記入が終わりましたら、記載内容を横軸方向に「and」をとり、縦軸方向に「or」をとるようにして(つまり、同じ概念はor、異なる概念はand)、検索式を幾つか構築してゆきます。

このマトリクスの良い所は、横軸は異なる概念が配され、縦軸には同じ概念が配されるため、検索式の「and」、「or」の取り方を間違わなくて済むところです。

「and」、「or」の取り方を間違えますと、ノイズや漏れが多くなってしまいますが、 特許検索マトリクスを使用しますと、機械的に「and」、「or」をとれますので、アウトプットにブレが生じにくいと思います。

また、私は特許検索をする場合には、特許分類(IPC、FI、Fターム)を主に使用します。それはキーワードを使用しますと、検索モレが多くなるという恐怖感があるからです。

今回の講義では、キーワードを使用する際のテクニックについても教えていただきました。キーワードを使用する際には、同義語もキーワードとして使用し、検索式では「or」をとればよいとのことです。

同義語については、Cyclone、JSTシソーラス、かんたん特許検索、J-GLOBALなどの無料のサイトを利用すれば、ある程度機械的に抽出できるとのことでした。

また、先行技術調査についてはユーザーが主体的に行い、他の難易度の高い特許調査をサーチャーが行うような役割分担を提案されていましたが、これには私も全く同意です。

以上、備忘録でした。

2013年9月3日火曜日

組織は規程に従う

おかげさまで、現在何社かの企業で「御社の知財部(登録商標です)」サービスを提供させていただいております。

提供するサービスの内容はクライアント企業の状況により異なりますが、サービスのひとつの軸として知財管理規程(及びその他規程類)の策定があります。

知財管理規程は、社内の知財の取り扱いを就業規則などと同様に条文にしてまとめたものと考えていただければ、イメージしやすいと思います。

提案する知財管理規程はベースとなる規程がありますが、そのままでは企業の実情に合わない場合がありますので、実情をヒアリングしながら微修正を加え完成してゆきます。

例えば、知財管理規程には、各規定を実行する担当者や責任者を明確にして記載する必要があります。そうしないと、せっかく規程を作っても、規程が実行されないということになりかねません。

しかし、 社内にそうした適任者がいない場合には、規程の記載を変更して規程が社内で回せるように修正します。

そうすることにより、会社の組織にマッチした知財管理規程が策定できることになります。

とはいえ、知財管理規程の修正程度では足らない場合もあり、その場合には、会社の方の組織を多少変更してもらう必要があります。例えば、知財責任者や知財担当者の任命は必須となります。

しかし、組織変更は簡単に行えるものではありませんので、最終的には社長の判断となります。したがって、知財管理規程の重要性を経営者に理解していただく必要があります。

経営学では、組織は戦略に従う、という言葉が有名ですが、 知財に関しては、組織は知財管理規程に従う、とでもなるでしょうか。

いずれにせよ、知財活動を社内に定着させる手段として、知財管理に適する組織を構築するというもの一つの有効な手段と思います。

2013年8月27日火曜日

知財費用の助成制度について

弊社Facebookページ(https://www.facebook.com/chizaidesign)の方で紹介しておりますが、現在中小企業向けの知財に関する助成制度が様々設けられております。

これは、中小企業を知財の面から支援することにより、国全体の競争力を増大するという政策的意義があるからと思います。

助成の内容としては、外国出願費用の助成に偏っているように思います。近年、グローバル化が叫ばれておりますので、これは妥当とも思いますが、知財活動は、国内出願や特許調査も重要な活動ですので、これらの活動への助成も欲しいところです。

さて、外国出願費用ですが、費用が公的機関から支援されますので、どんどん利用しましょうといいたいところですが、多少の注意点もあります。

(1)審査について
公費を投入するわけですので、やはり審査があります。審査の内容としては、企業の財務状況、ビジネスの有望性、技術の特許性等が様々な専門家により審査されることとなります。

助成の予算は予め決まっておりますので、応募した企業の数が少ない場合には、比較的容易に審査を通過しますが、応募企業が多い場合には、競争率が高くなり、 厳しい審査が行われることとなります。

(2)費用について
助成の割合は1/2程度ですので、全額助成される訳ではありません。したがって、外国出願に関してある程度の費用(百万~数百万程度)は自社で負担する必要があります。

また、助成金は出願が完了し費用が確定した後振り込まれますので、その間数百万円を建て替えておく必要があります。

さらに、外国出願に関しては、権利化に費用がかかること当然ですが、権利化後の権利行使や侵害調査にも、さらに多額の費用がかかります。しかし、これに対する支援はなく、自社で予算を確保しておく必要があります。

(3)手続きについて
審査のために様々な書類を整えて提出する必要がありますが、結構な労力が必要です。

制度によっては出願完了の時期が指定される場合がありますが、多くの国に出願を行う場合には、出願スケジュールとの整合を図ることが難しい場合もあります。

また、特許網の構築という観点からは複数の出願を行いところですが、助成事業は1件の外国出願のみ限定されます。

結局のところ、税金を使うという点からしょうがないとは思いますが、助成制度には様々な制約があります。

ひとつの考えとしては、助成制度に頼らずに、自社で出願した場合の収益計画を立てることが必要と思います。自社のビジネスですから、助成金が下りないから外国出願を取りやめる、という判断にはならないと思います。

ビジネスプランをしっかりたて、外国でのビジネスから得られる収益を予測し、必要な出願を行ってゆくことがまず基本となると思います。

逆に 、しっかりとビジネスプランを立てることができれば、助成金の審査も通り易くなると思いますので、助成を受けられる可能性も増すと思います。

最後になりますが、助成の募集は年1回程度となりますので、タイミングを逃すと翌年度の応募となってしまいます。所在地の自治体の助成スケジュールについて、一度ご確認いただければと思います。

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