2012年8月3日金曜日

先行技術がない!場合について

特許出願をする前には、先行技術調査を行ない、新規性・進歩性のある程度の確認を行うことが推奨されています。

先行技術調査の結果、近い発明が見つかった場合には、もう一度出願内容の見直しが必要となり、意気消沈となったりします。

一方、 近い発明が見つからない場合には、早く特許出願しましょう!と、気分も盛り上がります。

それはそれで正解なのですが、先行技術がないということは、逆にいろいろな問題を抱えていることになります。

問題の一つは、先行技術がない分野はマーケットが存在しないおそれがあるということです。儲かる分野であれば、様々な人が利益を確保すべく特許出願を積極的に行い、その結果、先行技術が蓄積してゆくことになります。

逆に、マーケットに魅力がない分野は、特許出願費用が無駄になるおそれがあるため、積極的な出願はなされず、その結果、先行技術があまりないという状況になります。

つまり、先行技術が多い分野は、特許権を取得できればそれだけで商売になる可能性が高く、一方、先行技術がない分野はビジネスプランをよほど煮詰めなければ、出願費用も回収できない可能性があります。

したがって、このあたりのビジネスの容易性や技術の困難性を考慮したポジショニングを考えて、知財戦略と事業戦略をリンクさせることが必要でしょう。

2012年8月1日水曜日

失敗の本質(続編)について

失敗の本質の続編が本屋に売っていましたので買って読んでみました。

読んで意外だったのは、戦局を打開するアイデアを持った人が様々な局面でそれなりに存在していた点でした。つまり、軍人の多くは決して無能ではなく、むしろ有能な人が多かったといえるでしょう。

ただし、それらのアイデアは採用されることなく、結局は、声の大きい人の精神論や地位の上の人のベストではないアイデアが採用され、その結果、アメリカ軍に負け続けることになります。

日本軍の意思決定は、アイデアの質ではなく、アイデアを提案した人の地位(恐怖感?)が重要ということでしょうか。

やはり、アイデアの質に注目して、勝つ可能性の高い作戦をドライに選んでゆくべきと感じました。

話は変わりますが、最近のニュースで、日産の会議の手法が記事になっていました。

日産では議事録を作成せず、模造紙に各自がアイデアをポストイットに書いて貼ってゆき、会議の終わりに、ポストイットが貼られた模造紙をデジカメで撮影し、画像を関係者に配布するそうです。

ポストイットにアイデアを記載する場合には、アイデアを出した人がわからないように無記名で記載するそうです。

模造紙にアイデアがずらりと並んでいますからレベルの高いアイデア、低いアイデアが一目瞭然です。上の地位の人のアイデアでもレベルが低ければ採用されませんし、下っ端の人のアイデアでもレベルが高ければ採用されるというわけです。

こういう人間の要素を排除したアイデア創出手法が、失敗を繰り返さないためにも必要なのかもしれません。

2012年7月28日土曜日

コア・コンピタンス経営について

ものづくり革新ナビに、コア技術の展開に関する事例分析の記事を投稿いたしました。

自社のコア技術を様々な分野に展開してゆくことが、外部環境の変化に対応するためには、重要と思います。是非ご参考に願います。

(記事はこちらです)
http://www.monodukuri.com/jirei/article/32

コア技術を活用することは、コア・コンピタンス経営などともいわれますが、私がこの言葉を始めて聞いたのがNECに在職しているときでした。

当時新任の社長が、この言葉を使い始め、コアコンピタンス経営の実行の名のもとに、様々な不採算事業を切り離し、他社へ売却し始めました。

私は、不採算事業の側におりましたので、いろいろ考え退社することにしました。

さて、この経営方針がうまくいったのかといえば、現在のNECの株価が100円を切っていることからも、いうまでもないでしょう。

結果論でいえば、企業の規模は縮小し、未来に向かって収益を上げそうな事業がなくなってしまいました。不採算事業を売却すれば当面の収益は改善しますが、未来の事業を育てる努力をしなくてはジリ貧ということです。

今思えば、当時の社長も私も、コア・コンピタンスという概念の捉え方が誤っていたのではと思います。コア・コンピタンス経営とは、コア事業に集中し、他の事業は切り捨てることと考えがちですが、コア事業に集中すれば当然に事業リスクは高くなります。

本当に集中すべきはコア技術であって、事業はむしろ多角化すべきなのではないでしょうか。NECにはC&Cという優れたコア技術がありますので、これを用いて様々な分野に適用できれば、当時の不採算事業も形を変えて存続が可能であったかもしれません。

2012年7月24日火曜日

必ず特許にしてください・・・について

特許出願をして審査が始まり、拒絶理由が通知されると、クライアントから何とか特許にして下さいといわれることがあります。

しかしながら、補正や反論の内容は出願時の明細書の内容を超えることができませんので、審査段階では採れる手段は限られます。その結果、先行技術との差別化ができず、残念ながら拒絶査定となる場合もあります。

したがって、必ず特許にするためには、審査段階で困らないように、出願前の明細書作成時に充分な手を打っておくことが必要です。

それならば、明細書作成のときに、必ず特許になる記載にするよう弁理士に依頼すればよいかというと、それでは足りません。

弁理士は確かに法的要件を満たすべく明細書を作成しますが、特許になるか否かは、先行技術との兼ね合いで決まりますので、明細書作成時に、先行技術に関する十分な情報を弁理士に提供する必要があります。

特許性を向上するためには、何はなくとも十分な先行技術調査が必要です。漏れのない特許調査を行うために、プロのサーチャーに調査を依頼することも考えたほうがよいでしょう。

さて、特許調査をすれば必ず特許になるかというと、そうでもありません。最近の特許査定率は50%位(若干特許査定率が上がる傾向あり)です。つまり、半分は拒絶査定となるのが現状です。

優秀な知財部員がいて、特許出願にコストをかけている企業でも、特許査定率は70%がいいところではないでしょうか。

ということで、必ず特許にする方法はないのですが、特許調査にコストをかけることによって、特許査定率を上げることは可能です。特許出願の前に、十分な特許調査が行われているか是非見直していただければと思います。

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