2015年10月18日日曜日

周知技術問題について


以前このブログで、1回目の拒絶理由通知で新たな事項を組み込む補正をすると、周知技術で拒絶査定となり困っていることを記事にしたことがあります。

http://chizai-design.blogspot.jp/2015_06_07_archive.html

審査基準も新しくなりましたので、この周知技術問題(と、勝手に名付けましたが・・・)が新審査基準下で今後どう扱われるのか、考えてみたいと思います。

まず、審査基準の「第III部 第2章 第2節  進歩性」の「3.3 進歩性の判断における留意事項」には以下の記載があります。

(3)審査官は、論理付けのために引用発明として用いたり、設計変更等の根拠として用いたりする周知技術について、周知技術であるという理由だけで、論理付けができるか否かの検討(その周知技術の適用に阻害要因がないか等の検討)を省略してはならない.

ということは、周知技術で拒絶するには、論理付けもしなければならないのが原則といえますので、論理付けを明示するために、次のアクションは、再度の拒絶理由となるのが素直な考えと思います。

拒絶査定の「備考」で、無理やり論理付けをしてしまうという荒業もあるかもしれませんが・・・。これは、止めてほしいです・・・。

次に、審査基準の「第I部 第2章 第2節 先行技術調査及び新規性・進歩性等の判断」 の「2.2 調査対象を決定する際に考慮すべき事項」には以下の記載があります。

(2)審査官は、査定までの審査の効率性を踏まえて、補正により請求項に繰り入れられることが合理的に予測できる事項も調査対象として考慮に入れる。

つまり、補正により請求項に繰り入れられそうな事項についても、先行技術調査の範囲にあらかじめ組み込まれていることから、周知技術についても、最初の拒絶理由通知時に周知文献として先回り的に出願人に提示することもできるのではないでしょうか。

拒絶査定にていきなり不意打ち的に周知文献を提示するよりも、このようにしていただいた方が、出願人も対応の方針を立てやすいと思います。

以上のように、審査基準の内容は、実は結構ユーザーフレンドリーな内容となっています。あとは、この審査基準に基づいて粛々と審査がなされれば、周知技術問題も自然となくなると思います。さて、どうなるでしょうか。

2015年10月16日金曜日

特許、意匠の審査基準など

本日は、知的財産権制度説明会というものに参加してまいりました。講義の題目は「特許審査基準」と「意匠審査基準」でした。

特に、特許審査基準は2015年10月1日に改定されたばかりですので、何か新しい話が聞けるのではと思いました。

結果的には、特に目新しい話はありませんでした。しかし、これはこれでよいことです。

この手の説明会は新しい知識を仕入れるというより、自分の知識に穴がないか、認識に誤りがないかを確認する意味が大きいです。

特に、審査基準に関する認識が誤っていた場合には、大きな手続き上のミスにつながり、お客さんに回復不能な損害を与えることになります。

説明会の内容がすんなり入ってくるということは、実務上の勘が鈍っていないといえますので、しばらくは、弁理士としての仕事を無難にすることができそうです。

逆に、審査基準説明会の内容がよくわからなくなって来たら、この仕事をやめる時期が来た、すなわち引退の時期と思います。

さて、上で申し上げましたように、特許の審査基準は2015年10月1日に改定されました。

改定の考え方としては、簡潔・明瞭化、事例・裁判例の充実、英語に翻訳できる日本語を使用(今の記載では外国人に説明するのがしんどいですし)・・・、というようなコンセプトのようで、従前の780ページから、約500ページへとボリュームが減らされました。

単純な私は読む量が減ると思って喜んだのですが、ぬか喜びでした・・・。

審査基準は確かに簡略化されましたが、やはり、簡略化しにくい部分もありますので、それらは、「新・審査ハンドブック」に移動したようです(すいません、私はまだ読めていません)。

新・審査ハンドブックは、従前の140ページから2000ページ!へと大ボリュームアップされました。

したがって、今後は基本的なところは「審査基準」でおさえて、よりつっこんだところは、「審査ハンドブック」を参照して実務をこなす必要がありそうです。

2015年10月13日火曜日

付記試験の勉強について

そろそろ付記試験の季節と思います。googleで付記試験を検索しますと、あまり盛り上がっていないようですので、弁理士試験と同様に、受験者数も減っているのかと思います。

