以前、幸福を感じるにはどうすればよいか?というテーマの本を読みました(書名は失念しました・・・)。
その中に、物を買うことにより幸福感を得られるか?、ということについて調査した結果が載っていました。
結論としては、幸福感は得られるが、その感情は数ヶ月しか持続しないということでした。
人間の心理には感覚が減衰する機能があるそうで、これは例えば、身内の死等の、とてつもなく不幸な状況が生じた場合でも、その感覚は時間とともに薄れてゆき、不幸な感情が持続しないという心理的作用のようです。
不幸な感情が持続した場合には、生きる気力が失われ自己の生命に危険が及びますが、感情が薄れることにより、生命の保護を図っているといえるでしょう。
この心理的作用が、不幸な感情にのみ作用すればよいのですが、幸福な感情にも作用してしまうとのことです。
例えば、メルセデス・ベンツを買ったとしても、嬉しいのは3ヶ月くらいで、その後は、ベンツがある生活が当たりまえとなってしまいます。
したがって、物による幸福感を持続させるためには、定期的に物を買ってゆくことが必要となります。ベンツであれば、モデルチェンジのたびに買い換えるなどです。
但し、幸福感が多少麻痺していますので、単に買い換えるのではなく、グレードの高いベンツにしなければなりません。まあ、お金持ちにしかできないことです。
それでは、そこまでお金のない人はどうすればよいかというと、経験に投資することがよいと書いてありました。
経験は頭の中に記憶されますので、思い出すたびに幸福感が(多少なりとも)蘇り、幸福感が持続しやすいとのことです。
そう考えると、これはものづくりのヒントとなるかもしれません。
私はアップル製品をもっていないのですが、アップル製品はユーザー・エクスペリエンスを大事にすると聞いております。
つまり、単に物としてのスマホを売るのではなく、スマホを使用して得られる経験も売っているといえます。これにより、アップル製品を使用する幸福感が持続し、熱狂的なファンを得ているのではないでしょうか。
また、ハーレーという大型バイクが、日本の大型バイク市場の大きなシェアを占めていますが、ハーレーのバイク自体はメカニズム的に優れた部分もなく、性能、品質の面で日本のバイクに劣っています。
それでも、ハーレーに乗ることによるアウトロー的経験は格別のものですし、ショップもイベントを開催し、購入者がそういう経験を得られる仕組みも整えております。
そこでやはり、物としての幸福感に加えて経験が加わる幸福感の相乗効果があり、熱狂的なファンがいるのだと思います。
日本製品はハイスペックですが、使用者の心理的な面の考慮が少々弱いと思います。
製品設計のみにエンジニアを配置するのではなく、ユーザーが製品を使用することに得られる経験を設計する人や、ハーレーのように能動的に経験させる仕組みを設計する人も開発に加えると、厚みのあるものづくりができるのではと思います。