2015年9月16日水曜日

解決手段と提案について

弁理士キャラバン研修の最終回に参加してまいりました。本日は前回抽出した課題の解決手段を考えてお客さんに提案する、という内容でした。

そこでも感じたことはいろいろありました。一つは、解決手段の提示は課題とセットにした方がよいということです。

お客さんに解決手段のみを説明しても、課題がわからないと、「なんでやるの?」という反応しかかえってきません。

したがって、「特許出願しましょう!」というのではなく、「貴社の技術が模倣されるおそれがある」、ので、「特許出願しましょう!」という方がわかってもらえることになります。

また、提案する解決手段がどうしても自分のできることに引きずられてしまうこともわかりました。

例えば、本当であれば会社の組織体制を見直すことを提案すべきところ、当然弁理士はそのような提案は実行できませんので、知財部をつくりましょうというような、ちょっと本質から遠い、自分でできる提案をしてしまいます。

ただし、自分にできないことを提案しても仕事にはなりませんので、これはやむを得ないと思います。

さて、いろいろなチームの提案を聞かせてもらいましたが、提案としては、管理規程類の整備、秘密保持体制の整備、特許出願の活性化、従業員への知財教育等を1件うん十万円、もしくは、月何回か訪問して指導するというものが多くみられました。

そう考えますと、私が「御社の知財部®:http://www.ip-design.co.jp/」で行っているサービスもまさにこのようなことであり、相場よりも安くやらせていただいておりますので、ご要望があればぜひ当社にご相談ください。

さて、弁理士キャラバンの話に戻りますが、研修の終了とともに、最終的には1000人程度の多くの支援員が生まれることになります。

中小企業からの弁理士キャラバンへの申し込み件数は現状数件しかないそうです。そうすると、支援員となって場合でも、ほとんど仕事がないことが想定されます。

もともとこの企画には無理があったのか、はたまた、今後の頑張りで挽回できるか、よくわかりません。

2015年9月6日日曜日

オリンピックのエンブレムの件

東京オリンピックのエンブレムの件、ひとまず選定やり直しとなったようです。この件については、何か書こうと思いつつ、さぼっている間にあまりにも速い動きがありタイミングを逃しました。

世の中の意見を見て、一つ誤解があると思いましたのが、ロゴが似ているから著作権侵害になるとの考えです。

あまり著作権をうるさくいうとデザイナーが委縮するとか、アンチ著作権的な意見も見受けられます。

しかし、著作権侵害とされるには、ロゴが似ている以外にも、様々な要件が必要とされます。その一つには「依拠性」があります。

簡単に言えば、そのロゴを見てまねをした事実が必要です。

逆に言えば、著作権法的には、似たロゴがいくつ存在しても問題がなく、まねをした場合にのみ問題が生じる構造となっています。

これは、著作物は人間の人格の表れであり、似たロゴを拒絶するのは、似た人間の存在も拒絶することになり都合が悪いということです。世の中に似た人間、違う人間がいるのは当然ということです。

今回のオリンピックエンブレムも似た部分はありますが、「依拠性」が不明ですので、実際に裁判となって証拠を出し合わないと、著作権侵害かどうかはなんとも言えないということになります。

したがって、著作権侵害だというのは言い過ぎですし、著作権侵害ではないというのも言わなさ過ぎということになります。

今回、致命的であったのが、トートバックの「BEACH」、「フランスパン」、プレゼンに使用した「風景写真」です。

「BEACH」には微妙なフリーハンドのペインティングによるグラデーションがあり、「フランスパン」には焼きあがりの模様があり、「風景」には人混みがあります。

このような「ランダム性」の高い表現は、偶然に一致することはありませんので、両ロゴに同一の表現がある場合には、 「依拠した」ことが明らかとなります。

今回のエンブレムのような幾何学的要素の組み合わせの場合には、偶然似てしまうことがあるかもしれませんが、ランダム性の高い要素の場合には、言い逃れはできません。

さて、今後の東京オリンピックのエンブレムの件ですが、審査に際し著作物の詳細な調査が避けて通れないと思います。

しかし、著作物には登録制度がなく、広く公開されているものでもありませんので、調査には労力が必要となり、すべての著作物を調査することは現実的ではありません。

そうすると、例えば、候補をいくつか絞り込んだ段階で世の中に開示し、一般国民の意見を収集するのが現実的かと思います。

2015年9月5日土曜日

課題分析の難しさについて

先日、弁理士キャラバン研修の4回目に参加してまいりました。

今回からグループワークということで、研修は最終ステージとなります。

グループワークはしんどいからなのでしょうか、今回は多少欠席された方も見受けられました。

私もグループワークが非常に苦手で、最近は聞くだけの座学研修に参加することが多いです。

苦手な理由の一つとしては、私は時間をかけて考えるタイプなので5分10分の検討で自分の意見を表明するのが難しいこともあります。(単に頭が悪いともいえますが)

あと、どうしても声の大きい方の意見にまとまりがちなので、たまに、結果に納得できない場合もあるからです。まあ、人を説得できるような自分の意見をしっかり述べればいいんでしょうけど・・・・。

