2015年12月5日土曜日

標準化戦略など


以前、このブログで中小企業のオープン/クローズ戦略を誰か作ってくれないか、と書いたことがあります。

http://chizai-design.blogspot.jp/2015/08/blog-post_19.html

この間、弁理士会の研修にでましたら、中小企業の標準化戦略がテーマとなっており、そこで中小企業向けの標準化として、性能試験標準というものが紹介されていました。やはり頭の良い方はいるものです。

性能試験標準とは、自社技術を評価する試験方法や評価方法を標準化することをいいます。自社技術自体を標準化するものではありませんので、自社技術を秘匿できるというメリットがあります。

この性能試験標準をもって、標準化戦略が一通り出そろったと思いますので、まとめみました。
 
①オープン化パターン

・製品の実施に必要な特許(いわゆる必須特許)をすべて含む形で標準化します。
・自社で必須特許を多数確保し、必須特許からのライセンス収入を得ることで収益を得ます。

②オープン/クローズ化パターン

・自社技術をオープン領域とクローズ領域とに分け、オープン領域を自社特許を含む形で標準化します
・オープン領域の自社特許は無料で開放します。これにより、オープン領域への他社の参入を促進し、技術の普及と市場拡大を図ります。
・クローズ領域については、自社で独占実施することにより収益を得ます。

③クローズ化パターン

・自社技術をノウハウとしてクローズ化し、自社技術を評価する試験方法や評価方法を標準化します。
・クローズ領域については、自社で独占実施することにより、収益を得ます。

上記説明では、オープン/クローズ、標準、特許、ノウハウの関係がよくわからないと思いますので、フレームワークにまとめてみました。(図がはみ出していると思いますが。すいません。)
 


オレンジで塗りつぶした部分が、 各領域に存在する要素です。白抜きは各領域に存在しない要素です。

こう見てみますと、各パターンの特徴が見えてきます。

①のオープン化パターンは、オープン領域にすべての要素が集結しています。

自社特許と他社特許を合わせてパテントプールをつくりますので、自社の虎の子特許が二束三文(RAND条件)で、他社に使用されてしまいます。

また、自社実施と他社実施が重複しておりますので、結局のところ価格競争が発生し、あまり儲かりません(当該技術は標準化に伴う低価格化により普及しますが・・・。)

そうしますと、標準化したのに自社のシェアが下がって儲からない、という最悪のパターンも考えられます。

そう考えますと、このオープン化パターンは今後は流行らないかもしれません。

②のオープン/クローズ化パターンは、自社実施領域と他社実施領域が分かれている点で優れていると思います。

オープン領域に多数の会社を呼び込んで価格競争させ全体のコストを下げ、自社のみがクローズ領域を実施することにより、自社の利益を確保できます。パソコンが安くなり、一気に普及したのもこの戦略パターンのおかげかと思います。

とはいえ、オープン領域とクローズ領域を自社に有利にコントロールするのが難しそうであります。また、クローズ領域の自社技術レベルが圧倒的(インテルのMPUなど)でないと、他社がわざわさオープン領域に入ってくることもないと思われます。

そう考えますと、このオープン/クローズ化パターンは理想的ではありますが、実行できるのは一握りの企業となるかと思います。

③のクローズ化パターンは、他社を呼び込むためのオープン領域がありませんので、うまくやらないと、標準は作ってみたが、実施しているのは自社のみという寂しい状況になることが考えられます。

そう考えますと、上記パターンに共通する標準化戦略の要諦としては

一. 自社と他社の実施領域を切り離す

一. 他社を多数呼び込んで競争させる

の2点になるかと思います。 そしてこれを実現する手段として、知財や標準を組み合わせて使うということになるかと思います。


2015年11月27日金曜日

研修修了について

先日、弁理士キャラバンの支援員になりました。

9月の研修が終わった後、なぜかやる気が低下し、まあ別に支援員にならなくてもよいかと思うようになりましたが、せっかく研修もすべて出席しましたので、費やした時間がもったいないと思い、11月に条件を満たすべく、コンサルを行い、何とか、支援員となったようです。

なったようです、というのは、履修を終了しても、辞令のようなものもありませんし、登録番号のようなものもありませんので、はたして、自分が支援員になっているのかよくわからないからです。弁理士会から履修証書が1枚送られてきたのみです。

googleで「履修支援員」を検索しますと、まったくHITしませんので、実際に支援員になった人は少ないのかと思いますし、実際に中小企業でコンサルしている人も少ないと推測します。

