2020年1月2日木曜日

IPランドスケープの課題について

今話題のIPランドスケープですが、話題性については昨年あたりがピークであったのではないかと推測します。

ピークを過ぎたら重要でなくなるというのではなく、一般化が進み、どの企業でもやるのが当たり前の事項となると思います(オープン・クローズ戦略やデザイン思考も、話題性は下がりましたが、重要性は高くなっております。)

といいながらも、私は知識的には未だ本をながら読みしたレベルですので、wikiで勉強してみました。(https://ja.wikipedia.org/wiki/IPランドスケープ

そうしたところ、IPランドスケープにつきましては、いわゆる特許情報分析のマクロ分析のようなものではないかと感じました。

そこで、私が感じるIPランドスケープの課題をいくつか提示しますので、ご興味のある方はぜひ課題解決にトライいただければと思います。

(1)量的分析である。

私もパテントマップをつくってお客さんに提示することがありますが、反応がよろしくありません。それは、IPランドスケープ(以下、面倒なのでIPLとします)は量的分析であり、数の大小しかわからないからです。

例えば、IPLから特定分野の自社特許出願が少ないことがわかっても、では、特許出願を増やしましょう、とはなりません。(なってくれれば、話は早いのですが・・・。)

次のステップとしては、どのような発明をするかや、侵害リスク等の質的分析が必要となります(いわゆるミクロ分析)。

そうしますと、マクロ分析で終わるのではなく、ミクロ分析まで含んだ分析を行えるようにする必要があると思います。

これは、マクロ分析とミクロ分析との間に、セミマクロ分析のようなものを設けて、橋渡しを図ることになるのかと考えます。

(2)ユーザー(カスタマー)の観点が抜けている

IPLが依拠する情報は、特許情報(及び企業情報)となりますので、ユーザーの観点が抜けております。

IPLででてくる情報は、企業vs企業のような感じとなります。これはイメージとしては国家間の戦争のような感じとなります。例えば、小説「坂の上の雲」にあるような、二百三高地で対峙するロシア軍の物量と日本軍の物量、の分析に近くなります。

企業経営を戦争ととらえれば、IPLはまったく正しいのですが、こういう量に基づく経営判断は大企業にのみ有効と思います。

物量に劣る中小企業では、このような物量のぶつかり合いを避けたポジションでの戦いが必須となると思いますので、やはり、分析にユーザー情報を含めて、戦いやすいポジションの検討ができることが必要と思います。

そうしますと、ユーザー(カスタマー)に関する何らかのマクロ情報を探してきて、組み合わせることになるのかと考えます。

(3)意匠・商標の観点が抜けている

私は一応特許が専門とはなっておりますが、実際の仕事では、意匠・商標・不競法・その他(標準化・著作権等)の仕事もしております。

そういう観点からしますと、今のIPランドスケープは、意匠・商標の観点が抜けておりますので、IPランドスケープというより、実際にはパテントランドスケープなのではないかと思います。

品質誤認っぽいネーミングですので、パテントランドスケープにするか、商標・意匠のマクロ分析を含むような分析手法を考え、真の意味のIPランドスケープを目指すkこともよいかと思います。

昔、特許分類、商標分類、意匠分類を統一化(若しくは、対応表のようなものをつくる)ことにより、一体的にマクロ分析できるのではないか、と思いつきましたが、作業が大変なので何も作業しておりません。

(4)サービス業への対応

日本のGDPにおける製造業の割合は約2割、サービス業は約7割となっております。IPLは特許情報に依拠しておりますので、日本のGDPの、ざっと見積もって3割くらいの企業にしか対応できません。

私も、このまま経済のサービス化が進むと、日本では特許制度が不要となるのではないかと危惧しております。これは、IPLの課題というより、特許制度の課題となりますが・・・。

そうしますと、依拠するデータとして、特許情報を減らす必要があるかと思います。IPLに使用するデータにおける特許情報の割合を減らして、他の情報を入れれば、サービス業にも対応でき、IPLの利用の拡大も図れるのではないかと思います。

サービス業につきましては、商標出願が活発化しておりますので(そのため、審査期間も伸びておりますが・・・)、商標のマクロ情報を使用すればよいのかもしれませんが、よくわかりません・・・。

あとは、マップソフトが高くて私のような貧乏弁理士には手が出ない・・・いうのもありますが、これは、廉価版の開発を期待したいと思います。

2020年1月1日水曜日

混ぜると危険?

