2020年6月17日水曜日

「知財」の寿命について

最近思いますのが、「知財」という用語が陳腐化しているのではないかということです。

私が「知財」という言葉を初めて知ったのは、就職した1990年代後半のことで、そのころ、会社の「特許部」という呼び名が「知財部」へ変わっていったと思います。

その後、21世紀に入り、国の知財立国宣言などがなされ、知財が大いに盛り上がったと思います。特許出願数は世界一となり、知財高裁もでき、弁理士志望者も1万人を越え、そのころ私も弁理士になりました。

私がよくゆく書店では、そのころ、知財関連書籍に6つの棚を使い、弁理士試験書籍に2つの棚を使っておりました。

今は知財関連書籍の棚は3~4に減り、弁理士試験書籍の棚はほぼ消滅に近い状況となっております。

特許出願件数は減り、知財高裁をつくったのに訴訟は増えず、弁理士志望者も数千人とひどいありさまです。

ということで、2020年、知財の世界は明らかに衰退期に入ったと思われます。

それで気になりますのが「知財」という用語の寿命が尽きますと、私のブログタイトルにも「知財」が入ってますので、なんとなく時代遅れに感じてしまうことにならないかということになります。

ということで、最近は「知財」に代わる言葉があるかどうかと探しています。良い言葉があれば、改名も考えようと思います。

よく考えますと、最近、特許庁も経営デザイン宣言(デザイン経営宣言でしたか?)などと知財に関連が薄い活動をしており、特許庁としても「知財」という用語を使用するのは時代遅れに感じている可能性があります。

なお、経営学では、ライフサイクルの衰退期に入った場合には、「撤退の時期(タイミング)を見極める」、「新製品(サービス)へ移行する、新市場に参入する」との判断が必要とのことです・・・・・・・・・・・。

まあ、どうなんでしょうか?余力のある方は、考えておいた方がよさそうです。

2020年6月10日水曜日

今年度の知財学会はZOOM開催

今年度の知財学会はZOOM開催になるとのアナウンスがありました。

そうすると、自宅でいろいろな人からのダメだしに対応しなければならないため、つらいかなぁとも思いますが、きついコメントは、ネットの接続が悪く、聞こえません・・というような振りで誤魔化せるかもしれません・・・。

ネットで会議は最近しばしばやるのですが、ZOOMでプレゼンしたことがないので、どうしようかなーと思いますが、事前にテスト接続もしてくれるようですので、何とかなるとも思います。

それで一般発表の申し込みですが、一応申し込む方向で考えたいと思います。今回のデザインモデルで知財学会ネタは尽きますので、以後知財学会はお休み(最後?)になると思います。

と、思いましたが、知財学会の一般発表には、オーディナリー・プレゼンテーションとインテンシブ・プレゼンテーションの2種類があって、今回申し込むのはオーディナリー・プレゼンテーションとなります。

インテンシブ・プレゼンテーションの方は、「すでに発表者が公表したいくつかの論文に、さらに新たな要素を加えて、発表するものです。」とされます。

そこで来年は去年と今年のテーマを上位概念化(リサイクル?)したテーマとすれば、インテンシブ・プレゼンテーションのネタにできることになります。

もちろんインテンシブ・プレゼンテーションは、ある程度の選考がありますので、誰でも発表できるわけではありません。そういう意味ではダメな可能性が多々あります。

そういう意味でも今年のデザインモデルの方は、資料をしっかりつくらねばと思います。

2020年6月7日日曜日

発明は仮説推論

最近はIPランドスケープ等の特許情報分析の重要性が叫ばれております。

私が面白いと感じるのは、いくら特許情報分析をしても、その分析結果のみでは発明には至らないことです。

特許を綿密に分析しているのに、発明とはならないのは、何故なんでしょうか?

特許を分析して発明になるのでしたら、特許分析業者が大量に発明をして特許出願できるわけですが、そうでもありません。

一般に、分析とは帰納推論といわれます。つまり、様々な多くの事実から何らかの規則を見出す行為となります。

つまり、帰納推論からは発明は生まれないことになります。

では、発明は何から生まれるといえば、これは仮説推論となります。仮説推論とは、何らかの規則から事実を導出する行為です。

そうしますと、IPランドスケープ等の特許情報分析とは、発明を生み出すための仮説推論の材料(すなわち規則)を提供することに意義がある、ということになります。

一般に、仮説推論の信頼度は、帰納推論や演繹推論と比較して、低いとされますので、精度の高い特許情報分析をしても、優れた発明が生まれるわけではないところが難しいところとなります。

デザイン思考では、仮説推論の信頼度の低さを克服するために、プロトタイプを早く作り演繹推論へ持ち込むことが推奨されます。

演繹推論は事実と規則から結論を導く行為です。演繹推論は論証力が強いといわれておりますので、仮説推論の信頼度の低さを補うことができます。

そうしますと、IPランドスケープを一生懸命考えるのも重要ですが、帰納推論→仮説推論→演繹推論という流れを押えることの方が、より重要となるかと思います。

また、発明者は仮説推論という難易度の高い仕事(失敗する可能性の方が高い仕事!)に取り組んでおりますので、このことからも温かい目で見てあげる必要があると思います。

2020年6月6日土曜日

発明は逆推論

順推論とは、原因から結果を導出する行為で、逆推論とは結果から原因を導出する行為です。

一般には、順推論より逆推論の方が論理的に難しいとされます。

例えば、「Aが大きな声を出した」→「うるさい」という順推論は容易ですが、「うるさい」→「Aが大きな声を出した」という逆推論は、A以外に人間がいた場合や周りの環境によっては単純にはなりたちません。

発明行為は逆推論といえると思います。つまり、効果(結果)から構成(原因)を導出する行為と言えます。

だから何だといえば、何でもないのですが、順推論と逆推論とは論理的に非対称性があることは認識した方が良いと思います。

以下は私の勝手な作り話ですが、企業も大きくなるとイノベーションが起きにくくなりますが、一つの要因として有名大学の官僚的な人材が増えるからと言えます。

イノベーションを考えることは逆推論ですので、論理的に穴だらけとなります。企業内でよいアイデアが出た場合でも、官僚的な社員が順推論でつぶすことはとても容易です。

頭のよい方の順推論には、論理的に穴がありませんので、アイデアはお蔵入りとなってしまうでしょう。こうして企業の活力が失われます。

以上は作り話ですが、私が発明相談を行う際にも、似たような状況になることがあります。発明者の説明を聞きますと、技術的な問題が明らかにあることが多いです。これは順推論なので、容易な推論となります。

そこで私が発明者の方に、順推論をひたすらぶつけますと、発明者としては返答しようがない状況に陥るおそれがあります。これでは、発明する気もなくなります。

したがって、発明者からヒアリングする際には、順推論と逆推論との論理的非対称性(順推論は容易、逆推論は困難)を頭に置いておきませんと、けんかになる可能性もあります。

これを逆手にとったのが、デザイン思考のプロトタイプをすぐつくる行為です。デザインは逆推論ですので、当初は問題があるのかどうかよくわかりません。

そこで、プロトタイプをつくって市場にすぐ出せば、これは順推論問題となりますので、容易に問題点を明らかにすることができます。

ようは、逆推論状態を短くして順推論状態へもってゆく合理的な考えです。これを繰り返せば妥当なデザインに近づくのではないでしょうか。

結論としましては、発明者は逆推論という論理的に非常な困難な仕事に取り組んでおりますので、温かい目で見てほしいということになります。

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