2012年1月27日金曜日

ソリューションビジネスについて

私は10年ほど前、NECの生産技術開発本部という部署で働いておりました。その名の通り、NECグループの製造機械を開発・設計する部署でありまして、男ばかりのお固い部署でした。

私がNECに入ってしばらくすると「・・・ソリューション技術部」など横文字が入った部署が増えてまいりました。3K職場の私には、「ソリューション」の部分がなんとなくいけ好かない気がしていました。

ソリューションビジネスの元祖はIBMといわれています。日本勢の攻勢によりメインフレームの販売で劣勢に立たされたIBMが始めたモデルであり、コンサルテーションやシステムインテグレーション、アウトソーシング等のサービスを組み合わせたビジネスをいいます。

簡単にいえば、単なるハードウェアの販売に、情報処理システムを構築するために好適なハードウェアの組み合わせを提案するサービスを組み合わせたものといえるでしょうか。

このようなビジネスモデルのメリットは顧客の課題解決を自社でできることと思います。従来の販売は、顧客が課題を感じ、その解決手段としてハードが売れますので、販売はあくまでも待ちの姿勢となります。

顧客の課題を分析できることができれば、必要な解決手段を販売側で提案できますので、攻めの営業を行うことができます。顧客が気づいていない潜在的な課題を抽出できれば、さらに販売を伸ばすことも可能となります。

マーケティングでは顧客のニーズを探ることが重要とされます。しかしながら、近年ではニーズといえるようなニーズは存在せず、潜在的なニーズを探ることが重要となっています。

ソリューションビジネスは、顧客の課題解決を通じて潜在的なニーズを浮き彫りにできますので、IBMはこのあたりをうまくやって復活を果たしたということでしょうか。

さて、私がNECを退社したのち、NECは半導体やPDPなどの事業を切り離し、ソリューションビジネスに経営資源を集中しました。コアコンピタンス経営というやつです。IBMと同じ土俵で戦うことになりますが、なんとか頑張ってもらいたいものです・・。

2012年1月24日火曜日

第8回「サロン・ド・MOT」 講演について

1月23日の夜、「サロン・ド・MOT」にて日米特許法改正についての講演をしてまいりました。

「サロン・ド・MOT」とは、農工大MOT卒業生、MOT在籍者、MOT教員などが月1回都内の某所に集まりまして、技術経営に関して語り合う場のことです。

今回は光栄にも私が演者ということで、何をお話しようと考えましたが、日米の特許法改正が重なりましたので、このネタにしました。

日本の特許法改正で大きな話題となったのは以下の図です(法改正とは関係ないですが・・・)。


                                                                                             (出典:日本経済新聞)

こうみると、日本の特許出願件数は減少傾向にあり、事実上、中国に抜かれておりますので、これはどうなんだという話となりました。確かに、日本の開発活動が低下した結果、出願件数も低下したならゆゆしき事態です。

一方、従来の出願できるものは何でも出願するというスタイルが修正され、不必要な出願が削減された結果ともいえます。

日本の発明は新興国において即座に翻訳され真似されてきましたので、そういう意味では日本の出願件数が減って不利益を被るのは中国あたりかもしれません。

いずれにせよ数字にはいろいろな見方があることを再認識いたしました。

また、米国特許法改正については、やはり先願主義への移行が話題となりました。


発明をあらかじめ公表してしまえば、米国出願まで最大2年の時間的猶予がありますので、この2年間をどう考えるべきか議論となりました。結論はでませんでしたが。

その後、田町の飲み屋で今後の「サロン・ド・MOT」の進め方など議論させていただきました。(その他就職問題など)

発表の機会をいただき誠にありがとうございました。

2012年1月21日土曜日

課題と解決手段について

私は会議が苦手です。時間を取りますし、声の大きい人の意見が通ることが多く、参加する意味が無いと思うこともあります(単なる議論下手かもしれませんが)。

先日ある経営会議に出席したのですが、議題は「売上向上」という、どの会社でもあるような議題でした。様々な解決方法を議論した結果、「特定の会社に営業に行く」ことに決定しました。つまり、「売上向上」という課題に対し、「営業」という解決手段を選択したことになります。

