2014年11月29日土曜日

付加価値について

休みの日には家の掃除をすることになりますが、うちで使っている掃除機は一般的な日本製の掃除機です。

この掃除機には、アイドリングストップ機能というものがついており、掃除機のヘッドが床から一定時間離れると、掃除機が停止し、再度ヘッドを床につけると、数秒の後、運転を再開するというシロモノです。

このアイドリングストップ機能というものが非常にストレスで大変困っています。

掃除機のヘッドは常に床に密着している訳ではなく、床の凹凸によりヘッドは床から離れたりしますので、その度に掃除機は停止し、再起動を繰り返すことになります。

運転停止の数秒は待機しなければなりませんので、非常に掃除の能率が悪くなり、いらいらすることになります。

この掃除機を設計した人は、自動車のアイドリングストップ機能にヒントを得て、この掃除を開発したのだと思います。

自動車の場合には、ガソリンを燃やす内燃機関であり、信号待ちは数分に及びますので、アイドリングストップによる燃費の向上効果はそれなりにあると思います。

一方、掃除機の場合にはモーター駆動であり、床から離れる時間は数秒ですので、アイドリングストップ機能を設けてもその節電効果はほとんどないどころか、かえって掃除の能率を低下させ、人間の貴重な時間を奪う、負の効果の方が大きいと思います。

このような設計がどうしてなされるかといえば、製品を他社製品から差別化しなければならないという強迫観念があると思います。

差別化を図る1つの手段としては、製品に新たな機能を付加することが通常行われます。

しかし、安易に機能を付加しても、需要者にその価値が感じられなければ、付加価値とはいえず、単なるコスト上昇要因となり、逆に競争力が低下します。

したがって、機能を付加する場合には、本当に需要者に価値があるものなのか熟慮しないと、うちの掃除機のようになってしまいます。

そのためには、顧客ニーズの調査を行うとか、実際に掃除機を使用している人を設計者に加えるとかの工夫があるとよいと思います。

最近はお掃除ロボットというものが普及しておりますが、これは人間の貴重な時間を掃除で消費するのを防止できるという価値を提供できますので、顧客ニーズを(偶然かもしれませんが)掴んだ商品と言えます。

ということで、機能を追加する場合には、需要者に本当に価値を提供するものか、検証することも必要かなと思います。

2014年11月22日土曜日

暗黙知について

一昔前、MBAに行くことがもてはやされた時期がありましたが、最近はMBAは役に立たないという言説が目立つようになりました。

MBAといっても、特別なものではなく、ただの大学院ですので、あくまでも体系化された形式知を伝達する場に過ぎません。

ただし、形式知はそのままでは何の役にも立ちませんので、MBAを出た後、実務を通じて暗黙知を得て知識として完成させる必要があります。

したがって、MBAで得た知識を実務で活用する機会のない人は、知識の完成が図れず、MBAで勉強したことが役に立たないと感じてしまうわけです。

そうすると暗黙知を得る必要があるわけですが、例えばMBAをでたら起業して実際に知識を使ってゆくとか工夫すればよいと思います。

また、逆に実務経験が豊富で暗黙知が蓄積されている人であれば、MBAにゆくことにより、知識が体系的に整理され、効果が感じられるかもしれません。

似たようなことは、資格にもいえ、例えば弁理士試験は特許法などの形式知の有無を測定する試験ですので、弁理士試験に合格しただけでは、何の役にも立ちません。

したがって、合格した後は実際に特許実務をこなして暗黙知を得て、知識として完成させてゆく作業が必要となります。

ところが近年、国が需要以上に合格者を増やしたため、合格しても実務に付けない人が生じるようになりました。実務につけませんと暗黙知を得られませんので、弁理士としての知識レベルにいつまでも到達できないことになります。

