私は主に特許の仕事をしておりますが、だいたいどういうことをやっているかというと、このような感じです。
①対象発明の把握⇒②公知技術の調査⇒③両者の構成の相違の把握⇒④相違による技術的効果の評価
この①から④の作業を、案件ごとに行って1日が終わるという、ある意味単調な仕事です。
最近は、特許のみならず、お客さんのご要望で意匠や商標の仕事も行っておりますが、
意匠の場合には、
①対象意匠の把握⇒②公知意匠の調査⇒③両者の態様の相違の把握⇒④相違が需要者に与える美感の評価
商標の場合には、
①対象商標の把握⇒②先行商標の調査⇒③両者の外観・称呼・観念の相違の把握⇒④相違が需要者に与える印象・連想・記憶の評価
となり、やることは同じとなることに最近気が付きました。
そうすると、意匠・商標の仕事をしても、仕事の単調さは変わらないことになり、こんなことでよいのか考えてしまいます。
そんな中で、最近読んだ波頭亮さんの「思考・論理・分析(産業能率大学出版)」という本の中に、このような一節がありました。
「思考とは、思考対象に関して何らかの意味合い(メッセージ)を得るために頭のなかで情報(知識)を加工することなのである。」
「思考の他に重要な行為が存在する。それは『情報収集』である。」
「思考のメカニズムは、情報と情報を突き合わせて、比べ、『同じ部分』と『違う部分』を見極めるプロセスである。」
そういう意味では、特許実務というのはまさに「思考プロセス」であり、何ら特別なことではなく、他の分野や仕事でも当たり前に行われている思考作業にすぎないことがわかりました。
したがって、私の単調な仕事も、他の人も似たような仕事をしていると思われ、安心しました。
この本の著者の方は、バブル時代によくテレビに出ておらられ、あまりいい印象がなかったのですが、上記の本はかなりしっかりした内容で、実務にも大きな気づきを与えてくれる本で、もう少し早く読んでおけばよかったと思わせる本でした。
この本は、「思考」のみならず、その後の「論理」と「分析」についても書かれておりますので、本屋で見かけましたら、購入をお勧めいたします。