2017年12月5日火曜日

ブランドタッチポイントについて

前回同様、知財ビジネスアカデミーのブランド戦略基礎の講座の第2回目の話ですが、長年の疑問が解けたような気がします。

講義の中で「ブランドタッチポイント」のお話しがありました。

ブランドタッチポイントとは、ブランドと顧客の接点をいいます。

具体的には

1.購買前体験
 ・ウェブサイト
 ・広告
 ・カタログ

2.購買体験
 ・製品/サービスの品ぞろえ
 ・コミュニケーター
 ・製品能力
 ・部品配送

3.購買後経験
 ・製品品質
 ・ロイヤルティプログラム
 ・請求書発行
 ・コールセンター
 ・PR

となります。

顧客はブランドタッチポイントと接することにより、ブランド経験を積み重ね、最終的にはブランドを理解するようになります。

ブランドとは抽象的な概念ですから、それを理解しろ!といわれても、なかなか理解できません。

具現化したブランドタッチポイントを設定・管理することにより、顧客(及びステークホルダー)はブランドを五感で経験することが可能となります。

さて、ブランドを守るというと、いつも商標権で守るという話になることが多いですが、ブランドは抽象的な概念ですので、商標権で守ることはできません。

では、どうやってブランドを守るかといえば、ブランドを五感で感じられるレベルで具現化したブランドタッチポイントを知財権で守ることになるのではないでしょうか。

ブランドタッチポイントと知財権の関係は以下のようになると思います。

・ロゴタイプ・マーク⇒商標法

・店舗デザイン・トレードドレス⇒不正競争防止法

・製品デザイン⇒意匠法

・製品能力・品質⇒特許法、実用新案法

・ウェブサイト・カタログ⇒著作権法

ブランドタッチポイントは具体化しておりますので、知財権により保護が可能です。

また。ブランドタッチポイントには、ロゴ・マーク以外にも様々ありますので、商標権以外にも、特許権等、様々な保護が考えられると思います。

ということで、ブランドの保護とは、ブランドタッチポイントの保護であり、商標のみならず、すべての知財権が関係するというような理解でいかがでしょうか。
  

2017年11月23日木曜日

コア・アイデンティティについて

昨日、知財ビジネスアカデミーのブランド戦略基礎の講座の第2回目を受講いたしました。

第1回に引き続き、ブランドアイデンティティの策定演習がありましたが、非常に困難を感じました。

ブランドアイデンティティの策定は

ア)コアアイデンティティの考案
 ・自社の独自性を表現する要素

イ)拡張アイデンティティの考案
 ・コアアイデンティティに含まれないが補完的なアイデンティティ

ウ)ブランドエッセンスの考案
 ・コアアイデンティティをまとめた象徴的なフレーズ
 ・実務的には、広告代理店等にお任せとなる

を考えてゆくことになります。

ところが、自社(もしくはお客さん)のコアアイデンティティは何かと考えてみましたが、なんと何も頭に浮かびません・・・。

つまり、考える取っ掛かりがないと、アイデアが浮かびません。

考える取っ掛かりとしましては、前回ご紹介したブランド資産の評価や便益階層があるのですが、まずこれらを検討する必要があります。

そう考えますと、やはりブランドQFDは有用と思います。

ブランドQFDを使用すれば、コアアイデンティティに関するキーワードは自分の頭で考案せずとも(時間をかけて悩まずとも)、特許情報から多く集まりますので、コアアイデンティティを考える取っ掛かりとできます。

