2017年8月15日火曜日

日本の特許制度の大欠陥?

「日本の特許制度の大欠陥、アイデアが世界中に流出する理由」、というネット記事を見かけました(リンクは割愛いたします)。

記事の内容については、新井先生の書かれた『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』という書籍の解説記事のようです。

こういう題名ですと、日本の特許制度に大きな欠陥があるような感じになりますが、諸外国の特許制度は統一が図られておりますので、日本の特許制度特有の欠陥というものはないと思います。

あとは、特許制度自体に欠陥があるのかどうなのか、アンチパテント、プロパテント等の考えもありますが、上記ネット記事はそこまで言及するものではありません。

上記記事の内容(新井先生の書籍ではありません)につきましては、簡単言えば、特許公開により技術が公開され、競合に模倣されるから、秘匿可能な技術については出願しないようにしましょう、という感じでしょうか(厳密に読んでいませんが・・・。)

こういう記事を読みますと、頭の中が20年くらい前で止まっているのかな、と感じます。20年くらい前でしたら、日本の技術力は世界一のレベルにあり、特許出願件数も世界一でした。したがって、日本の技術は盗まれる側でした。

しかし、現在では、日本の技術の多くがキャッチアップされ、出願件数も諸外国に抜かれております。そうすると、現在では、外国公開特許情報を分析して、技術を盗んでやろう(もちろん権利侵害にならない範囲ですが・・・)、という考え、すなわち盗む側にそろそろなると思います。

ノウハウ秘匿戦略に良い悪いはないのですが、ノウハウ秘匿戦略を選択する場合には、先使用権を確保することが必須となります。これは、競合が権利化した場合には、自社実施が不可能となるからです。

もちろん、製造方法は、ばれないからいいという考えもありますが、権利侵害を放置するのは、コンプライアンス上問題がありますので、まともな会社でしたら、自社実施をやめると思います。

国内だけのビジネスを実施している会社でしたら、先使用権は日本国内のみで確保すればよいのですが、グローバルなビジネスを展開している企業でしたら、各国ごとに先使用権確保の作業をしなければなりませんので、大変です。

個人的には、競合他社が権利化しそうなノウハウにつきましては、先んじて権利化することもよいのではと思います。そうすることにより、先使用権確保の作業の負担が低減できます。

もちろんコカ・コーラの製法のような、競合他社が永遠に開発不可能な技術については、秘匿戦略でよいと思います。

さて、こういうネット記事というものは著作権法上どうなのかという気もします。書籍の要約でも翻案権の侵害になりますので、著作権者の許諾を得ていると思いますが、著作者の意図と違うような解釈がなされる要約の場合には、同一性保持権とか問題になりそうな気もします(もちろん同意があればよいのですが)。

要約の内容が、著者の意図と多少異なっているようですので、気になるところです。


2017年8月6日日曜日

ローコンテクストとハイコンテクストについて

文化は、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化に分類されることがあるそうです。

ハイコンテクスト文化では、言語以外に状況や文脈も情報を伝達し、重要な情報でも言語に表現されないことがあるそうで、具体的には日本のような文化を示すそうです。

ローコンテクスト文化では、伝達される情報は言語の中で全て提示されるそうで、具体的には、ドイツやアメリカのような文化を示すそうです。

ハイコンテクスト文化だからといって、文化のレベルが高いという訳ではなく、言語以外のコミュニケーションが使われる度合いが高いというだけの意味です。

ハイコンテクスト、ローコンテクストというのは、文化の分類だけではなく、例えば仕事の分類にも使えるのではないかと思います。

例えば、ローコンテクストな仕事には、弁理士があります。発明の内容については100%言語を使用して明細書を作成する必要があります。ハイコンテクストな明細書を作成した場合には、発明が不明確であるとして拒絶されるでしょう。

ハイコンテクストな仕事には芸術家があると思います。音楽やら絵画やら自己の作品を言語を使用することなしに、伝えなければなりません。言語を使ったら負けという世界です。

また、仕事ではなく、商品の分類にも使えそうです。 

ブランドはもういらないで紹介したような製品は、言語で品質のすべてが説明できるローコンテクスト商品といえます。

また、日本製品は、価格が安く、品質も高いということで、特性をすべて言語で説明できるローコンテクスト商品といえます。(ローコンテクスト商品だからといって、レベルが低い訳ではないのは上記のとおりです。)

一方、ハイコンテクストな商品としては、いわゆるブランド品があると思います。シャネルのバッグやハーレーのバイク等、言語で表すことが困難な特性を有する製品です。

こう書くとハイコンテクストな商品の方がいいような気もしますがそうでもありません。ローコンテクストな商品は、特性を言語で伝えることができるため、良さが理解しやすいメリットがあります。

