2015年10月13日火曜日

付記試験の勉強について

そろそろ付記試験の季節と思います。googleで付記試験を検索しますと、あまり盛り上がっていないようですので、弁理士試験と同様に、受験者数も減っているのかと思います。

さて、この時期の勉強としては、もうじたばたしてもしょうがありませんので、基本に返って「知的財産権侵害訴訟実務ハンドブック」を1ページ目から通読することをお勧めいたします。

結局のところ、付記試験の問題は、この本に基づいて作られるといえますので、この本がスラスラ読めれば、合格に近いということがいえます。

私も試験前日はこの本を通読して、知識の最終確認をしました。

しかし、通読するとわかりますが、初見の内容も多々あり、えっと思う内容もあると思います。

勉強不足が一つの理由ですが、過去問に聞かれていない部分も知識としてごっそり落ちている場合もあります。

過去問で聞かれたことがない部分は、出題されるとしても条文レベルの問題となりますので、条文の位置だけでも簡単に押さえておくとよいことがあるかもしれません。

私もこれで、5点ほど得をしました・・・。

昨年の問題で驚いたのが、「請求項の分説」をさせる部分がないことでした。一応特許専門にやっている私でも試験現場で請求項の分説作業をするのは非常にしんどいものがありました。

去年はそれがありませんでしたので、特許実務をやっていない方にも、取り組みやすい問題だったといえます。実際、合格率も例年に比べて高かったように思います。

もちろん、去年でなかったからといって、今年も「請求項の分説」がないわけでもありませんので、試験対策上は慣れておくのがいいと思います。

最後ですが、合格率は50%くらいありますので、2回受ければ合格する、くらいの楽な気持ちで試験に臨むのがよいのではないでしょうか。

2015年10月3日土曜日

失敗しないための知識について

先週、ある登山家の方が、エベレスト登頂を断念したことがニュースになっていました。

断念の理由としては、雪が深くラッセルが困難ということで、素人の私には、それではしょうがないという印象でした。

ところが、某登山ファンの集まるサイトを覗いたところ、かなり早い段階で登頂は無理であることが予見されていました。

その理由としては、最終キャンプの位置が山頂から遠すぎ、山頂にたどり着く前に体力がつきるというものでした。

たとえ辿り着いても、最終キャンプに戻る体力はなく、山頂付近でビバークする必要があり、8000m超でのビバークは死を意味するということでした。

実際に、雪を掻きわける体力が失われたことが断念の理由ですので、この予見は正しかったことになります。

よく考えてみますと、エベレストに登頂した人は無数におりますので、その登山の方法論というものは無数の登頂事例からほぼ確立していると考えられます。

したがって、あるべき最終キャンプの位置というものも、いくつか特定された位置があると思われ、その位置に最終キャンプがなかった段階で失敗は確実という訳です。常人を超えたテクニックや体力があれば別ですが・・・。

そう考えると、つまらない話ですが、登山計画を立てた段階で、失敗することは、ほぼ明らかとなるのではと思います。

次に、その登山計画を正確にトレースできるか否かで最終的な、成功・失敗が決まることになります。

登頂が成功することは、体調や天候など不確定要素に左右されるため、予想することは難しいですが、登頂が失敗することは、計画段階でほぼ確実に分かってしまうわけです。

・・・

よくMBAは役に立たないといわれます。MBAで教えていることといえば、過去の企業の成功事例を体系化した知識です。

確かにMBAで得た知識に基づいて経営を行っても、成功するかどうかは、よくわかりません。成功が確実であるならば、MBAの教授はみなお金持ちですが、そういう訳でもないようです。

しかしながら、MBAで教えるような経営戦略を無視した経営は失敗する可能性が高いということができると思います。

経営戦略は成功事例に基づいて理論化されていますので、理論を計画に落とし込んで、実行することが成功へ到達する道筋となると思います。(それでも、不確定要素により失敗することはあります。)

そういう意味では、MBAの知識は成功するためというより、失敗しないための知識といえるかもしれません。

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先の登山家の方は、登頂に再チャレンジするそうですか、登山計画はどうなっているのか興味深いところです。最終キャンプ地がどこになるか注目したいと思います。