今回のテーマは、対象企業の「課題」を分析して、対象企業へのインタビュー項目を考える、というものでした。

課題分析ですが、いろいろな方の意見を目にしますと、分析の難しさを改めて考えさせられました。

難しさの一つには、課題の抽出に、解決手段が混入することです。

例えば、「知財対応の人材がいない」、や、「特許出願件数が少ない」、は、「課題」といえますが、「知財の部署をつくるべき」、や、「特許出願を増やすべき」、は、「解決手段」といえます。

特に、弁理士は解決手段を提案することが得意ですから、抽出内容に、どうしても解決手段が多くなり、課題がなにかよくわからなくなります。

また、課題と解決手段は、「特許出願が少ない」、「特許出願を多くすべき」、と表現上裏腹の関係に過ぎないことありますので、 深く考えると切り分けが難しいということもあるかと思います。

そうすると、対象企業のインタビュー時に、「特許出願件数が少ないですが、どのようにお考えでしょうか」と聞いて、対象企業の課題をえぐりだすべきところ、「御社は特許出願件数が少ないので、知財部をつくって出願を増やしましょう」と聞くことになり、対象企業からは「わかりました」との意見しか引き出せないことになります。

もう一つの難しさは、目に見える課題に分析が引きずられることです。

対象企業の内部的な問題点を説明する紙が配られてから、対象企業の経営上の課題の分析をしたのですが、そうすると、抽出される課題には、対象企業の内部事情がどうしても多くなります。

企業の内部事情の課題を解決すれば経営がうまくゆくということになってしまいますが、当然そうではありません。

経営上の課題は、内部事情のみならず、外部環境や、競合企業の状況や、顧客の嗜好等から生じる課題もあります(人口減少、大企業の参入等)。

そうすると、バランスよく情報をとって、特定の要因に引きずられないような分析を心がける必要があります。これは、各種フレームワークを使用することにより、片寄りを防げそうです。

弁理士キャラバン研修の次回最終回は「解決手段を考える」ことがテーマとなりますので、また、新たな気づきがあるのではと思います。

2015年8月19日水曜日

オープン・クローズ戦略について

本日は、弁理士知財キャラバンの支援員となるための第3回目の研修を受けてまいりました。

本日の研修では、近年話題のオープン・クローズ戦略のお話がありました。

一つ興味深かったのが、オープン・クローズ戦略の定義が現状ではいろいろとあり、一つに定まっていないことでした。

オープン・クローズ戦略の定義は、大まかに言えば、以下の2つに区分できると思います。

①特許出願を行い技術を開示する領域をオープン領域とし、ノウハウ秘匿とする領域をクローズ領域とし、これらを組み合わせる戦略をオープン・クローズ戦略とする。

②自社独占実施をする領域をクローズ領域とし、他社実施を許容する領域をオープン領域とし、これらを組み合わせる戦略をオープン・クローズ戦略とする。

最近流行りのオープン・クローズ戦略の意味は②に近いのではないでしょうか。

②の場合には、オープン領域、クローズ領域に自社特許権があってもかまいませんし、なくてもかまいません。

自社特許がある場合は、自社特許権の独占性によりクローズ領域を容易に形成できますし、オープン領域は他社に無償、もしくは、リーズナブルなライセンス料で実施を許諾することにより容易に形成できます。

自社特許がない場合には、契約によってオープン領域とクローズ領域の境界を定めることになります。

とはいえ、この戦略がうまくゆくかといえば、このままではうまくいかないと思われます。

まず、オープン領域とはいいますが、通常はライセンス料を払うくらいであれば、設計変更して特許権に抵触しないような実施をすると思います。

したがって、オープン領域に他社を誘引する何らかの仕組みが必要となります。

また、オープン領域とするよりも、すべてクローズ領域にして自社で独占実施するほうが利益率は高くなりますので、通常はオープン領域を設けないと思います。

したがって、オープン領域を設けても利益率が低下しない仕組みが必要となります。

オープン領域に他社を誘引する仕組みとしては、標準化が一つの可能性として考えられます。標準化技術は使用することが義務付けられますので、オープン領域と標準の技術内容が重なり合うようにすればよさそうです。

オープン領域を設けても利益率が低下しない仕組みとしては、製品のバリューチェーンを分析し、付加価値の高い場所をクローズ領域とし、付加価値の低いところをオープン領域にして、自社は儲かる部分に専念し、他社には儲からない部分をやらせれば、うまくゆきそうです。

ということで、オープン・クローズ戦略は単に知財だけの問題ではなく、ビジネスモデルや標準化の知識がないとうまくゆく仕組みを作れないということになるかと思います。

あと、中小企業がオープン・クローズ戦略をはたして実行できるかという疑問もあります。

オープン・クローズ戦略を実行するためには、特定の技術領域に、多数の自社知財権を分布させる必要がありますが、中小企業の特許出願件数はそもそも多くはありませんので、少ない知財権ではオープン領域とクローズ領域とをうまく規定できない可能性があります。

そうすると、中小企業向けにアレンジしたオープン・クローズ戦略を開発する必要があると思いますが、どなたか考えてもらえないでしょうか・・・。

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