例えば、日本のバイクは馬力、車重等に優れ、その良さを、国・文化を問わず伝えやすいので、世界中で売れております。

一方、ハイコンテクストな商品はユーザーが良さを理解しにくいので、プロモーションにコストかけないと、なかなか売れない商品といえます。

とはいえ、ローコンテクストな商品は、特性が競合にも理解しやすくキャッチアップされやすく、競争が厳しくなりやすいため、差別化しにくいといえます。

逆に、ハイコンテクストな商品は、 特性が競合に理解しにくいため、差別化には有利化かもしれません。

ということで、ハイコンテクスト、ローコンテクストという観点でいろいろ考えると面白いかもしれません。


2017年8月3日木曜日

ブランド属性とブランドアイデンティティーについて

(前記事)
ブランドQFDについて(論文へのリンクあり)
ブランドの定義について
ブランド知識について
ブランド知識の構造化について

ブランドQFDは、「顧客ニーズ」と「品質」と「ブランド属性」との関係を明らかにします。

ここで「ブランド属性」とは何かといえば、製品・サービスが備える顧客価値向上に関わる要素のことを言います。

上記ブランドQFD論文では、ブランド属性を製品の構成要素に限定しておりますが、これは、特許情報から抽出できるのが製品の構成要素のみだからです。

したがって、実際には、その他の要素(デザイン、サービス、会社のビジョン)なども、ブランド属性に含まれるかと思います。

例えば、自動車の場合には、エンジン、タイヤ、シャシー、サスペンションなどがブランド属性となると思います(もちろん、もっと細かく分けることも可能です)。

自動車メーカーごとのブランド属性は共通している要素もあり、異なる要素もあります。

スバルのエンジンは、水平対向エンジンであり、その他のメーカのエンジンは、直列エンジンであったり、V型エンジンであったりします。

つまり、ブランド属性「エンジン」において、スバルは他に無い特有のエンジンを有しているわけで、これがスバルのブランドアイデンティティー (の1つ)となります。

このように、自社のブランド属性を抽出して、他社のブランド属性と比較することにより、自社のブランドアイデンティティーを明確にすることができます。

2017年7月28日金曜日

ブランド知識の構造化について

(前記事)
ブランドQFDについて
ブランドの定義について
ブランド知識について

ブランド知識にはいろいろあることを説明いたしましたが、ブランド知識を得るだけではブランドとはなりません。

次に、ブランド知識間の関係(コンテクストともいいます)を明らかにする必要があります。

なぜ関係を明らかにするかといえば、人間は物事のつながりから、物事を理解するためです。これはブランドだけではなく、例えば、バランススコアカードやロジックモデル等に共通する考えです。

そして、様々なコンテクストの全体像が構造化されたブランド知識となります。

とはいえ、ブランド知識間の関連の強さを確認するというのもどうやっていいのかわからないところがあります。

ブランドQFDを使用しますと、「ユーザーニーズ」と「品質」と「ブランド属性」の間の関係を確認することができます。

さらに、ブランドQFDの優れた点は、コンテクストの強さが数値化(定性的ではありますが)されるところです。したがって、どのコンテクストが支配的で、どのコンテクストが弱いか判断できます。

そして、コンテクストの弱い部分については、広告宣伝をしたり、ブランド属性の開発をしたりして、関係を強化するような、ブランド戦略を立てることもできます。

このように、ブランドQFDは、ブランド知識の構造を把握するために有用です。

2017年7月26日水曜日

ブランドはもういらない

「ブランドはもういらない」という記事を見かけました。

ブランドはもういらない? 消費が後押しする「ブランドレス」


記事を読みますと、特定のブランドを付さずに、その分価格を安くした商品が米国で受けているようです。

通常、ブランドがありませんと、購入者は製品の品質を判断できませんので、普通はあやしくて買わないと思います。

それを避けるために、ロゴを付す部分に、詳しい商品説明が記載されているようです。購入者はそれを読んで、品質を判断できるようです。

商品にロゴ・マークを付すのは「狭義のブランド」といますが、商品に関する構造化された知識を提供するのが「広義のブランド」ですので、記事の事例は、「ブランドはいらない」、「ブランドレス」というようりも、「広義のブランド」に着目した商品といえます。

また、ブランド知識の中でも「品質」が特に重要な知識であることがわかります。

ということで、これからのブランド戦略は、商品の「品質」を購入者に適切に伝えることが重要になってゆくのではないでしょうか。

2017年7月24日月曜日

ブランド知識について

(前記事)
ブランドQFDについて
ブランドの定義について

ブランドとは、「製品・サービスに関する構造化された知識」と勝手に定義しましたが、それでは知識(ブランド知識ともいいます)とは、具体的には何かといえば、その製品を説明するために使用される用語のすべてです。

例えば、原産地、原材料、デザイン、ハードウェア構造、品質、ユーザーの知覚、感想、広告宣伝・・・などです。ほかにもあるかもしれません。

余談ですが、某スーパーのプライベート商品については、以前は、原産地表示がありませんでした(今はあるようですが・・・)。

重要なブランド知識である原産地の情報を顧客が得られませんから、製品の品質を顧客が判断することができません。

この場合、狭義のブランド(PB)は製品に付されているとはいえますが、広義のブランドと言えるかどうかは疑問となります。

一方、フランスのワインなどは、原産国、原産村、原産畑、醸造者、製造年、等級などをエチケットを見るだけで分かるようにしております。つまり、過剰ともいえるブランド知識を顧客に提示しております。

こうすることにより、フランスワインのブランド価値を高めている(すなわち、高く売れる)ことになります。

ブランドQFDで使用する知識は、「ユーザーニーズ」、「品質」、「ブランド属性」の3種の知識です。

これに限られるというよりは、上記3種は、従来のQFDや特許情報解析でも分析に多用される知識ですので、実績もあり流用しやすい事情があります。

もちろんその他にいろいろな情報(デザインなど)を組み合わせても良いのですが、それは今後の課題です。

2017年7月22日土曜日

ブランドの定義について

 (前記事)
ブランドQFDについて

巷では「ブランド」や「ブランド戦略」という言葉が使われますが、そもそも「ブランド」の定義がよくわからないところがあります。

狭義には「自社製品に用いられるマーク等」となりますが、巷で「ブランド」という場合には、それ以上の意味が含まれていることが多いです。

私もいろいろ文献を当たりましたが、「ブランド」の定義を明確に書いているものは少なく、使われ方も文献によりまちまちでした。

ということで、「ブランド」のはっきりした定義はないのですが、 ケラーの「精神的な構造を創り出すこと,消費者が意思決定を単純化できるように,製品・サービスについての知識を整理すること」という考え方が自分にはしっくりきます。

私が考えるブランドとは、「製品・サービスに関する構造化された知識」としたいと思いますが、いかがでしょうか。もちろん、それは違うというお考えもあるとは思いますが・・・。


2017年7月15日土曜日

類似商品・サービスへの対処について

本屋の雑誌コーナーで「類似商品・サービスへの対処について」の特集が組まれた法律雑誌(ビジネスロージャーナルの8月号)を見かけたので、買ってみました。

1000円くらいかと思ったのですが、レジで2500円を請求されて、値段を確認しておけばよかったと後悔しました。

内容としては、弁理士、弁護士の解説が2/3で、残りが企業担当者の座談会でした。

弁理士、弁護士の解説については、特に目新しい部分はありませんでしたが、コメダ珈琲の事件について、弁護士の方が少し興味深い意見を述べられていました。

(その内容をここで書くのもなんですので、ご興味のある方は、ビジネスロージャーナルの8月号をご入手ください。)