さて、支援員となった以上は、これからはキャラバンの仕事をやりたいと思いますが、はたしてできるか不安もあります。

コンサルを実際に行って感じたのは、結構工数がかかるということです。想定される工数内で作業を行うことは、現状では、ほぼ無理です。手を抜けばなんとかなるかもしれませんが、それでは、仕事として意味がありませんので、難しいところです。

いくつかコンサルの仕事をして、経験値を上げ、仕事を効率化できれば、なんとかなるかもしれません。 まあ、仕事の依頼があればの話となりますが・・・。

2015年11月23日月曜日

新しい考えを理解してもらうことについて

先日、ある大学院生の方の研究の進捗の説明会に参加してまいりました。大学院生の方が自分の研究について説明してくれるのですが、ほとんど理解できませんでした。

なんでこのようなことになるかと考えましたが、私の頭が悪いのもありますが、自分の構築した新しい理論のみが説明されていたためかとも思いました。

新規の理論は世の中のいろいろな評価を経ていませんし、そもそも従来にない考え方ですので、論理が正しいのか、いちいちチェックする必要があります。

とはいえ、その場で論理をリアルタイムでいちいち確認するというのは、凡人には無理ですので、話しているそばから理解不能となり、最後までわからないということになると思います。

こういう事態を防ぐには、従来の理論を織り交ぜて、従来理論との相違点を説明することが有効と思います。

従来研究は世間の評価を経ておりますので、論理的妥当性はまあまあ確認されていますし、従来研究については、あらかじめ時間をかけて読み込むこともできますので、凡人でも理解できています。

あとは、従来研究に関連付けて新規の部分を説明すれば、万人にわかりやすいと思います。 (特許明細書もこのような構成になっています。)

そうすると、従来研究の説明9割、新規部分の説明1割くらいで説明すれば、いいのではないかと思います。

しかし、新規の部分が少ないと研究としてはどうかと思いますので、聞く人の能力に応じて8:2とか7:3に調節することになるかと思います。 

そう考えますと、新しいことを人に理解してもらうということは、非常に大変であることがわかります。

例えば、掃除機を開発する場合、吸引力を5%改善した掃除機というのは実現し易いと思います。

なぜなら、この程度の改善でしたら、メカニズムのほとんどは、従来の掃除機と同等ですので、経営陣にも理解しやすいですし、開発のGOサインが出やすいと思います。

また、ユーザーも同様に機能が想像しやすいので、買ってみようという気持ちになると思います。

ところが、ロボット掃除機となると、今では普及していますが、出た当時としては会社の人も、ユーザーも機能や構造を理解できませんので、開発のGOサインはでないでしょうし、たとえ販売しても誰も買う人はいないと思われます。

そう考えますと、日本の技術は改良が多いといわれますが、これは日本人に創造性がないのではなく、新しいものは関係者の理解・説得が難しく、実現しにくい事情があると思います。

ということで、従来にない新しい考えを理解してもらうのは、なかなか難しく、実現はさらに難しいという話でした。

2015年11月17日火曜日

周知技術問題について(最終回)


以前何回かこのブログで、1回目の拒絶理由通知で新たな事項を組み込む補正をすると、周知技術で拒絶査定となり困っていることを記事にしたことがあります。

http://chizai-design.blogspot.jp/2015/10/blog-post_18.html

結局、全件拒絶査定不服審判を請求して、何とか全件特許査定となりました。

本屋で、「拒絶理由通知との対話」というような題名の本を見かけたことがあります。(読んではいません。)

私もこのような感じで、拒絶理由は審査官からのメッセージと捉えて、拒絶理由通知を事細かに分析して対応することが正しいという考えで仕事を進めてきました。

しかし今回の件で、この考えにはリスクがあることがわかりました。

要は、拒絶理由通知には記載も示唆もされていない、審査官の考えのようなものがあるということです。

また、一発で拒絶査定ということは、審査官側には、出願人とコミュニケーションをとる意欲もあまりないといえるかと思います。

したがって、今後は拒絶理由通知の分析だけではなく、例えば、面接なども駆使して、審査官の意図を探って行こうと思います。

拒絶理由通知に際し、全件面接を義務付けている企業もあるようですが、 無用な審判請求を避けるためには確実な方法かもしれません。

今回は、審判請求により権利化できましたが、出願人が審判請求の意思を示さなければ権利化できず、資金を投入した開発の成果を他社にただで提供するような、ひどい状況となるところでした。

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