昨年の知財学会で、レビュー情報と特許情報を混ぜないほうが良いのではというご意見があったことを、以前ブログに書きました。

知財をデザインする: 発表終了の件

顧客の生の声の集合であるレビュー情報は、内容が整理されておらず、一般には汚いデータと言われるそうです。

一方、特許情報の元となる明細書は文書作成のプロである弁理士さんが書いておりますので、(比較的)綺麗なデータと言えそうです。

そうしますと、汚いデータを綺麗なデータを混ぜて処理するのは危険という考えはごもっともとなります。

今回混ぜましたのは、テキストマイニングの技術を使用しますと、混ぜて処理できる、ということを試したかったからです。

従来の特許情報分析では、特許分類や書誌的事項等を含む所定のフォーマットのデータしか分析しませんでしたが、テキストマイニングによれば、テキストデータであれば何でも処理できます。

そうしますと、特許情報に限らず、技術論文やアンケート、その他何でもテキスト化したデータであれば混ぜて処理できることになります。

もちろん混ぜたら混ぜたで弊害はあるかもしれませんが、このような処理を考えたというアピールを含めて、上記発表となった訳です。

さて、テキストマイニングの共起性に基づく評価に関しては、特許情報よりもレビュー情報のほうが有用となります。

それは、特許情報の方は、自然法則に基づいておりますので、共起性を考えずとも、要素間の関係の強さは論理的に予測可能だからです。

一方、レビュー情報の方は、心理的なものですので、論理的な分析は不可能(解釈は可能)ですので、共起性が要素間の関係を理解する唯一の手段となります。

ということで、特許分析に限れば、テキストマイニングの利用価値はあまりないかもしれませんが、レビュー情報を含める場合には利用価値は高いということになります。

2019年12月21日土曜日

来年について

最近は1年に1つは新しいことをやろうと考えております。そうしませんと、時代の流れに置いてきぼりになるためです。

しかし、義務的に考えますと精神的に苦しくなりますので、できなくてもかまわないという適当な心持で臨んでおります。

来年やろうと考えているのは、以下のような感じとなります。

1.アプリ開発

今年は、KHcoderを使って特許マップを書くという論文を発表しましたが、KHcoderは特許分析用のソフトではありませんので使い勝手が悪い部分もあります。

そこで、KHcoderを魔改造して特許分析用に使いやすくしてみるのもいいと思います。

ただし、KHcoder自体フリーソフトですので、できたアプリが100万円では話になりません。そういう意味では、はたして採算ベースにのるのか?という課題はあります。

私にアプリ開発の能力はありませんので、特許マップソフトメーカーに2,3社あたって、断られましたら、その時点であきらめます。

ご興味のあるメーカー様がございましたら、ご連絡ください。

2. デザイン思考QFDの作成

現在、デザイン思考に使えるQFDを考えておりますが、先行研究がないようですので、少々困りました。このあたりのロジックを自分で考える必要があります。

ひとまず、デザイン思考に関する本を読んで(非常にたくさんあり、何を読めばよいのかわかりません・・・)、ロジックを考えたいと思います。

それができますと、ブランドとデザインと技術の関連性を示すQFDを作成できることとなります。そこで、気が早いですが、ひとまずマークを考えてみました。


品質を中心にして、ブランドとデザインと技術が結合するイメージとなります。品質管理系の人が喜びそうな図です。

ネーミングとしては、IP-QFD、知財QFDあたりになるかと思います(商標出願しないでください・・・)。

できれば、来年の知財学会(東京で開催されればですが・・・)で発表できればと思います。

2019年12月10日火曜日

今後の進め方について

次のテーマは、デザイン思考に資するQFD分析となりますが、これは簡単な話となります。

もともとQFDはニーズシーズマッチング機能がありますので、デザイン思考につかえるのは明白であり、そのような事例も既にあると思います。

では、なぜやらなかったかといえば、デザイン思考自体は何年も前から流行っており、今から始めても後追い感があるからです。(同様の理由でIPランドスケープもやってません。)

では、なぜやるかといえば、今回の知財学会で、最も難易度が高いと思われた、ブランドの分析について、ある程度の道筋がつきましたので、残るはデザインとなったからです。

デザイン分析が可能となりますと、

1、特許情報を用いた技術分析
2.特許情報とレビュー情報を用いたブランド分析
3.特許情報とレビュー情報を用いたデザイン分析

が可能となりますので、特、意、商の知財のすべての分析が可能となります。

そして、QFDは、多数の2元表を組み合わせることが可能ですので、

4.特許情報とレビュー情報を用いた、技術・デザイン・ブランド分析

を1つの表にすることができます。(1つにまとめると逆にわかりにくくなるかもしれませんが・・・。)

そうすると、このブログのタイトル通りの、「知財をデザインする」感がでてまいります。

ということで、4.を最終の目標として作業したいと思います。

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