しかしながら、1次ソースの決定をまず見ておくことが有用と思いますので、以下のリンクを参照願います(恥ずかしながら、私もこれから読みます。)

平成27年(ヨ)第22042号仮処分命令申立事件

 一方、面白かったのが、企業担当者の方の座談会です。結局のところ、類似商品・サービスへの対処として、訴訟を起こしても、勝ち目が薄い(ほとんど勝てない)ので、どうするか悩みどころとなります。

迂闊に経営陣に積極策を進言しますと、訴訟で負けた時に社内でつるし上げをくらうことがあるそうです。

しかしながら、模倣を見過ごすわけにもいかず、どうしようということになります。

結局のところ、知財担当者としては、上記のコメダ珈琲の事件などを分析して、勝てる道筋をつけるとともに、できるだけ交渉で決着をつけるような作戦しかとれません。

それでも最後は訴訟を提起する場合もありますが、この場合には、勝訴を期待するというよりも、訴えの提起により交渉が前進することを期待したり、訴訟の事実が世に広まることにより、世論の支持を集めることを期待することになります。

企業の知財担当者は大変ですね・・・。

類似商品・サービスへの対処として、訴訟を起こしても、勝ち目が薄い原因としては、ひとつは、不競法に基づく訴訟となっているからです。

そうしますと、 類似商品・サービスへの対処としては、独占排他権たる商標権、意匠権を取ってゆくのが、一番の対処となります。

とはいえ、店舗デザインのようなトレードドレスについては商標登録されにくい事情がありますので、この場合には、不競法2条1項1号で差止請求できるよう、常日頃から証拠づくりをしなければなりません。

例えば、店舗のデザインについては、他の店舗にない特徴的な部分を付加しておくことや、同一の店舗デザインを継続的に使用して周知性を獲得しておくことなどです。

あとは、もう少し不競法で勝てるように法改正でもしてほしいのですが、これは無理ですかね・・・。 

2017年7月13日木曜日

ブランドQFDについて

パテント誌2017年3月号に掲載されました、当論文「ブランドQFDを活用した調査手法の開発」が、弁理士会のホームページで公開されました。

該当ページへのリンクはこちらです。
https://system.jpaa.or.jp/patent/?freekeyword=%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89&year%5Byear%5D=2017&month%5Bmonth%5D=03

論文の内容につきましては、おいおいここで説明させていただきたいと思いますが、どうしてこのような研究をしようかと思い立ったかといえば、某所で行ったセミナーが契機となりました。

テーマとしては「中小企業のブランド戦略」だったのですが、仕事がら、商標の登録要件や、商標権の権利行使などの説明を主に説明しました。

ただこれは商標(トレードマーク)の話であり、ブランドはもう少し違うものを示すのではないかという疑問も生じてきました。

ブランドというものはトレードマークの背後にある、形のないものでありますので、やはりそちらの方を明らかにする必要があると考えました(続く)。

2017年7月12日水曜日

ものつくりの考え方について

日本はものつくり立国だ、という話がよくされます。私も前職はものつくり技術者だったので、そうなのかと思いますが、私が技術者をやってた頃から比べると、ものつくりの概念が変わってきていると最近思い始めました。

旧来のものづくりといえば、主に品質向上を図る技術開発を行うことを意味していたと思います。品質向上のためには、地道な実験等を行うような自然法則と向き合うような姿勢が必要であり、技術者には、そのような資質が求められます。

今でもこのような概念でものつくりを語る向きもありますが、それでは足りないことが、2000年以降明らかになったと思います。例えば、技術で勝って事業に負けるような事態の発生です。単なる技術開発ではなくマーケティングも求められるようになりました。

そこで、最近はデザイン思考、ブランド思考に代表されるような顧客心理への影響を考えたものづくりがされるようになりました 。人間心理は自然法則の及ばない領域ですので、今までとは違う観点でものづくりをしなければなりません。

と、ここまでが2017年までの考えですが、今後さらに課題となるのが仮想世界の存在です、AIやらIOTやら仮想世界の存在が現実界に影響を与える時代が迫っています。

仮想世界は人為的取り決めが100%の世界ですので、自然法則は当然及ばず、考え方も世界を知るというよりは、世界を作るようなスタンスが求められます。仮想世界では、世界を作る人が当然有利になりますので、受け身でいると不利になります。

例えば、自動運転車というのは、仮想世界のポジションの取り方が雌雄を決するかもしれません。

特許法や技術標準も一種の仮想世界かもしれません。特許法も技術標準も人為的取り決めにすぎません。しかし、自然法則に適合し顧客ニーズのある製品でも、特許法に抵触し、技術標準に不適合だと、製品の製造はできません。

ということで、今後のものづくりは、自然界、人間界、仮想界の3つの世界の狭間で、どのようにポジションをとってゆくかが、悩みどころでもあり、面白いところとなると思います。

2017年7月5日水曜日

ブランドとデザインについて

ブランドデザイン保護 経産省、意匠法改正を検討」という記事をネット上に見かけました(新聞社の記事のリンクはすぐに消えてしまいますので、リンクは割愛いたします。)

その新聞社の会員ではありませんので、記事を最後まで読めないのですが、記事の題名に違和感を感じました。

「ブランドデザイン」というのが意味不明ですし、そもそも「ブランド」と「デザイン」とは異なる概念ですので、無造作にくっつけてよいのかと思います。

その後、経産省のホームページで以下のニュースリリースを見つけました(リンクあり)