そうすると、資格取得に費やす時間と費用がまったく無駄になりますので、弁理士を目指すのはリスクが高く、最近は弁理士試験の受験者が減少しています。

もちろん、合格したらすぐ独立して実務を開始し、暗黙知を得ることもできるとは思いますし、そういう方は実際にいます。

結論としては、 MBAにせよ、弁理士にせよ、暗黙知をどう得るか、ということまで考えて、自分の進む道を考える必要があるのかと思います。

2014年11月16日日曜日

思考について

私は主に特許の仕事をしておりますが、だいたいどういうことをやっているかというと、このような感じです。

①対象発明の把握⇒②公知技術の調査⇒③両者の構成の相違の把握⇒④相違による技術的効果の評価

この①から④の作業を、案件ごとに行って1日が終わるという、ある意味単調な仕事です。

最近は、特許のみならず、お客さんのご要望で意匠や商標の仕事も行っておりますが、

意匠の場合には、
①対象意匠の把握⇒②公知意匠の調査⇒③両者の態様の相違の把握⇒④相違が需要者に与える美感の評価

商標の場合には、
①対象商標の把握⇒②先行商標の調査⇒③両者の外観・称呼・観念の相違の把握⇒④相違が需要者に与える印象・連想・記憶の評価

となり、やることは同じとなることに最近気が付きました。

そうすると、意匠・商標の仕事をしても、仕事の単調さは変わらないことになり、こんなことでよいのか考えてしまいます。

そんな中で、最近読んだ波頭亮さんの「思考・論理・分析(産業能率大学出版)」という本の中に、このような一節がありました。

「思考とは、思考対象に関して何らかの意味合い(メッセージ)を得るために頭のなかで情報(知識)を加工することなのである。」

「思考の他に重要な行為が存在する。それは『情報収集』である。」

「思考のメカニズムは、情報と情報を突き合わせて、比べ、『同じ部分』と『違う部分』を見極めるプロセスである。」

そういう意味では、特許実務というのはまさに「思考プロセス」であり、何ら特別なことではなく、他の分野や仕事でも当たり前に行われている思考作業にすぎないことがわかりました。

したがって、私の単調な仕事も、他の人も似たような仕事をしていると思われ、安心しました。

この本の著者の方は、バブル時代によくテレビに出ておらられ、あまりいい印象がなかったのですが、上記の本はかなりしっかりした内容で、実務にも大きな気づきを与えてくれる本で、もう少し早く読んでおけばよかったと思わせる本でした。

この本は、「思考」のみならず、その後の「論理」と「分析」についても書かれておりますので、本屋で見かけましたら、購入をお勧めいたします。

2014年11月13日木曜日

商店街について

昼ごはんを東京駅の八重洲地下街で食べることがよくあります。

地下街を歩いて感じることは、テナントが結構な頻度で入れ替わっていることです。行きつけの店などが無くなった時などは、少し残念な気持ちがします。

テナントが家賃を負担していれば運営会社はOKのような気もしますが、 八重洲地下街は、売上の低い店を積極的に入れ替えているようです。

集客力の高い店があるとそれを目指して地下街へ人が流入し、地下街の通行量が増加し、途中にある店にも興味を示す人が何割か生じ、他の店の売上にも繋がります。

したがって、 集客力のある店は、互いに集客力の相乗効果があるといえます。逆に集客力のない店が増えると、負の相乗効果により、地下街全体が沈没することになります。

そう考えると、地方の商店街がシャッター商店街化していることも、この負の相乗効果によるところが大きいのかもしれません。

商店の売上が悪くなると、業態を変化させるか、店を閉じるかの判断が求められますが、経営者が高齢の場合には、リスクを取って業態を変化させるよりも、シャッターを閉めて、補助金や年金で暮らす人も多いと思います。

商店街の中の1軒がシャッターを閉めると、商店街の通行量が(多少なりとも)減りますので、他の商店の売上に影響を与え、他の店も閉店に追い込まれる状況になるかもしれません。

こうして1店閉店すると負の相乗効果により、ぞくぞくと閉店に追い込まれ、シャッター商店街が出来上がるわけです。

店を閉じる人には、商店街から去ってもらい、新しい人に店をやってもらえばいいと思いますが、店が持ち家の場合には、そのようなことを強制することはできません。

と、商店街の話は人ごとのようにも思えますが、例えば会社の場合には、相乗効果を与えられない社員には辞めてもらい、新しい人を入れたほうがいいと、いうことができるとも思います。

但し、法律上、社員に一方的にやめてもらうことはできませんので、負の相乗効果により会社全体が落ちぶれる・・・ということもあるのかもしれません。

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