2016年3月27日から2016年4月2日までになされた裁判は、侵害訴訟5件(特許3件、商標2件)、審決取消訴訟7件(特許6件、商標1件)です。
ようやく4月に入りました。2か月遅れということで、なんとか1か月遅れにもってゆきないところですが、無理そうです・・・。
1.侵害訴訟
*コメント
控訴人による本件商標の使用は、商標法1条及び民法1条3項に照らし,権利の濫用として許されないとされました。自社の登録商標を使用する場合でも、他社の事業展開を妨げる意図がある場合や、本件商標を使用しておらず業務上の信用が化体していない場合には、その禁止権の使用は出所混同防止機能が害されることはない、等々の理由によります。結局のところ、商標は登録されるだけではだめで、正当な使用をしないと、法的に保護されないということでしょうか。
(2)平成27(ネ)10098 特許権侵害差止等(東京地方裁判所 平成22(ワ)46241)
平成28年3月30日判決 控訴棄却(4部)
特許権 (エミュレーションシステム用の統合デバッグ機能を備えた再構成可能な集積回路)
構成要件充足性,均等侵害,間接侵害
平成28年3月30日判決 控訴棄却(4部)
特許権 (エミュレーションシステム用の統合デバッグ機能を備えた再構成可能な集積回路)
構成要件充足性,均等侵害,間接侵害
*コメント
判決文のフレキシブルプローブの実施態様の部分が黒塗りになっています。黒塗りは閲覧制限(民訴92条)を申し立てれば裁判所の方でやってもらえます(必ずという訳ではありませんが)。
(3)平成26(ネ)10080等 特許権侵害行為差止等(東京地方裁判所 平成24(ワ)30098)
平成28年3月30日判決 原判決一部取消(2部)
特許権 (スピネル型マンガン酸リチウムの製造方法)
構成要件充足性,特許の有効性(新規性,進歩性,補正・訂正要件
平成28年3月30日判決 原判決一部取消(2部)
特許権 (スピネル型マンガン酸リチウムの製造方法)
構成要件充足性,特許の有効性(新規性,進歩性,補正・訂正要件
*コメント
除くクレーム訂正が本件明細書の記載の範囲内でするものではないとされてしまいました。除くクレームも万能とは言えないようです。
*コメントはありません・・・。
(5)平成27(ネ)10107 特許権侵害差止等(東京地方裁判所 平成26(ワ)18842)
平成28年3月28日判決 控訴棄却(2部)
特許権 (多接点端子を有する電気コネクタ)
構成要件充足性,均等侵害
平成28年3月28日判決 控訴棄却(2部)
特許権 (多接点端子を有する電気コネクタ)
構成要件充足性,均等侵害
*コメントはありません。
2審決取消訴訟
*コメント
「笹漬」の識別力が争われましたが、国語辞書の記載や、他の漬物の使用状況から、その指定商品の原材料,生産方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるとされました。また3条2項の主張も行っておりませんので、原告は苦しい主張となりました。
(2)省略
(3)平成27(行ケ)10052 審決(拒絶)取消
平成28年3月31日判決 請求棄却(1部)
特許権 (ナルメフェン及びそれの類似体を使用する疾患の処置)
特許請求の範囲の記載要件,明細書の記載要件(実施可能要件)
平成28年3月31日判決 請求棄却(1部)
特許権 (ナルメフェン及びそれの類似体を使用する疾患の処置)
特許請求の範囲の記載要件,明細書の記載要件(実施可能要件)
*コメント
明細書に医薬的に有用な作用効果を有することを技術的に裏付ける薬理試験の結果や実施例等の客観的な事実の記載は一切ないことから、実施可能要件を充たさないとされました。
(4)平成27(行ケ)10054 審決(無効・不成立)取消
平成28年3月30日判決 審決取消(2部)
特許権 (気道流路および肺疾患の処置のためのモメタゾンフロエートの使用)
進歩性(相違点の判断(顕著な効果))
平成28年3月30日判決 審決取消(2部)
特許権 (気道流路および肺疾患の処置のためのモメタゾンフロエートの使用)
進歩性(相違点の判断(顕著な効果))
*コメント
顕著な効果の有無が争点となりました。明細書の記載からは、本件発明の効果が理解できないとされました。構成要件に「1日1回の投与」と入っている投薬方法の発明です。ちなみに、審決では、構成は容易想到であるが、顕著な効果はあるから、進歩性はあると判断されたようです。こんな判断もあるのだなと感じました。
*コメント
主引例に他の引例を適用しても本件発明の構成とならない、主引例に他の引例を適用して本件発明の構成とするにはさらに1段階多くの(すなわち2段階の)努力を必要とするので容易でない、主引例に他の引例を適用することには阻害要因(主引例の課題を解決できなくなる)がある、とされました。
*コメント
特許請求の範囲の解釈として間欠的本件構成を含むか否かが争点となりました。結果論としては、そう主張するのであれば、明細書に明確に記載しておかないと、権利者の意に沿わない解釈が裁判でなされるということでしょうか。