「産業競争力とデザインを考える研究会」を設置します


先のニュースはこの研究会のことをいっているのかと思います。

この1次ソースを読みますと、「ブランドデザイン」なる用語は一言も使われておらず、 「ブランド」と「デザイン」をきちんと区別して使用しております。

官庁は新聞社とは異なり慎重に用語を選んで使っているようです。やはり、1次ソースに当たることが重要とあらためて思いました。

研究会でどのようなことが議論されるのかはよくわかりませんが、ブランドアイデンティティたる物品の形態について、効果的に意匠権で保護できるよう、意匠法の改正を念頭においた議論を行うようです。

このような考えは方向性としてはありと思いますが、そうはうまくゆかない事情もあります。一番の問題は意匠権には存続期間20年という縛りがあることです。

例えば、自社ブランドアイデンティティたる商品の形態について無事に意匠権が取れたとします。そうすると、商品形態が保護された状態で自社ビジネスを行うことができます。

しかしながら20年後には意匠権が消滅しますので、法律の建前上、誰でもその商品形態を実施することが可能となります。

20年間商品形態を実施することにより、ブランド価値が高まりますが、意匠権消滅後は誰でも実施できますので、20年間のブランド価値を高める活動が無意味となる、おかしな結果となります。

ブランドというのは半永続的に使用することにより価値が高まりますので、存続期間に限りのある権利とはマッチングが悪いことになります。やはり、半永久的に保護可能な商標権による保護が望ましいことになります。

研究会では、このあたりも議論されると思いますので(されないかもしれませんが・・・)、本年度末に出される結論に注目したいと思います。

2017年7月2日日曜日

課題分析型コンサルティングの課題について

今月号のパテント誌の特集は弁理士キャラバンでした(パテント誌の内容は3か月後に弁理士会ホームページで公開されますので、10月ごろには誰でも見れるようになります)。

しかしながら、コンサルティングを受けた企業の感想が書かれているのみで、実際にどのようなコンサルティングが行われたかは、よくわかりませんでした。

感想からコンサルティング内容を推測すると、複数の弁理士が複数回中小企業を訪問して、その企業の課題を分析して、中小企業の経営者様に報告する、というような手順のようです。

こういうコンサルティングの手法の課題としてよくいわれるのが、課題が放置されるとか、課題が解決されない、という事態の発生です。

例えば、分析の結果、特許出願件数が少ない、という課題が発見されて、その旨企業の方に報告した場合には、「そうですね・・・。」と納得感の高い反応があると思います。

それでは、その課題が解決されるかといえば、いつかやろう、と考えて先の伸ばしになり、そのままうやむやとなるケースが多いのではないでしょうか。

これは中小企業の場合には仕方のないことともいえます。他に業務を抱えた人が多いですので、課題解決に回せる人もいないですし、予算もありません。(大企業であればプロジェクトチームを作ったり、予算を当てたりするのでしょうけど。)

そう考えると、中小企業には課題分析型コンサルティングよりも、企業の課題はとりあえず横に置いておいて、社内で知財活動が回るよう、社内規程を整える、組織を作る、人材教育をする、というような足元を固めるところから始めた方がよいのかもしれません。

足元を固めれば、課題についても外部の人間に指摘されるまでもなく自然と社内のリソースで解決できるようになります。これ以上書くと弊社の宣伝になりますので、このあたりでやめておきます・・・。

話は変わりますが、弁理士キャラバンは無料でのサービスとなりますので、中小企業にとっては使いやすいサービスなのですが(コストパフォーマンスが無限大!)、同様に中小企業に対するサービスを行っているコンサルタントからみると事業が圧迫される存在でもあります。

ということで、民業圧迫とならない程度で活動いただければというのが希望となります。

2017年6月26日月曜日

調査なしの出願について

今月号のパテント誌は弁理士キャラバンの特集号でした。

私も認定コンサルタント(正式名称は忘れました・・・)なのですが、何年も依頼が来ない幽霊状態ですので、本当にやっているのかと感心しました・・・。

そのような中で少し気になったのが、キャラバン弁理士が企業の方からヒアリングした際、「以前、弁理士から特許調査に時間をかけるくらいなら早く特許出願したほうがいいといわれたことがある」というような話が出た部分です。

どのような状況下でその弁理士はこのようなアドバイスをしたのかわかりませんが、特許調査をせずに特許出願をする場合には、次の2つのリスクに注意しなければなりません。

1つ目は、拒絶査定となるリスクです。特許調査をせずに特許出願をするということは、特許性が不明なまま出願をすることになりますので、審査で近い文献が見つかり、拒絶査定となる可能性は大です。

特許出願には50~100万円の費用が掛かりますので、拒絶査定となった場合には、そのコストが無駄になることになります。この程度の費用の無駄はなんともない、という会社でしたら問題ないのですが、そうではないと思いますので、少し考えようということになります。

特許調査自体は、調査会社で5~10万円程度で調査してもらえますので、費用は掛かりますが、あきらかに特許性がない発明は調査でわかりますので、出願費用が無駄となることを削減できると思います。

2つ目は、1発で特許査定となるリスクです。特許になればいいではないか、と考えてしまいがちですが、1発で特許査定ということは先行文献が0ということですから、不必要に狭い権利となっている可能性があります。

拒絶理由通知が1回でもあれば、先行文献の存在がわかりますので、あとは、特許になるギリギリの線を狙って請求項を減縮補正するのですが、1発特許査定ですとそれもできません。

この場合には、分割出願してもう少し広い請求項に置き換えたいところですが、特許査定が出たので分割出願しましょう、などと担当者の方に説明しても、「なんで?」となるでしょうし、分割出願にも通常出願と同等の費用が掛かりますので、余計に出願費用がかかるということにもなりかねません。

そう考えますと、調査するくらいなら出願した方がいいとはいわずに、きちんと調査をした方が、結果的に、出願コストは安くなると思います。

逆にいえば、調査をしない方が、手続きが増えて弁理士は儲かるともいえてしまいますので、まあそう思われないようにしなくてはなりません・・・。

私の場合には、基本的に調査をしてから出願してもらうようにしています。これは上記2つのリスクに加えて、拒絶査定となるとメンタル的にダメージがありますので、自分は弁理士としてだめだ・・・、無力だ・・・と感じて仕事の意欲が低下することもあり、できるだけ調査して特許性を高めてから出願するようにしています。

