下町ロケットの後半は特許権をライセンスするか、若しくは、特許製品を納入するか、の主人公の判断が主軸となります。
特許権をライセンスすれば年間5億円のライセンス料が自動的に会社の口座に振り込まれることとなります。一方、製品を納入する場合には、一下請け業者として大企業からコスト削減や品質向上などの厳しい要求がなされることとなります。
ライセンスではあまり面白くありませんので、小説内では特許製品納入の道を主人公は選ぶのですが、この判断は果たして正しいのでしょうか?
特許権のライセンスの場合にはキャッシュフローが確実に得られますので財務状況が好転します。一方、特許製品納入の場合には、そもそも特許製品を購入してもらえるか不明ですので事業上のリスクが高くなります。
したがって、普通に考えれば特許ライセンスの方を選択すると考えられ、逆に、それ以上の価値が合理的に存在しなければ製品納入の道は選べないことになります。
製品納入を選ぶことによるメリットとしては、 大企業の要求に答えることにより従業員が成長しまた技術力の更なる向上を図ることができます。さらに、新たな技術的課題が判明すれば、新たな発明のタネとなったりします。
実際小説の中では、従業員が実際に超機密のロケット組立工場に入り、不具合の原因究明をしたりしているので、この経験により得られるノウハウはお金で買えるものではありませんし、人間の成長はかなりのものではないでしょうか。
このようなノウハウや人的資産などの無形の資産を知的資産と呼び、最近は知的資産を生かした経営が奨励されているようです。しかしながら、このような知的資産は財務諸表上に現れるものではありませんので、経営に対する効果はなかなか論理的に説明できるものではありません。
結局、知的資産経営を重視するか否かは経営者の考え方にかかっているといえるでしょう。
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