こういう会議には、私は2点の問題があると思います。1点目は解決手段を出しあうことには意味がないということです。

解決手段自体は巷に存在する方法を適宜選択すればよいため、googleで「売上向上」を検索すればよいだけの話であり、時間をかけて会議でアイデア出しをするほどのものではありません。会議の前に検索しておいて、参考資料として会議で提示すれば会議も早く終わります。

2点目は、「売上向上」という課題に対して「営業」という解決手段が妥当であるか不明確な点です。「売上向上」という課題はそのままでは解決できない大きさの課題であり、解決できる程度まで課題を分割(ブレークダウン)する必要があります。

マーケティングの4P(place, price, promotion, product)というフレームワークを用いて分割すれば、「売上向上」という課題は、「製品上の課題」、「販売ルート上の課題」、「価格上の課題」、「宣伝上の課題」という単位に分解できます。

「宣伝方法」に課題がある場合には、「営業」という解決手段はそれなりに妥当ではありますが、価格が高い点に課題がある場合には営業しても効果はなく、価格戦略をどうすべきか考える必要があります。

したがって、有効な会議とするには、根本の課題を見出す議論を行うか、予め課題をブレークダウンしておいて会議に参考資料として提出するような工夫が必要でしょう。課題がきちんと設定できれば、解決手段をgoogle検索する程度で効果的なoutputを出せるのではないでしょうか。

時間をかけて会議を沢山行い、仕事をしたつもりにならないよう注意したいものです。

2012年1月12日木曜日

無理難題について

以前の投稿で、下請けの企業は大企業から技術的な課題を提示されるので、下請けの企業は特許情報を収集する必要はないと書きました。この点について、もう少し丁寧に書きたいと思います。(下請け企業とは大企業の仕事を請ける企業とします。企業のレベル云々を表現するものではありません。私自身も下請けの仕事をしています。)

まず、大企業は自社の経営上の課題を設定します。大企業の場合には世界市場におけるシェアを拡大するとか、新たな技術分野に進出するとか、比較的大きな課題となると思います。ただし、大きな課題のままでは課題を解決できませんので、課題を細かく分解して、解決可能な大きさの課題まで小さくします。

これを図解すると次のような感じになります。
大課題⇒中課題⇒小課題の順に課題が小さくなります。例えば、自動車の場合には「燃費の向上」⇒「エンジンの軽量化」⇒「バルブスプリングの軽量化」とでもなるでしょうか。つまり、大企業が車の燃費を向上したい場合には、下請けの企業には、バルブスプリングを現状のものより軽量化してください、との要求を出すことになります。そして、小課題をすべて解決することにより、結果として大課題が解決されることになります。

したがって、大企業は、①課題設定機能、②課題分析機能、③課題分配機能を有するといえます。

このように、下請け企業は大企業の課題の一部を解決することになります。ここで、10%軽量化とか、5%コストを押さえるなどの比較的リーズナブルな課題であれば良いのですが、一部の報道で伝えられているような、50%値下げ要求などの無理難題ともいえる課題が提示された場合にはどうすればよいのでしょうか?

まず、何とかして解決することが考えられます。しかし、課題が無理難題の場合には赤字前提で受注するということになるでしょうか。

また、仕事をお断りするという考えもあると思います。この場合には、大企業からの仕事が今後来なくなることを覚悟しなければなりません。

なかなか難しいかと思いますが、代案を出すという考えもあると思います。大企業の課題分析の結果、50%コストカットという課題が導かれたとしても、課題の設定や課題の分析に問題がある可能性もあります。また、他の見解もあるかもしれません。

ただし、代案を出すためには独自に課題を分析する必要があり、下請け企業には荷が重いといわざるをえません。一番の解決法は、大企業の課題設定及び課題分析作業に下請け企業も加わってもらって、一緒にアイデアを出すことと思います。

そうすれば、無理難題ともいえる課題が下請け企業に提示されることはなくなるのではないでしょうか。

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