2017年6月19日月曜日

自分を変えるか、相手を変えるか。

浪人時代、駿台予備校に通っていまして、そこで奥井先生の英語の講義を受けていました。

他の講師は大学受験対策を重視した講義内容でしたが、奥井先生は欧米文学の一説を題材に文学を語るという受験に役立つかよくわからない、優雅な内容でした。

その講義の中で今でも印象に残っているのが、スタンダールの恋愛論の一節です(浪人生にこういう講義をするのもなんだかと思いますが・・・。)

ドイツのお土産に、ザルツブルグの小枝というものがあるそうで、これは、岩塩採掘の坑道に、そこいらへんで適当に拾った木の枝を放り込んでおくと、木の枝の周囲に空気中の塩の成分が結晶化して蒸着し、きらきらしたダイヤのような輝きを放ち、それをお土産として売っているそうです。

小枝は原価がただのようなものですので、なかなか良い商売です・・・。

恋愛も似たようなもので、一人一人の人間は、どこにでもいる大して差がないかわり映えしないものですが、相手の心の中に投射された場合には、相手の心の中で、いろいろなものが蒸着してゆき、相手にとってかけがえのない人間になるそうです(結晶化作用といいます。)

異性にもてるには、収入力を上げる、ファッションセンスを磨く、など、自分を変えることに焦点を当てがちですが、スタンダールは、個々の人間はそう違いはないから、自分を変えるよりは、相手の内心を変える努力が効果的と語っているのではと思います(違うかもしれませんが・・・。)

私の感想としては、そうですか・・・、としか言えませんが、最近仕事をしていて似たような感覚にとらわれることがあります。

マーケティングを重視した商品開発では、まず顧客のニーズを調査して、どういう製品にするか決めてゆきます。つまり、顧客ニーズに合わせて製品を作り変えてゆきます。最近流行りのデザイン思考はこの製品変化をスピードアップする方法論です。

こういうニーズに合わせて自らを積極的に変えてゆくという製品がある一方、あまり変わらない製品があります。

例えば、ハーレーダビッドソンというメーカーがありますが、製品外形は半世紀変わらないというシーラカンスのようなバイクです。日本のバイクメーカーはユーザーニーズに応えるよう変化し続けているのと対照的です。

ハーレーは性能的には日本のバイクに劣っておりますので、普通に考えれば、全く売れないはずなのですが、実際には全く逆で、日本の大型バイクの半分くらいのシェアをとっておりますし、単価も日本のバイクより非常に高いので、大変儲かっているはずです。

では、人はなぜハーレーを買うかというと、上で述べた結晶化作用のようなものが内心に生じて、もはやハーレー以外目に入らなくなってしまうのではないでしょうか。

簡単にいえば、日本のバイクは自分が変わる派で、ハーレーは相手を変える派といえるでしょうか。こういう状態を一言でいってしまえば、ハーレーにはブランド力がある、となります。

ユーザーニーズを重視するデザイン思考の次には、ブランドアイデンティティーを重視するブランド思考が製品開発において重要となると個人的には予想しています。

駿台予備校を出て、もう30年たってますので、どういう講義が行われていたか、ほとんど覚えておりません。その中で、奥井先生の講義だけ記憶にあるのは、文学には内心を変化させて結晶化させる作用があるということでしょうか。なかなか奥が深いです。

2017年6月13日火曜日

特許査定がでたら・・・

特許査定が出たら特許料を納付するんではないか、と言われればそうなんですが、ちょっと待って考えてみましょう。

係争事件などに携わりますと、特許された発明でも、いろいろ権利行使に支障がある場合に出くわします。

例えば、意見書で発明を限定しすぎの主張をしていたり、特許されたものの請求項が過度に減縮されており権利行使しにくい場合や、そもそも何が書かれているのかよくわからないケースなどもあります。

その場合、請求項や明細書を補正したくもなるのですが、設定登録後は請求項を広くするような補正はできません。後悔先に立たずという感じとなります。

そうしますと、請求項を修正できる最後のチャンスが、特許査定後の30日以内となりますので、このチャンスを有効活用しない手はありません。

といっても、このタイミングでは補正はできませんので、権利行使可能な請求項とした分割出願をすることになります。分割出願の場合には再度の審査となりますので、場合によっては拒絶されるリスクはあります。

したがって、権利行使の可能性や拒絶されるリスクを勘案して、分割出願するかどうか決定することになります。

権利行使が難しいかどうか判断が難しい場合には、特許訴訟の経験のある弁護士か特定侵害訴訟代理業務付記有弁理士・・・に請求項のチェックをお願いすることもいいかもしれません。

特許査定となるとうれしいものですが、落ち着いて考えてみましょうという話でした。

2017年6月10日土曜日

製品と組織について

スマホは今や海外メーカーが主流となりましたが、よく考えてみますとスマホは日本の技術力で十分製造可能ですので、日本メーカの存在感がないというのは不思議なことともいえます。

この理由としては、スマホは(国際)水平分業で作られることにより、低コストの製造が可能となるので、垂直統合的な組織の日本メーカーでは高コストにならざるを得ず、価格競争力がない、という説明がよくなされます。

では、日本メーカーも水平分業的になればよいではないかと思いますが、そうは簡単にはいかないようです。

日本の電機メーカといえば、従業員数が数万人~10万人という規模になりますので、垂直統合をやめて水平分業的な組織に移行しようと考えた場合には、大規模な組織変更、人員整理が必要となると思います。

そうすると、役員会の意思統一や労働組合との交渉など、多大な労力が必要となりますので、社長の相当な力量が必要ですが、創業者でもない、サラリーマン社長の立場では、そこまでの改革は困難と思います。

日本の電機メーカーはスマホだけ作っているのではなく、国や電力企業からのインフラ製造の仕事もしており、こちらも有力な収入源となっています(というより、こちらに注力しています)。

