2011年10月10日月曜日

国家資格と特許について

最近、弁護士や博士号の難関国家資格を取っても仕事がなかなか無いという話を聞きます。博士といえば、末は博士か大臣かといわれ、博士号を取れば一生の身分が保証されたものでした。また、弁護士といえばエリートの証としてこちらも高収入が保証された資格でした。

これら国家資格の価値が現在低下した理由としてはいろいろあると思いますが、例えば、資格を取る人間の数が需要を上回る勢いで増えたことや、経済のグローバル化が進み日本国内のドメスティックな資格の価値が低減したことなどがあると思います。

さて、私は特許関係の仕事をしているのですが、最近似たような話しを聞きます。それは、「特許を取っても役にたたない」という話です。

国家資格も特許も国が与えるお墨付き(権威)という点で共通していますが、本当に役に立つのか疑問が生じている点でも共通してしまっています。

特許が役に立つのかどうかいえば、役に立つともいえますし、役に立たないともいえます。

特許をとること自体が目的化した場合には役に立たなくなる可能性が高くなり、特許を取ることがある目的を達成するための手段(の一つ)と位置づけた場合には活用が図れる可能性が高くなります。

つまり、「特許(弁護士、博士)を取る」ことを目標とするのではなく、「○○するために、特許(弁護士、博士)を取る」と解決手段化する必要があると思います。

更に役に立てるためには、「○○する」部分は他社(他者)と十分に差別化されている必要があると思います。

例えば、「大学の先生になるために博士号をとる」とした場合には差別化されておりませんので過酷な競争を勝ち抜く必要がありますが、バイオベンチャー企業を立ち上げるために博士号をとるというのであれば差別化できるかもしれません(もっといい例があるとは思いますが)。

結局、「○○する」という部分を考えることは、すなわちマーケティングをするということと同義ですので、まずマーケティングを行い自分の目的を定め、その目的を達成するために「特許(弁護士、博士)を取る」ことを考えてみることが役立てるために必要といえるでしょう。

2011年10月6日木曜日

御社の知財部:秋期知財セミナーについて

ブロクが更新できていませんが、ただいま11月に実施予定ののセミナー準備で忙しく作業をそちらに集中している為です。

次回のセミナーでは事例を多く取り上げ、中小企業の役に立つ講義内容とする予定です。詳細につきましては近日中に公開させていただきます。

2011年9月24日土曜日

知的資産とは?

下町ロケットの後半は特許権をライセンスするか、若しくは、特許製品を納入するか、の主人公の判断が主軸となります。

特許権をライセンスすれば年間5億円のライセンス料が自動的に会社の口座に振り込まれることとなります。一方、製品を納入する場合には、一下請け業者として大企業からコスト削減や品質向上などの厳しい要求がなされることとなります。

ライセンスではあまり面白くありませんので、小説内では特許製品納入の道を主人公は選ぶのですが、この判断は果たして正しいのでしょうか?

特許権のライセンスの場合にはキャッシュフローが確実に得られますので財務状況が好転します。一方、特許製品納入の場合には、そもそも特許製品を購入してもらえるか不明ですので事業上のリスクが高くなります。
 
したがって、普通に考えれば特許ライセンスの方を選択すると考えられ、逆に、それ以上の価値が合理的に存在しなければ製品納入の道は選べないことになります。

製品納入を選ぶことによるメリットとしては、 大企業の要求に答えることにより従業員が成長しまた技術力の更なる向上を図ることができます。さらに、新たな技術的課題が判明すれば、新たな発明のタネとなったりします。

実際小説の中では、従業員が実際に超機密のロケット組立工場に入り、不具合の原因究明をしたりしているので、この経験により得られるノウハウはお金で買えるものではありませんし、人間の成長はかなりのものではないでしょうか。

このようなノウハウや人的資産などの無形の資産を知的資産と呼び、最近は知的資産を生かした経営が奨励されているようです。しかしながら、このような知的資産は財務諸表上に現れるものではありませんので、経営に対する効果はなかなか論理的に説明できるものではありません。

結局、知的資産経営を重視するか否かは経営者の考え方にかかっているといえるでしょう。

2011年9月16日金曜日

米国特許法改正について

アメリカの特許法がいよいよ改正されることとなりそうです。改正の話は毎年のようにあったのですがお流れになることが多く、今回も流れるだろうとなまけていましたらあっさり成立しそうなので、あわてて情報収集をはじめました。

法案(リーヒ・スミス米国発明法案)の詳しい情報につきましては、これから精度の高いものがでてくると思いますので、私が気になった点を2、3コメントしたいと思います。

まず、なんといっても外せないのが先発明主義から先願主義への移行です。

日本など多くの国では最初に出願した人が特許をとれるのですが、米国では最初に発明した人が特許をとることができるという特異な制度を維持しておりました。制度の相違により米国出願はいろいろと面倒でしたが、今回の改正で多少わかりやすくなったといえます。

ただ、日本の先願主義とは微妙に違う箇所もあるようです。

日本の特許法は新規性の喪失の例外として、自己の行為により開示された場合にはその発明は新規性を失わないという規定があるのですが、この場合でも、第三者が同様の発明を開示した場合には新規性を失ってしまいます。

ところが、米国特許法のグレースピリオドでは、自身の発明開示後であって、自身の出願前に第三者が同一発明を開示した場合であっても、自身の出願は第三者の開示による影響は受けないこと(いわゆる「先発表主義」)となるようです。つまり、先発明主義的ニュアンスが多少残ることになります。

米国では発明者の保護が重要であるとの考えが強いようです。

また、日本では出願人は自然人、法人どちらでも可能ですが、従来の米国特許法では、発明者のみが出願人となれるとされていました。今回の改正で、発明者からの承継人(法人) も出願人となれるようです。したがって、企業名で今後は出願できるようです。

その他いろいろ改正点がありますが、最初に述べましたようにこれから精度の高い情報が出てくると思いますので今後の情報に注意が必要と思います。

(補足:2011.9.19)
本法案につきましては2011.916にオバマ大統領が署名し無事に成立いたしました。米国特許法改正の概要につきましてはJETROのホームページにわかりやすいまとめがありますので、下記PDFファイルを参照願います。

http://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/ip/news/pdf/110908.pdf

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