2011年9月24日土曜日

知的資産とは?

下町ロケットの後半は特許権をライセンスするか、若しくは、特許製品を納入するか、の主人公の判断が主軸となります。

特許権をライセンスすれば年間5億円のライセンス料が自動的に会社の口座に振り込まれることとなります。一方、製品を納入する場合には、一下請け業者として大企業からコスト削減や品質向上などの厳しい要求がなされることとなります。

ライセンスではあまり面白くありませんので、小説内では特許製品納入の道を主人公は選ぶのですが、この判断は果たして正しいのでしょうか?

特許権のライセンスの場合にはキャッシュフローが確実に得られますので財務状況が好転します。一方、特許製品納入の場合には、そもそも特許製品を購入してもらえるか不明ですので事業上のリスクが高くなります。
 
したがって、普通に考えれば特許ライセンスの方を選択すると考えられ、逆に、それ以上の価値が合理的に存在しなければ製品納入の道は選べないことになります。

製品納入を選ぶことによるメリットとしては、 大企業の要求に答えることにより従業員が成長しまた技術力の更なる向上を図ることができます。さらに、新たな技術的課題が判明すれば、新たな発明のタネとなったりします。

実際小説の中では、従業員が実際に超機密のロケット組立工場に入り、不具合の原因究明をしたりしているので、この経験により得られるノウハウはお金で買えるものではありませんし、人間の成長はかなりのものではないでしょうか。

このようなノウハウや人的資産などの無形の資産を知的資産と呼び、最近は知的資産を生かした経営が奨励されているようです。しかしながら、このような知的資産は財務諸表上に現れるものではありませんので、経営に対する効果はなかなか論理的に説明できるものではありません。

結局、知的資産経営を重視するか否かは経営者の考え方にかかっているといえるでしょう。

2011年9月16日金曜日

米国特許法改正について

アメリカの特許法がいよいよ改正されることとなりそうです。改正の話は毎年のようにあったのですがお流れになることが多く、今回も流れるだろうとなまけていましたらあっさり成立しそうなので、あわてて情報収集をはじめました。

法案(リーヒ・スミス米国発明法案)の詳しい情報につきましては、これから精度の高いものがでてくると思いますので、私が気になった点を2、3コメントしたいと思います。

まず、なんといっても外せないのが先発明主義から先願主義への移行です。

日本など多くの国では最初に出願した人が特許をとれるのですが、米国では最初に発明した人が特許をとることができるという特異な制度を維持しておりました。制度の相違により米国出願はいろいろと面倒でしたが、今回の改正で多少わかりやすくなったといえます。

ただ、日本の先願主義とは微妙に違う箇所もあるようです。

日本の特許法は新規性の喪失の例外として、自己の行為により開示された場合にはその発明は新規性を失わないという規定があるのですが、この場合でも、第三者が同様の発明を開示した場合には新規性を失ってしまいます。

ところが、米国特許法のグレースピリオドでは、自身の発明開示後であって、自身の出願前に第三者が同一発明を開示した場合であっても、自身の出願は第三者の開示による影響は受けないこと(いわゆる「先発表主義」)となるようです。つまり、先発明主義的ニュアンスが多少残ることになります。

米国では発明者の保護が重要であるとの考えが強いようです。

また、日本では出願人は自然人、法人どちらでも可能ですが、従来の米国特許法では、発明者のみが出願人となれるとされていました。今回の改正で、発明者からの承継人(法人) も出願人となれるようです。したがって、企業名で今後は出願できるようです。

その他いろいろ改正点がありますが、最初に述べましたようにこれから精度の高い情報が出てくると思いますので今後の情報に注意が必要と思います。

(補足:2011.9.19)
本法案につきましては2011.916にオバマ大統領が署名し無事に成立いたしました。米国特許法改正の概要につきましてはJETROのホームページにわかりやすいまとめがありますので、下記PDFファイルを参照願います。

http://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/ip/news/pdf/110908.pdf

2011年9月13日火曜日

中秋の名月

中秋の名月を撮影してみました。


やはり望遠レンズがないとダメなようです。マニュアル撮影の知識も必要ですね。

月明かりというのは思うより明るいものです。以前、大洗から苫小牧へ向かうフェリーに乗ったとき、真夜中に船のデッキに出てみると、月明かりに照らされた水面が船の方へまっすぐ伸びていて、とても幻想的だったことを思い出します。

と、まあ知財に関係ない話でした。

2011年9月9日金曜日

発明が終わるとき

日本では1年間で35万件程度の特許出願がされています。ちょっと前までは40万件以上出願されていたのですが現在は減少傾向です。

ところで、毎年こんなに多くの特許出願がされてゆけば、いずれ発明はし尽くされ特許出願も0になる日が来るのではないかと、エンジニアをやっていた頃疑問に思っていました。

発明とは技術的課題を解決するための手段ですので、発明が0となるかどうかは、技術的な課題がなくなるか否かを考えればよいことになります。

そう考えると技術的な課題はまだぞくぞくと出てきそうです。例えば、先の震災により、新たにエネルギー、防災対策、放射能除去、原子炉解体などの新たな課題が生じました。そしてそれらを解決するための発明がこれからいろいろとなされるでしょう。

したがって、発明が0となる日はまだまだ先のようです。

ただし、ミクロ的な話となるとまた別のことが考えられます。例えば、日本に限っていえば、これから少子高齢化や理系離れが進み、また、借金が増えすぎて研究開発へ資金を投入できなくなった場合には、日本では発明がされず、もっぱら元気な外国(アメリカ、中国)などにて発明がされてゆくのではないでしょうか。

また、特定の技術分野については発明が減少する場合もあるのではないでしょうか。単純な機械要素などは発明と呼ばれるものが生み出されにくい状況にあります。電気、ソフトウエア、バイオ、ナノテクなど様々な技術分野が登場し発明創造の中心が新たな技術分野に移動してゆくと思われます。

したがって、特定の国、特定の技術などミクロ的に考えれば発明が0となる可能性もあるということです。

もっと、簡単にいえば、日本に住んでいて機械が専門の私には特許の仕事が来なくなる可能性があるということです。。。そうならないよう日本を盛り上げてゆきたいと思います。

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