インフラ関係は垂直統合的な組織でも対応できる仕事ですので、社内に垂直統合組織と水平分業組織を両立させるのも非効率であり、スマホを捨てて、垂直統合、インフラへ電機メーカーが進むのも合理的といえます。

そう考えますと、ソニーやパナソニックのように国の仕事に依存していない企業や、シャープのように外資系となった企業であれば、水平分業的な組織に移行しやすいと思われます。

私も、NECに以前勤めておりましたが、売上高、株価とも、私が辞めた年がピークであり、今は売上高1/2、株価1/3となっているそうです。そう考えると、組織変更に伴い、自分は実のところ人員整理された側の人間といえるのかもしれません・・・。

2017年5月13日土曜日

意味のイノベーションについて

前前前回の記事で、コンデジはスマホに対抗しようがないという、救いのない内容を書いてしまいましたが、それでは思考停止過ぎですので、少し考えてみました。

破壊的イノベーションに対抗するには、こちらも新たなイノベーションを起こすのが有効と思われます。

使えそうなイノベーション手法に、デザイン・ドリブン・イノベーションというのがあります。これは、製品の意味を探求するイノベーション手法です。

写真の意味は「記録」というものがあり、カメラはこの意味において性能を発揮するよう技術開発が行われてきました。

スマホのカメラの場合には、「共有」という新たな意味が見いだされ、この意味の重要性が高い場合には、ユーザーはこの意味を受け入れ始めます。

古い意味性しかないカメラは廃れ、スマホにユーザーは移行するという流れとなります。

そうしますと、スマホに対抗するには「共有」を超える意味性を見出すことが考えられるかと思います。

といっても、新たな意味を見出すにはどうすればよいのかとなりますが、これは「デザイン・ドリブン・イノベーション」という本に書いてあります。

まずは、自分一人で「写真」の意味を考えるという、なんとも哲学的な作業となります。

次に、意味を考えついたら、その意味をいろいろな専門家に解釈してもらい、意味を評価してもらいます。

通常の製品開発では、製品の評価はユーザーにゆだねますが、デザイン・ドリブン・イノベーションでは、歴史学者とか文化人類学者、マーケティングの専門家やら、日頃から物事を深く探求している人に解釈してもらうことが重要となります。

さて、このように意味を見出す作業となりますが、「技術」のウェイトがこの段階では高くないことになります。つまり、開発というと技術開発を考えがちですが、 デザイン・ドリブン・イノベーションの場合にはまず意味開発となります。

逆にいえば、新たな意味が開発できれば、技術自体は既存のものの組み合わせでも構いません(「枯れた技術の水平展開」とかいいます)。

もちろん、新たな意味に、新たな技術が組み合わされば、鬼に金棒ですので、技術が無意味ということではありません(「技術が悟る瞬間」とかいいます)。

では、具体的にはどうするかといえば、私は、カメラの専門家でないので、よくわかりません・・・。とはいえ、意味という観点で考えると、カメラも新しい製品がいろいろ出てきていることがわかります。

例えば、GoProなどのウェアラブルカメラがあります。この意味は何かといえば、「視線」とかそういうものになるでしょうか。

また、チェキのような取ってすぐにプリントできるカメラがあると思います。この製品の意味はなんでしょうか?同様なカメラは昔からポラロイドカメラとしてありますので、技術的には陳腐であり、一度は廃れた製品ですので、新たな意味性があると思います。

パーティーとかの集合写真で使われるようですので、「今の切り取り」とかそういうことになるのでしょうか。

個人的には、新たな意味性を見出しつつある製品として、 カシオの肌をきれいに加工してしまうカメラがあると思います。従来のカメラは「記録」するために、忠実な絵作りを実現しようとしていましたが、「フィクション」にまで加工してしまうというのは新たな意味と思います。

こういう考えると、意味を考えるのには、ソムリエのような語彙力が必要であることに今気が付きました。これからの技術者は、技術の本だけではなく、文学も読んだ方がよいかもしれません。

2017年5月10日水曜日

ブランドと不自由さについて

GWに、とある城下町を観光してきました。

武家屋敷を見学したところ、武家屋敷の構造・高さには、幕府の厳しいお達しがあり、設計の自由度はかなり低いようでした。幕府のお達しに逆らうと、お家取りつぶしのような厳しい処分がなされます。

前回の記事で、江戸時代の街並みに統一感があるのはコスト的制約からとしましたが、幕府の厳しいお達しの方もかなりの制約条件といえ、これらの過剰な制約から、似たような構造にならざる得なかったと思われます。

結局、これらの過剰な制約による不自由さから、逆に町全体の統一感が生じているという皮肉な結果ともいえます。

今は自由な世の中ですので、昔のような不自由さはありませんが、逆に、自由さゆえにブランド的には難しいのかと思います。

例えば、製品開発などする場合には、ユーザーニーズや技術革新の成果を積極的に取り入れて設計したりできますが、逆にいえば、ブランド属性がユーザーニーズや技術革新に合わせて、ころころ変わることになり、ブランドの継続性というものが感じられなくなると思います。

また、競合も当然ユーザーニーズや技術革新を取り入れた設計をしてきますので、似たり寄ったりの製品になりがちで、やはりブランドの個性というものが感じられなくなります。

例えば、自動車などは、昔はメーカーごとに個性があったものですが、今はもうどこの車か区別がつきにくくなっております。

そうすると、ブランド的には、あえて不自由さを入れてゆくことが、ブランドを確立するためによいのかと思います。

例えば、スバルという会社は水平対向エンジンに固執しており、これが他メーカとの大きな差となっております。

昔は水平対向エンジンにより低重心化が図れるという技術的意味があったと思いますが、今は、他の形式のエンジンの改良も進んだため、水平対向エンジンによるメリットはほとんどないと思います。

他の形式のエンジンの改良がさらに進んだ場合には、スバルは水平対向エンジンをやめるという選択肢もでてくると思いますが、その場合にはブランド属性が他メーカーと相違しなくなるため、ブランド力は低下すると思います。

