2017年1月21日土曜日

ノウハウは特許出願しない? (その2)

はじめてしりましたが、空売り専門の投資顧問というのがあるそうで、先日そこが作成したレポート(ネット上で公開されています。)を読みました。

レポートは青色ダイオード訴訟の代理人であったこともある(今は投資顧問の代表とのこと)、有名な弁護士の方が書かれたそうで、 なかなか手厳しい内容でした。

空売り専門ということで、(攻撃?)対象の企業の株価が下がるような内容なのですが、その一つに、「製造方法については、ノウハウ秘匿としているが、特許権が10件程度しかなく、参入障壁を築けていない」との指摘がありました。

確かにノウハウ秘匿といえど、巨大資本が参入し始めると、容易にキャッチアップされてしまうでしょうから、特許権がない場合には、容易に市場参入されてしまいます。

そうすると、ノウハウについても出願することも必要かと思います。

また、それでも、ノウハウを出願しない場合には、特許権の数が足らず、参入障壁が気づけませんので、他の技術(物の発明など)について、積極的に出願し、特許権の不足を補うことも必要かと思います。

結局のところ、ノウハウだから出願しない、のではなく、参入障壁の観点から、必要な特許網を構築するために、過不足なく出願してゆくことが必要と思います。

2017年1月10日火曜日

ノウハウは特許出願しない?

最近は製造方法等のノウハウは特許出願しないよう、各方面から厳しくいわれることが多いと思います。

その理由としては、権利化しても権利行使しにくいことや、ノウハウを真似されてしまうことがあります。それだったら、特許出願せずに秘密にしておこうという考えです。

実際その通りとは思いますが、一つだけ注意が必要なことがあります。それは、他社が権利化してしまう事態の発生です。

自社ノウハウといえど、他社も新しい技術を開発できるよう大変な努力していますので、独力でそのノウハウに到達してしまう可能は十分あります。

他社が権利化してしまいますと、自社ノウハウといえど実施不能となります。 これは大変な事態です。

ノウハウは権利行使しにくいから、こっそり実施を継続すればよいとも考えてしまいますが、裁判になれば、立証責任が転換し、自己の実施態様を具体的に開示しなければなりませんので(特許法104条の2)、まったく秘密という訳にはまいりません。

先使用権があるではないかとも考えますが、先使用権を立証するには、常日頃から事業に関わる文書を公証役場へもってゆき、確定日付を得ておき、その資料を数十年保管するくらいの管理体制が必要です。

また、国内のみで事業をしている企業であれば問題ありませんが、グローバルに展開している企業の場合には、海外での実施に対して先使用権を主張することは、困難といえます。

そうしますと、ノウハウを特許出願しない、ことにも、大きなリスクがあることがわかります。したがって、盲目的に、ノウハウを特許出願しない、とするのは、どうだかとも思います。

それでは、どうすればよいかといえば、ノウハウを当面は秘匿するにしても、特許情報調査の結果、他社の権利化の可能性が高まった場合には、自社としても特許出願することに切り替えるような判断も必要かと思います。

2017年1月4日水曜日

戦略と戦術について

大河ドラマの真田丸が先日最終回を迎えました。個人的には、可もなく不可もないというような印象でしたが、話の流れがよいためか、めずらしく第一話から最終回まですべて視聴できました。

話としましては、前半は父の真田昌幸の戦い、後半は子の真田幸村の戦いが描かれていたと思いますが、前半の方が面白かったように感じます。

それは、なぜかといえば、真田昌幸は大名(弱小ではありますが)であったのに対し、真田幸村は最後まで一武将に過ぎなかったためかと思います。

真田昌幸は大名でしたので、まず、どの大名と組むか、どの大名と敵対するか、政治的な検討を行い、大きな戦略を定めてから、籠城、奇襲などの戦術を選択できます。

一方、真田幸村は、一武将にすぎませんでしたので、戦略にかかわることができず、出城を築くなどの戦術を実行するのがせいぜいでした。

よく言われますのが、戦術のミスを戦略でカバーすることは可能であるが、戦略のミスを戦術でカバーすることはできないとされます。

真田幸村が、どんなに優れた戦術を用いても、戦略が貧弱な場合には、戦いに勝利することは不可能です。(もちろん、真田幸村はそんなことは百も承知で、大阪方に味方したとは思います。)

ということで、テレビを見る方としては、そのあたりの行き詰まり感が、なんとも息苦しく感じました。

とはいえ、こういう話は現代にも通じるものがあります。

技術で勝って事業で負ける・・という話しがありますが、技術というのは戦術で、事業は戦略に相当します。

日本の技術者は優秀ですので技術で負けることはないと思いますが、事業戦略が良くなかったためか、日本企業の競争力は低下しつつあります。

逆にいえば、日本の技術者は、経営戦略がうまくいっている企業に転職すれば、その能力を最大限に発揮できるのではとも考えてしまいます。

真田幸村は戦略が巧みな大名(徳川家)に寝返ることはありませんでしたが、そのために、豊臣とともに死ぬことになりました。

もし自分が優秀な技術者であったなら、経営戦略の巧みな企業に転職して力を発揮するか、それとも、企業に残って最後まで奮戦するか、どちらの選択をするのか、いろいろと考えてしまいます。

2016年12月10日土曜日

ブランド知識の整理について

12/4に知財学会で発表をしてきました。題目は「ブランドQFD」でした。

この1年、ブランドの本をいろいろ読んできましたが、なかなかよくわからないものがあります。

ブランドといえば、仕事がら、当初は「商標」をイメージしていましたが、「わが社はブランド力がある」というような使い方の場合、「わが社の商標はすごい」というような意味で用いられていないことは明らかです。

そうすると、ブランドとは、「商標」以外を含む、違う何かを示していると考えられます。 では、何なのかといえば、一つは「知識の整理」があると思います。

例えば、右の方に、私のプロフィールとして「技術経営修士(専門職)、修士(工学):生産機械工学、弁理士(特定侵害訴訟代理可)」とありますが、これが私のブランド属性となります。

しかしながら、ただのブランド属性の羅列では、お客さんの頭には入ってゆきません。お客さんの頭の中に入ってゆくようにするには、ブランド属性間の関連性を明らかにする必要があります。

例えば、「子ども時代からの機械好きが高じて、工学系の大学へ入学、大学院にて生産機械の研究をした後、大手電機メーカーで社内の生産設備の開発に従事。しかし、バブル崩壊後の景気低迷により、新興国メーカが台頭し、技術のみでは差別化が難しいことを痛感し、他の競争要素として知財があることを知り、弁理士資格を取得した。弁理士として活動する中で、中小企業を支援するためには、知財だけではなく経営の知識が必要であることを感じ、MOTに入学、その研究成果として中小企業支援のための「御社の知財部」を2011年に立ち上げた。(あくまでもイメージです。)」とすれば、ばらばらの知識ではなく、各ブランド属性の関連が理解しやすくなります。

そうすると、ブランドマネジメントとは、ブランド属性をピックアップする、ブランド属性の関連を明確とし知識として整理する、ブランド知識を顧客に伝える(広告、宣伝等)という手順を踏んで、最終的に、適切なブランドイメージを顧客の中に形成する、というような感じとなると思います。

ブランドQFDは、知識の整理に役立つフレームワークなのですが、いつか内容を紹介できる機会があればと思います。 

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