2015年9月16日水曜日

解決手段と提案について

弁理士キャラバン研修の最終回に参加してまいりました。本日は前回抽出した課題の解決手段を考えてお客さんに提案する、という内容でした。

そこでも感じたことはいろいろありました。一つは、解決手段の提示は課題とセットにした方がよいということです。

お客さんに解決手段のみを説明しても、課題がわからないと、「なんでやるの?」という反応しかかえってきません。

したがって、「特許出願しましょう!」というのではなく、「貴社の技術が模倣されるおそれがある」、ので、「特許出願しましょう!」という方がわかってもらえることになります。

また、提案する解決手段がどうしても自分のできることに引きずられてしまうこともわかりました。

例えば、本当であれば会社の組織体制を見直すことを提案すべきところ、当然弁理士はそのような提案は実行できませんので、知財部をつくりましょうというような、ちょっと本質から遠い、自分でできる提案をしてしまいます。

ただし、自分にできないことを提案しても仕事にはなりませんので、これはやむを得ないと思います。

さて、いろいろなチームの提案を聞かせてもらいましたが、提案としては、管理規程類の整備、秘密保持体制の整備、特許出願の活性化、従業員への知財教育等を1件うん十万円、もしくは、月何回か訪問して指導するというものが多くみられました。

そう考えますと、私が「御社の知財部®:http://www.ip-design.co.jp/」で行っているサービスもまさにこのようなことであり、相場よりも安くやらせていただいておりますので、ご要望があればぜひ当社にご相談ください。

さて、弁理士キャラバンの話に戻りますが、研修の終了とともに、最終的には1000人程度の多くの支援員が生まれることになります。

中小企業からの弁理士キャラバンへの申し込み件数は現状数件しかないそうです。そうすると、支援員となって場合でも、ほとんど仕事がないことが想定されます。

もともとこの企画には無理があったのか、はたまた、今後の頑張りで挽回できるか、よくわかりません。

2015年9月6日日曜日

オリンピックのエンブレムの件

東京オリンピックのエンブレムの件、ひとまず選定やり直しとなったようです。この件については、何か書こうと思いつつ、さぼっている間にあまりにも速い動きがありタイミングを逃しました。

世の中の意見を見て、一つ誤解があると思いましたのが、ロゴが似ているから著作権侵害になるとの考えです。

あまり著作権をうるさくいうとデザイナーが委縮するとか、アンチ著作権的な意見も見受けられます。

しかし、著作権侵害とされるには、ロゴが似ている以外にも、様々な要件が必要とされます。その一つには「依拠性」があります。

簡単に言えば、そのロゴを見てまねをした事実が必要です。

逆に言えば、著作権法的には、似たロゴがいくつ存在しても問題がなく、まねをした場合にのみ問題が生じる構造となっています。

これは、著作物は人間の人格の表れであり、似たロゴを拒絶するのは、似た人間の存在も拒絶することになり都合が悪いということです。世の中に似た人間、違う人間がいるのは当然ということです。

今回のオリンピックエンブレムも似た部分はありますが、「依拠性」が不明ですので、実際に裁判となって証拠を出し合わないと、著作権侵害かどうかはなんとも言えないということになります。

したがって、著作権侵害だというのは言い過ぎですし、著作権侵害ではないというのも言わなさ過ぎということになります。

今回、致命的であったのが、トートバックの「BEACH」、「フランスパン」、プレゼンに使用した「風景写真」です。

「BEACH」には微妙なフリーハンドのペインティングによるグラデーションがあり、「フランスパン」には焼きあがりの模様があり、「風景」には人混みがあります。

このような「ランダム性」の高い表現は、偶然に一致することはありませんので、両ロゴに同一の表現がある場合には、 「依拠した」ことが明らかとなります。

今回のエンブレムのような幾何学的要素の組み合わせの場合には、偶然似てしまうことがあるかもしれませんが、ランダム性の高い要素の場合には、言い逃れはできません。

さて、今後の東京オリンピックのエンブレムの件ですが、審査に際し著作物の詳細な調査が避けて通れないと思います。

しかし、著作物には登録制度がなく、広く公開されているものでもありませんので、調査には労力が必要となり、すべての著作物を調査することは現実的ではありません。

そうすると、例えば、候補をいくつか絞り込んだ段階で世の中に開示し、一般国民の意見を収集するのが現実的かと思います。

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