2015年10月3日土曜日

失敗しないための知識について

先週、ある登山家の方が、エベレスト登頂を断念したことがニュースになっていました。

断念の理由としては、雪が深くラッセルが困難ということで、素人の私には、それではしょうがないという印象でした。

ところが、某登山ファンの集まるサイトを覗いたところ、かなり早い段階で登頂は無理であることが予見されていました。

その理由としては、最終キャンプの位置が山頂から遠すぎ、山頂にたどり着く前に体力がつきるというものでした。

たとえ辿り着いても、最終キャンプに戻る体力はなく、山頂付近でビバークする必要があり、8000m超でのビバークは死を意味するということでした。

実際に、雪を掻きわける体力が失われたことが断念の理由ですので、この予見は正しかったことになります。

よく考えてみますと、エベレストに登頂した人は無数におりますので、その登山の方法論というものは無数の登頂事例からほぼ確立していると考えられます。

したがって、あるべき最終キャンプの位置というものも、いくつか特定された位置があると思われ、その位置に最終キャンプがなかった段階で失敗は確実という訳です。常人を超えたテクニックや体力があれば別ですが・・・。

そう考えると、つまらない話ですが、登山計画を立てた段階で、失敗することは、ほぼ明らかとなるのではと思います。

次に、その登山計画を正確にトレースできるか否かで最終的な、成功・失敗が決まることになります。

登頂が成功することは、体調や天候など不確定要素に左右されるため、予想することは難しいですが、登頂が失敗することは、計画段階でほぼ確実に分かってしまうわけです。

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よくMBAは役に立たないといわれます。MBAで教えていることといえば、過去の企業の成功事例を体系化した知識です。

確かにMBAで得た知識に基づいて経営を行っても、成功するかどうかは、よくわかりません。成功が確実であるならば、MBAの教授はみなお金持ちですが、そういう訳でもないようです。

しかしながら、MBAで教えるような経営戦略を無視した経営は失敗する可能性が高いということができると思います。

経営戦略は成功事例に基づいて理論化されていますので、理論を計画に落とし込んで、実行することが成功へ到達する道筋となると思います。(それでも、不確定要素により失敗することはあります。)

そういう意味では、MBAの知識は成功するためというより、失敗しないための知識といえるかもしれません。

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先の登山家の方は、登頂に再チャレンジするそうですか、登山計画はどうなっているのか興味深いところです。最終キャンプ地がどこになるか注目したいと思います。

2015年9月16日水曜日

解決手段と提案について

弁理士キャラバン研修の最終回に参加してまいりました。本日は前回抽出した課題の解決手段を考えてお客さんに提案する、という内容でした。

そこでも感じたことはいろいろありました。一つは、解決手段の提示は課題とセットにした方がよいということです。

お客さんに解決手段のみを説明しても、課題がわからないと、「なんでやるの?」という反応しかかえってきません。

したがって、「特許出願しましょう!」というのではなく、「貴社の技術が模倣されるおそれがある」、ので、「特許出願しましょう!」という方がわかってもらえることになります。

また、提案する解決手段がどうしても自分のできることに引きずられてしまうこともわかりました。

例えば、本当であれば会社の組織体制を見直すことを提案すべきところ、当然弁理士はそのような提案は実行できませんので、知財部をつくりましょうというような、ちょっと本質から遠い、自分でできる提案をしてしまいます。

ただし、自分にできないことを提案しても仕事にはなりませんので、これはやむを得ないと思います。

さて、いろいろなチームの提案を聞かせてもらいましたが、提案としては、管理規程類の整備、秘密保持体制の整備、特許出願の活性化、従業員への知財教育等を1件うん十万円、もしくは、月何回か訪問して指導するというものが多くみられました。

そう考えますと、私が「御社の知財部®:http://www.ip-design.co.jp/」で行っているサービスもまさにこのようなことであり、相場よりも安くやらせていただいておりますので、ご要望があればぜひ当社にご相談ください。

さて、弁理士キャラバンの話に戻りますが、研修の終了とともに、最終的には1000人程度の多くの支援員が生まれることになります。

中小企業からの弁理士キャラバンへの申し込み件数は現状数件しかないそうです。そうすると、支援員となって場合でも、ほとんど仕事がないことが想定されます。

もともとこの企画には無理があったのか、はたまた、今後の頑張りで挽回できるか、よくわかりません。

2015年9月6日日曜日

オリンピックのエンブレムの件

東京オリンピックのエンブレムの件、ひとまず選定やり直しとなったようです。この件については、何か書こうと思いつつ、さぼっている間にあまりにも速い動きがありタイミングを逃しました。