さて、この時期の勉強としては、もうじたばたしてもしょうがありませんので、基本に返って「知的財産権侵害訴訟実務ハンドブック」を1ページ目から通読することをお勧めいたします。

結局のところ、付記試験の問題は、この本に基づいて作られるといえますので、この本がスラスラ読めれば、合格に近いということがいえます。

私も試験前日はこの本を通読して、知識の最終確認をしました。

しかし、通読するとわかりますが、初見の内容も多々あり、えっと思う内容もあると思います。

勉強不足が一つの理由ですが、過去問に聞かれていない部分も知識としてごっそり落ちている場合もあります。

過去問で聞かれたことがない部分は、出題されるとしても条文レベルの問題となりますので、条文の位置だけでも簡単に押さえておくとよいことがあるかもしれません。

私もこれで、5点ほど得をしました・・・。

昨年の問題で驚いたのが、「請求項の分説」をさせる部分がないことでした。一応特許専門にやっている私でも試験現場で請求項の分説作業をするのは非常にしんどいものがありました。

去年はそれがありませんでしたので、特許実務をやっていない方にも、取り組みやすい問題だったといえます。実際、合格率も例年に比べて高かったように思います。

もちろん、去年でなかったからといって、今年も「請求項の分説」がないわけでもありませんので、試験対策上は慣れておくのがいいと思います。

最後ですが、合格率は50%くらいありますので、2回受ければ合格する、くらいの楽な気持ちで試験に臨むのがよいのではないでしょうか。

2015年10月3日土曜日

失敗しないための知識について

先週、ある登山家の方が、エベレスト登頂を断念したことがニュースになっていました。

断念の理由としては、雪が深くラッセルが困難ということで、素人の私には、それではしょうがないという印象でした。

ところが、某登山ファンの集まるサイトを覗いたところ、かなり早い段階で登頂は無理であることが予見されていました。

その理由としては、最終キャンプの位置が山頂から遠すぎ、山頂にたどり着く前に体力がつきるというものでした。

たとえ辿り着いても、最終キャンプに戻る体力はなく、山頂付近でビバークする必要があり、8000m超でのビバークは死を意味するということでした。

実際に、雪を掻きわける体力が失われたことが断念の理由ですので、この予見は正しかったことになります。

よく考えてみますと、エベレストに登頂した人は無数におりますので、その登山の方法論というものは無数の登頂事例からほぼ確立していると考えられます。

したがって、あるべき最終キャンプの位置というものも、いくつか特定された位置があると思われ、その位置に最終キャンプがなかった段階で失敗は確実という訳です。常人を超えたテクニックや体力があれば別ですが・・・。

そう考えると、つまらない話ですが、登山計画を立てた段階で、失敗することは、ほぼ明らかとなるのではと思います。

次に、その登山計画を正確にトレースできるか否かで最終的な、成功・失敗が決まることになります。

登頂が成功することは、体調や天候など不確定要素に左右されるため、予想することは難しいですが、登頂が失敗することは、計画段階でほぼ確実に分かってしまうわけです。

・・・

よくMBAは役に立たないといわれます。MBAで教えていることといえば、過去の企業の成功事例を体系化した知識です。

確かにMBAで得た知識に基づいて経営を行っても、成功するかどうかは、よくわかりません。成功が確実であるならば、MBAの教授はみなお金持ちですが、そういう訳でもないようです。

しかしながら、MBAで教えるような経営戦略を無視した経営は失敗する可能性が高いということができると思います。

経営戦略は成功事例に基づいて理論化されていますので、理論を計画に落とし込んで、実行することが成功へ到達する道筋となると思います。(それでも、不確定要素により失敗することはあります。)

そういう意味では、MBAの知識は成功するためというより、失敗しないための知識といえるかもしれません。

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先の登山家の方は、登頂に再チャレンジするそうですか、登山計画はどうなっているのか興味深いところです。最終キャンプ地がどこになるか注目したいと思います。

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