そう考えると、最終的には、ユーザーが不自由さを許容するかどうかが、ブランド維持に大きくかかわるのかと思います。

ハーレーダビッドソンは、ニーズや技術革新とは無縁な古臭いバイクを作っておりますが、これは根強いファンがいるからできることです。ファンづくりがブランド維持に欠かせないのではないでしょうか。

2017年5月3日水曜日

コストと統一感について


ゴールデンウィークとなると、国内小旅行に出かけることが多いですが、国内を旅行していて感じるのは、江戸時代以前のコンテンツの強さです。

地方の名物といえば、街並み、食べ物、祭り等、江戸時代以前に成立したものが多く、こういうものがある地方は、このようなコンテンツを利用して観光客を集めています。

江戸時代以前の街並みのよいところは、風景に統一感があることです。似たような建物が並ぶことにより、建物単体ではなく、地域としてのブランド価値が生じます。

ブランド戦略の要諦は、ブランド属性のコントロールにありますが、昔の街並みはこれができているということになります。

ブランドマネージャーみたいな人がいない時代で、どうしてこういうことができたかといえば、その理由にロジスティクスが未発達であったことがあると思います。

昔は物の輸送にはコストがかかるため、家を建てる際には、近場で入手できる材料を使わざるを得ない状況があります。また、大工さんも遠くの人を呼ぶにはコストがかかるため近場の人に頼まざるをえません。

結局、似たような材料で似たような人が建築しますので、町全体が似たような建物だらけになり統一感が生まれます。結局、コスト的制約が統一感を生み出しているといえるでしょう。

現代では、個々が自由な設計で自由な材料で建物を建てますので全体としてはごちゃ混ぜ感のあるアジア的な風景となってしまいます。もちろん、こういうアジア的な風景も味わい深いものがあります・・・。

地域ブランドが最近話題ですが、地域全体としてブランド属性をそろえて、統一感を出せるかがポイントとなると思います。

例えば、特産品として醤油を作ろうとした場合、ブランド属性として、原材料、製法等があると思いますが、輸入の大豆、輸入の塩、水道水、他の地域の製法を使った場合には、ブランド属性がバラバラとなり、ブランドをユーザーが認識できなくなります。

ブランド的には、地元の大豆、塩、湧き水、地元独自の発酵手法を使いたいところですが、そうすると今度はコストがかかりますのでとても高い醤油となり、商品としては微妙になります。

 そうすると地域ブランドというのは、コストと地域性とのバランスをどうとるかという部分が課題となり、このあたりがマネージャーの腕の見せ所となりそうです。

2017年4月22日土曜日

破壊的イノベーションの怖さについて

桜の季節も終わりとなりました。満開となると写真を撮りたくなるものですが、今はもうスマホで写真を撮っている人がほとんどです。

写真といえば、大昔は、一眼レフのカメラ、少し前はコンパクトデジタルカメラと相場が決まっておりましたが、今は、写真マニアを除いてカメラを持ち歩くことはなくなりました。

こういうスペックに劣る製品が先行製品を駆逐するさまを破壊的イノベーションといいます。 1995年ごろクリステンセンという方が唱えた説で、今ではもう一般化した考えです。

スマホは破壊的イノベーションの代表選手みたいなもので、携帯電話、携帯音楽プレーヤー、ナビゲーション、カメラ、パソコン等を次々と市場から駆逐し、日本の電機メーカーも苦しい立場となりました。

とはいえ、破壊的イノベーションという考えは昔からありますので、例えば、カメラメーカーは対策をとれなかったのでしょうか?

そう考えると、破壊的イノベーションの怖さがわかります。つまり、一度破壊的イノベーションが始まりますと、旧来の企業は対策の立てようがないということです。

カメラメーカーもカメラの性能を向上したり、ネットワークに接続しやすくしたりして製品の改良を進めましたが、あまり効果はありませんでした。

スマホの使い勝手の良さの前に、カメラを単独の製品として成立させることはもう無理といえるでしょう(マニア向けや特殊用途は除く)。

自分がカメラメーカーの技術者であったらどうするかと考えてみましたが、私もあまりいいアイデアがありません。

自社でカメラ機能に特化したスマホを作ってみればいいとも思いましたが、スマホ自体、日本のメーカーがほぼ駆逐された状況であり、また、リスクをとって新規事業を始める気力も日本企業にないでしょうから、あとは製品の寿命を1年でも伸ばし、撤退の時期を先延ばしするような努力をするのがせいぜいとなります。

さて、次の破壊的イノベーションが生じる分野は、誰でもわかる通り自動車なのですが、現状の自動車メーカーは対策をとれるのか、それとも撤退に追い込まれるのか、注目したいと思います。

2017年4月8日土曜日

アイデア出しについて

クライアントのところへ明細書作成相談へ伺うと、権利を含まらせたいので、実施例や変形例を追加してほしいと要望されることがあります。

私もこの仕事を始めて10年になりますので、得意の技術分野でしたらアイデアは無数に浮かぶのですが(実現可能性はない単なる思い付きである場合が多いですが・・・)、少し悩むところがあります。

それは、新しいアイデアの発明者がどうなるかということです。

私がアイデアを出した場合には、少なくとも発明者の1人に私が加わるのが特許法上の原則ですが、クライアントとしては実施例を追加する程度はサービスの一つに過ぎないとの認識と思いますので、発明者に加えることはしないと思います。

その場合には、冒認出願ということになり、拒絶・無効の理由となりますが、弁理士としてもクライアントとの間に波風を立てたくないため何も言わないと思います。

とはいえ、そのアイデアが当たった場合には(可能性はとても低いと思いますが・・・)、正当な対価を受けられないことになります。

そもそも、無体財産を守るべき弁理士が、アイデアを安売りするようなマインドでよいのかという疑問もあり、無価値でアイデアを出すようなことは慎むべきと考えます。

このあたりの心の整理がつかないので、クライアントでのアイデア出しの現場に立ち会う場合には、私からはアイデアを出さず、もっぱらファシリテーションに専念することにしています。