また、他の方の発表を聞いていて少し気になったのが、例えば、自社製品は「面白い」のがコアアイデンティティである、とのような発表がありました。

しかし、競合他社が、より「面白い」製品を製造している場合には、独自性がありませんので、それはもうコアアイデンティティとはなりません。

したがって、コアアイデンティティの策定には競合他社との比較作業が重要となりますが、 ブランドQFDは自社・他社のものを作成して比較できますので、やはり便利です。

ということで、来年はもう少しブランドQFDの研究を進めたいと思います。

2017年11月19日日曜日

弁理士業務のAI化について

先日、以下のような記事を見かました。


「AIで弁理士が失業」に異議 「そんなに単純な仕事じゃない」(記事へのリンクあり


記事の内容を真剣に読んでおりませんので、コメントは避けたいと思いますが、こういう話というのは実は昔もあったような気がします。

私が生産機械の仕事をし始めた80年代後半ごろは、完全自動化の流行りが終わる頃でした。

工場では人間が沢山働いているようなイメージですが、80年代は完全自動化、無人工場のようなのが優れた工場とされました。

つまり、人間は機械に置き換わり、工場労働者は失業する、ということがまことしやかに言われておりました。

では、そうなったかといえば、全く逆で90年代に入ると、機械の量を減らして、人間が作業をすることが主となりました。

その理由は、少品種大量生産の時代から、多品種少量生産の時代へ変わったからで、多品種少量生産で機械化するのは設備投資が過大となりやすいので、人間に作業させた方が、費用対効果が高いからです。

とはいえ、外国人の方が人件費が安いため、日本に工場を設けるよりは、海外に工場を設けた方がよい、となりました。そうしますと、今度は日本の工場労働者が失業するという話になりました。

今はどうなっているかといえば、外国も人件費が上昇し、日本も少子化によりに人件費が上昇することが見込まれるため、仕方なく機械化が進むということになるのではないでしょうか。

そう考えますと、機械化というのは、単純に進むわけではなく、人件費との兼ね合いで、進んだり、やっぱり人間が作業する、というような感じになります。

AI(AIというよりは「機械学習」「深層学習」といった方が正しいのかもしれませんがAIという用語の方が便利ですので、ここではAIを使います。) も機械化の一種にすぎませんので、費用対効果の観点から導入が進んでゆきます。

したがって、「~の仕事は難易度が高いからAI化できない」というような理由付けは、技術的課題は必ず解決されることは工学的に見て当然のことですので、無意味かと思います・・・。

もっぱら、マーケットとしておいしいかという観点で、AI化が進むのではないでしょうか。

そうしますと、AIの導入が早く進むのは、医療関係、お役所の事務関係となるでしょうか。次に、金融関係、税務会計関係となるでしょうか。

一般法務につきましては、米国のように訴訟社会でしたら、AI化が早期に進むとは思いますは、日本はそこまででもありませんので優先度は低いかと思います。

本題に戻りまして、弁理士の仕事がAI化できるかといえば、これは弁理士の仕事に魅力があるかどうかとなります。魅力があれば、AIを開発して製品化すると儲かりますし、そうでなければ、赤字となりますのでAI化されません。

ということで、この手の話は、「AI化できない」というよりは、弁理士の仕事は魅力的であるので、早期にAI化が進む、とか言っておいた方がかっこいいのではないでしょうか。

2017年11月11日土曜日

情緒的/自己表現的便益について


先日、知財ビジネスアカデミーのブランド戦略基礎の講座を受講いたしました。

ブランドは本を読むだけの自己流で勉強してきましたので、こういう講座で勉強するのは初めてでした。

(知財ビジネスアカデミーは弁理士会主催ではありますが、弁理士以外の方もゲスト参加可能です(受講料はかかります・・・。数回コースで数万円ですので内容に対して非常にリーズナブルと思います。)。)

講座の中では、ブランドアイデンティティー策定の演習がありました。

ブランドアイデンティティの策定は、

STEP1)現在・将来のブランド資産の評価
STEP2)ブランドが提供する便益の階層分析
STEP3)ブランドアイデンティティ の策定

の3ステップで策定作業を進めます。

ここで、STEP2の「便益の階層」ですが、

第1階層が、情緒的/自己表現的便益
第2階層が、機能的便益
第3階層が、属性

となります。

と、講義でここまで聞いて、頭にピンときました。それは、ブランドQFDとの共通性です。

(ブランドQFDについては、過去記事を参照願います。)

ブランドQFDでは、消費目的、品質特性、ブランド属性の関係を明らかにしますが、便益階層と対比しますと以下のようになります。



比較しますと、便益階層とブランドQFDは、内容としては同じであり、そうしますと、ブランドアイデンティティー策定にブランドQFDを活用できる可能性があります。

すごいことを思い付いたと、一瞬思いましたが、よく考えれば当たり前のことで、ブランドQFD自体は、名工大のブランドの先生が考案したもので、当然便益階層は頭にあったと思います。

