2015年9月6日日曜日

オリンピックのエンブレムの件

東京オリンピックのエンブレムの件、ひとまず選定やり直しとなったようです。この件については、何か書こうと思いつつ、さぼっている間にあまりにも速い動きがありタイミングを逃しました。

世の中の意見を見て、一つ誤解があると思いましたのが、ロゴが似ているから著作権侵害になるとの考えです。

あまり著作権をうるさくいうとデザイナーが委縮するとか、アンチ著作権的な意見も見受けられます。

しかし、著作権侵害とされるには、ロゴが似ている以外にも、様々な要件が必要とされます。その一つには「依拠性」があります。

簡単に言えば、そのロゴを見てまねをした事実が必要です。

逆に言えば、著作権法的には、似たロゴがいくつ存在しても問題がなく、まねをした場合にのみ問題が生じる構造となっています。

これは、著作物は人間の人格の表れであり、似たロゴを拒絶するのは、似た人間の存在も拒絶することになり都合が悪いということです。世の中に似た人間、違う人間がいるのは当然ということです。

今回のオリンピックエンブレムも似た部分はありますが、「依拠性」が不明ですので、実際に裁判となって証拠を出し合わないと、著作権侵害かどうかはなんとも言えないということになります。

したがって、著作権侵害だというのは言い過ぎですし、著作権侵害ではないというのも言わなさ過ぎということになります。

今回、致命的であったのが、トートバックの「BEACH」、「フランスパン」、プレゼンに使用した「風景写真」です。

「BEACH」には微妙なフリーハンドのペインティングによるグラデーションがあり、「フランスパン」には焼きあがりの模様があり、「風景」には人混みがあります。

このような「ランダム性」の高い表現は、偶然に一致することはありませんので、両ロゴに同一の表現がある場合には、 「依拠した」ことが明らかとなります。

今回のエンブレムのような幾何学的要素の組み合わせの場合には、偶然似てしまうことがあるかもしれませんが、ランダム性の高い要素の場合には、言い逃れはできません。

さて、今後の東京オリンピックのエンブレムの件ですが、審査に際し著作物の詳細な調査が避けて通れないと思います。

しかし、著作物には登録制度がなく、広く公開されているものでもありませんので、調査には労力が必要となり、すべての著作物を調査することは現実的ではありません。

そうすると、例えば、候補をいくつか絞り込んだ段階で世の中に開示し、一般国民の意見を収集するのが現実的かと思います。

「専門家なのに、なぜ予測を外すのか?」~未来予測と特許戦略のお話~

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