昔、インテレクチュアルベンチャースという会社を見学させていただいたことがあるのですが、そこでは弁理士や専門家の方が集まって発明創出会議を行い、固まったアイデアから順次出願してゆくという活動をされておりました。

アメリカではこのようなビジネスが成立していることから、アイデア自体を重視し、それを収益につなげていることがわかります。

そうしますと、私も今後は、発明者に加えていただけるクライアントに関しては積極的にアイデア出しをしてゆけるかなと考えています。まあ、いやがられると思いますし、それなら他の弁理士に頼むということになりそうですが・・・。

2017年1月21日土曜日

ノウハウは特許出願しない? (その2)

はじめてしりましたが、空売り専門の投資顧問というのがあるそうで、先日そこが作成したレポート(ネット上で公開されています。)を読みました。

レポートは青色ダイオード訴訟の代理人であったこともある(今は投資顧問の代表とのこと)、有名な弁護士の方が書かれたそうで、 なかなか手厳しい内容でした。

空売り専門ということで、(攻撃?)対象の企業の株価が下がるような内容なのですが、その一つに、「製造方法については、ノウハウ秘匿としているが、特許権が10件程度しかなく、参入障壁を築けていない」との指摘がありました。

確かにノウハウ秘匿といえど、巨大資本が参入し始めると、容易にキャッチアップされてしまうでしょうから、特許権がない場合には、容易に市場参入されてしまいます。

そうすると、ノウハウについても出願することも必要かと思います。

また、それでも、ノウハウを出願しない場合には、特許権の数が足らず、参入障壁が気づけませんので、他の技術(物の発明など)について、積極的に出願し、特許権の不足を補うことも必要かと思います。

結局のところ、ノウハウだから出願しない、のではなく、参入障壁の観点から、必要な特許網を構築するために、過不足なく出願してゆくことが必要と思います。

2017年1月10日火曜日

ノウハウは特許出願しない?

最近は製造方法等のノウハウは特許出願しないよう、各方面から厳しくいわれることが多いと思います。

その理由としては、権利化しても権利行使しにくいことや、ノウハウを真似されてしまうことがあります。それだったら、特許出願せずに秘密にしておこうという考えです。

実際その通りとは思いますが、一つだけ注意が必要なことがあります。それは、他社が権利化してしまう事態の発生です。

自社ノウハウといえど、他社も新しい技術を開発できるよう大変な努力していますので、独力でそのノウハウに到達してしまう可能は十分あります。

他社が権利化してしまいますと、自社ノウハウといえど実施不能となります。 これは大変な事態です。

ノウハウは権利行使しにくいから、こっそり実施を継続すればよいとも考えてしまいますが、裁判になれば、立証責任が転換し、自己の実施態様を具体的に開示しなければなりませんので(特許法104条の2)、まったく秘密という訳にはまいりません。

先使用権があるではないかとも考えますが、先使用権を立証するには、常日頃から事業に関わる文書を公証役場へもってゆき、確定日付を得ておき、その資料を数十年保管するくらいの管理体制が必要です。

また、国内のみで事業をしている企業であれば問題ありませんが、グローバルに展開している企業の場合には、海外での実施に対して先使用権を主張することは、困難といえます。

そうしますと、ノウハウを特許出願しない、ことにも、大きなリスクがあることがわかります。したがって、盲目的に、ノウハウを特許出願しない、とするのは、どうだかとも思います。

それでは、どうすればよいかといえば、ノウハウを当面は秘匿するにしても、特許情報調査の結果、他社の権利化の可能性が高まった場合には、自社としても特許出願することに切り替えるような判断も必要かと思います。

2017年1月4日水曜日

戦略と戦術について

大河ドラマの真田丸が先日最終回を迎えました。個人的には、可もなく不可もないというような印象でしたが、話の流れがよいためか、めずらしく第一話から最終回まですべて視聴できました。

話としましては、前半は父の真田昌幸の戦い、後半は子の真田幸村の戦いが描かれていたと思いますが、前半の方が面白かったように感じます。

それは、なぜかといえば、真田昌幸は大名(弱小ではありますが)であったのに対し、真田幸村は最後まで一武将に過ぎなかったためかと思います。

真田昌幸は大名でしたので、まず、どの大名と組むか、どの大名と敵対するか、政治的な検討を行い、大きな戦略を定めてから、籠城、奇襲などの戦術を選択できます。

一方、真田幸村は、一武将にすぎませんでしたので、戦略にかかわることができず、出城を築くなどの戦術を実行するのがせいぜいでした。

よく言われますのが、戦術のミスを戦略でカバーすることは可能であるが、戦略のミスを戦術でカバーすることはできないとされます。

真田幸村が、どんなに優れた戦術を用いても、戦略が貧弱な場合には、戦いに勝利することは不可能です。(もちろん、真田幸村はそんなことは百も承知で、大阪方に味方したとは思います。)

ということで、テレビを見る方としては、そのあたりの行き詰まり感が、なんとも息苦しく感じました。

とはいえ、こういう話は現代にも通じるものがあります。

技術で勝って事業で負ける・・という話しがありますが、技術というのは戦術で、事業は戦略に相当します。

日本の技術者は優秀ですので技術で負けることはないと思いますが、事業戦略が良くなかったためか、日本企業の競争力は低下しつつあります。

逆にいえば、日本の技術者は、経営戦略がうまくいっている企業に転職すれば、その能力を最大限に発揮できるのではとも考えてしまいます。

真田幸村は戦略が巧みな大名(徳川家)に寝返ることはありませんでしたが、そのために、豊臣とともに死ぬことになりました。

もし自分が優秀な技術者であったなら、経営戦略の巧みな企業に転職して力を発揮するか、それとも、企業に残って最後まで奮戦するか、どちらの選択をするのか、いろいろと考えてしまいます。

note へしばらく移転します。

  https://note.com/ip_design  へしばらく移転します。