さて、もう一つのキーワードである「イノベーション」ですが、これは前にも述べましたように既存のアイデアの新しい組み合わせを考えることが必要です。イノベーションというと何か新しいことをしなければならない気がしますが、考えのベースとなるのは既存の物に過ぎません。
したがって、今あるものをまず知るということが大切と思われます。そして、いろいろな観点でものごとを見てみることが必要なのではないでしょうか。 鳥の目、虫の目、魚の目などともいいますが、観点を変えるとまた違う風景が見えるものです。
例えば、i-podなども出た当時は、あまり売れないだろうという評判が多かったですし、私もそう思っていました。なぜなら、mp3プレイヤーというものが既にありましたので、今更アップルが音楽プレーヤを出しても売れる理由がありませんでした。
しかしながら、現在ではi-podは私も持ってますし、音楽プレーヤーの代名詞ともなっています。これは、音楽プレーヤーというハードウェアとインターネットを組み合わせた部分にイノベーションがあったともいえます。
余談ですが、私は、10年以上前にレコード会社の友人にmp3ファイルを使って音楽のデータだけで販売してみてはどうかと提案したことがあります。しかし、当然ビジネスにはなりませんでした。その理由は、CDより音質が劣るとか、課金システムや著作権の管理をどうするかとか細かい問題もありますが、一番の理由はCD市場を食ってしまう可能性があったからです。
当時はミリオンセラーも多く出ていた時代ですので、わざわざCDの売上を減らすようなビジネスは会社として実行できないのは当然といえるでしょう。
何を言いたいのかといいますと、「イノベーション」とはアイデアだけではダメであり、実行し、世の中に定着して初めて「イノベーション」 といえるということです。i-podに似たアイデアは世界中で考えられていたと思いますが、実際に実行できたのはアップルだけでした。
アップルはCDを製造しておりませんでしたのでネット販売を行いやすかったともいえますが、様々な課題を乗り越えてゆくマネジメントも重要といえるでしょう。