つまりは、私の知識不足で、恥ずかしながら後付け的に理解したということになります。そういう意味では勉強が足りてません。

さて、この便益階層の作成ですが、実際に企業内で行う場合には、社内各部署から20~30名を集め、ブレインストーミングをしながら、半年~1年かけて完成させるようです。

この便益階層づくりに、ブランドQFDを利用した場合には、以下の効果が見込まれます。

(1)一人でつくれる。
ブランドQFDはデータを集めて処理するだけですので、社内の人間を集めて議論せずともつくれます・・・。

(2)客観性がある
人間を集めて議論しますと、主観的な議論になりやすいですが、ブランドQFDはデータを集めて処理するだけですので、主観が入らず、客観的な分析ができます。

(3)もれがない
人間の議論のみでは、重要な観点がうっかり漏れてしまう可能性がありますが、ブランドQFDは多数のデータを集めて処理するだけですので、観点の漏れを防ぐことができます。

(4)各便益間の関係性がわかる
人間の議論では、便益はたくさん挙がると思いますが、各便益間の関係はわかりません。ブランドQFDは各便益間の関係性が数値化されますので、単なる便益の羅列ではなく、便益の知識構造としての理解が可能となります。

ということで、ブランドアイデンティティ の策定には、ブランドQFDを是非ご利用ください。

さて、ここからが本題ですが、便益階層の頂点にありますのが、情緒的/自己表現的便益となります。

頂点にあることからわかるように、ブランドアイデンティティの策定に対して、もっとも重要な便益となります。

つまり、情緒的/自己表現的便益が優れているほど、顧客ロイヤルティが高く、模倣が困難なブランドとなります。

情緒的/自己表現的便益とは具体的に何かといえば、自分は優れている!、本当の自分になれる!、と感じるとか、優越感、安心感が得られる、などのような便益です。

私も機械の分野で生きてきましたが、製品開発に際し、このような情緒的/自己表現的便益というようなものは考えたことがありません。

もっぱら仕様を充たすことと、コストを下げること、のみを念頭に開発をしており、それ以外のことをした場合には、コスト上昇につながることから、上司や先輩に怒られることもあります。

しかしながら、ブランドというものを考える場合には、情緒的/自己表現的便益を考慮する必要があり、さてどうしようとなります。

1つは、技術者も情緒的/自己表現的便益に対応できるよう、人間の感情を研究するということがあると思います。技術というのはロジカルに考えがちですが、ブランドの観点からは、人間というものを理解する必要があります。

ただし、技術者が何でも勉強するというのも、現実的ではありませんので、その場合には、 情緒的/自己表現的便益については、それに長けた人(具体的にはよくわかりませんが・・・)にお任せして、技術者の方はロジカルな便益を検討し、それら便益を結合するという考えもあると思います。

ブランドQFDは、そのような知識の結合に便利にできておりますので、ここでも活用できるかと思います。

また、情緒的/自己表現的便益がもっとも重要な便益というのは、BtoCビジネスの場合には腑に落ちると思いますが、BtoBビジネスの場合はどうなのか、という気がします。

BtoCビジネスの場合には、需要者が自然人となりますので、情緒/自己表現に訴えるのは効果的とおもいます。しかし、BtoBビジネスの場合には、需要者が、情緒もなく、自己表現もない企業となりますので、情緒的/自己表現的便益は効果がないと思われます。

模倣困難な情緒的/自己表現的便益が無意味となると、BtoBビジネスのブランド化は困難となります。とはいえ、BtoBビジネスのブランドというのは存在しますので、機能的便益で差別化を図っているのかもしれません。

電機メーカーなどは、BtoCビジネスからBtoBビジネスに軸足を移していますが、これは、企業が老化して、情緒的/自己表現的便益をユーザーに提供できなくなっているからかもしれません。


と、ブランド戦略の講座を受けていろいろ感じたところを書いてみました。

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