世の中の意見を見て、一つ誤解があると思いましたのが、ロゴが似ているから著作権侵害になるとの考えです。

あまり著作権をうるさくいうとデザイナーが委縮するとか、アンチ著作権的な意見も見受けられます。

しかし、著作権侵害とされるには、ロゴが似ている以外にも、様々な要件が必要とされます。その一つには「依拠性」があります。

簡単に言えば、そのロゴを見てまねをした事実が必要です。

逆に言えば、著作権法的には、似たロゴがいくつ存在しても問題がなく、まねをした場合にのみ問題が生じる構造となっています。

これは、著作物は人間の人格の表れであり、似たロゴを拒絶するのは、似た人間の存在も拒絶することになり都合が悪いということです。世の中に似た人間、違う人間がいるのは当然ということです。

今回のオリンピックエンブレムも似た部分はありますが、「依拠性」が不明ですので、実際に裁判となって証拠を出し合わないと、著作権侵害かどうかはなんとも言えないということになります。

したがって、著作権侵害だというのは言い過ぎですし、著作権侵害ではないというのも言わなさ過ぎということになります。

今回、致命的であったのが、トートバックの「BEACH」、「フランスパン」、プレゼンに使用した「風景写真」です。

「BEACH」には微妙なフリーハンドのペインティングによるグラデーションがあり、「フランスパン」には焼きあがりの模様があり、「風景」には人混みがあります。

このような「ランダム性」の高い表現は、偶然に一致することはありませんので、両ロゴに同一の表現がある場合には、 「依拠した」ことが明らかとなります。

今回のエンブレムのような幾何学的要素の組み合わせの場合には、偶然似てしまうことがあるかもしれませんが、ランダム性の高い要素の場合には、言い逃れはできません。

さて、今後の東京オリンピックのエンブレムの件ですが、審査に際し著作物の詳細な調査が避けて通れないと思います。

しかし、著作物には登録制度がなく、広く公開されているものでもありませんので、調査には労力が必要となり、すべての著作物を調査することは現実的ではありません。

そうすると、例えば、候補をいくつか絞り込んだ段階で世の中に開示し、一般国民の意見を収集するのが現実的かと思います。

2015年9月5日土曜日

課題分析の難しさについて

先日、弁理士キャラバン研修の4回目に参加してまいりました。

今回からグループワークということで、研修は最終ステージとなります。

グループワークはしんどいからなのでしょうか、今回は多少欠席された方も見受けられました。

私もグループワークが非常に苦手で、最近は聞くだけの座学研修に参加することが多いです。

苦手な理由の一つとしては、私は時間をかけて考えるタイプなので5分10分の検討で自分の意見を表明するのが難しいこともあります。(単に頭が悪いともいえますが)

あと、どうしても声の大きい方の意見にまとまりがちなので、たまに、結果に納得できない場合もあるからです。まあ、人を説得できるような自分の意見をしっかり述べればいいんでしょうけど・・・・。

今回のテーマは、対象企業の「課題」を分析して、対象企業へのインタビュー項目を考える、というものでした。

課題分析ですが、いろいろな方の意見を目にしますと、分析の難しさを改めて考えさせられました。

難しさの一つには、課題の抽出に、解決手段が混入することです。

例えば、「知財対応の人材がいない」、や、「特許出願件数が少ない」、は、「課題」といえますが、「知財の部署をつくるべき」、や、「特許出願を増やすべき」、は、「解決手段」といえます。

特に、弁理士は解決手段を提案することが得意ですから、抽出内容に、どうしても解決手段が多くなり、課題がなにかよくわからなくなります。

また、課題と解決手段は、「特許出願が少ない」、「特許出願を多くすべき」、と表現上裏腹の関係に過ぎないことありますので、 深く考えると切り分けが難しいということもあるかと思います。

そうすると、対象企業のインタビュー時に、「特許出願件数が少ないですが、どのようにお考えでしょうか」と聞いて、対象企業の課題をえぐりだすべきところ、「御社は特許出願件数が少ないので、知財部をつくって出願を増やしましょう」と聞くことになり、対象企業からは「わかりました」との意見しか引き出せないことになります。

もう一つの難しさは、目に見える課題に分析が引きずられることです。

対象企業の内部的な問題点を説明する紙が配られてから、対象企業の経営上の課題の分析をしたのですが、そうすると、抽出される課題には、対象企業の内部事情がどうしても多くなります。

企業の内部事情の課題を解決すれば経営がうまくゆくということになってしまいますが、当然そうではありません。

経営上の課題は、内部事情のみならず、外部環境や、競合企業の状況や、顧客の嗜好等から生じる課題もあります(人口減少、大企業の参入等)。

そうすると、バランスよく情報をとって、特定の要因に引きずられないような分析を心がける必要があります。これは、各種フレームワークを使用することにより、片寄りを防げそうです。

弁理士キャラバン研修の次回最終回は「解決手段を考える」ことがテーマとなりますので、また、新たな気づきがあるのではと思います。

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