2014年7月8日火曜日

知財インフラについて

国民経済の発展にはインフラ整備が欠かせないとよくいわれます。

インフラとは、学校、病院、道路、港湾、工業用地、公営住宅、橋梁、鉄道路線、バス路線、上水道、下水道、電気、ガス、電話…等、社会基盤となる施設を示すとされます。

インフラを整備することにより、産業活動が活発となり、それらから得られる収益(税収)が増大する効果があります。

しかし、インフラ自体は収益を生むというよりは、むしろ経費が掛かる存在といえます。以前、熊しか走らない高速道路が北海道にありましたが、経済効果を生まないインフラは経費負担のみが重くのしかかることになります。

したがって、インフラを整備する場合には、そのインフラに乗っかる工場、ショッピングセンター、住宅団地等、具体的なビジネスを想定しなければなりません。

会社で行っている「御社の知財部」(登録商標)というサービスも、インフラ事業(いうなれば知財インフラの整備)に近いと最近感じています。

「御社の知財部」(登録商標)というサービスは、中小企業の知財管理規定の整備や、知財教育の実施、知財活動の運営の支援等を行っています。

これらは利益を直接生み出す活動というより、利益を生み出す活動をサポートする、いうなれば社内インフラを整備する活動といえます。

したがって、当社が構築する知財インフラの上に、うまくビジネスが乗っかれば、参入障壁形成の効果等により、収益が増大するという相乗効果が得られます。

一方、ビジネスとの合体に失敗すると、単なる経費を消耗するだけの不要な存在となってしまいます。よく、特許出願は無駄だ、という意見がありますが、これは、知財活動と事業のリンクがとれてなく、知財活動が自己目的化した場合に起きる現象と思います。

では、どうしたら知財インフラの上に、うまくビジネスが乗っかるのかといいますと、一般的な答えはないと思いますが、長期間継続的に知財活動を行いその方法を会社なりに学習してゆくしか方法はないと考えています。

当社では、料金を押さえて、その代り長期間の活動(数年以上)を前提に中小企業の知財活動を支援させていただいておりますが、これは、我々の方も学習する必要があるからです。

ということで、わが社も知財をやってみたいという会社様がありましたら、ぜひお声かけください。

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私が著者として加わっている書籍が出版されました。

『知的財産イノベーション研究の諸相』(日本知財学会知財学ゼミナール編集委員会編), コンテンツ・シティ出版

知財学会の論文集ということで、10論文中の「5. 戦略的商品開発手法の開発―QFDと特許情報の融合―」を担当させていただいております。
ご注文はこちらへお願いいたします。
MARUZEN & JUNKUDOネットストアHP
(アマゾン http://www.amazon.co.jp/dp/490686502X )

よろしくお願いいたします。

2014年6月23日月曜日

著書出版のお知らせ。

私が著者として加わっている書籍が出版されました。

『知的財産イノベーション研究の諸相』(日本知財学会知財学ゼミナール編集委員会編), コンテンツ・シティ出版

知財学会の論文集ということで、10論文中の「5. 戦略的商品開発手法の開発―QFDと特許情報の融合―」を担当させていただいております。

少数出版・・のためか、どの本屋に置いていないようですので・・・、ネットからご注文いただければと思います。(ご注文はこちらへMARUZEN & JUNKUDOネットストアHP

よろしくお願いいたします。

追記)2014.6.28
アマゾンでも販売が7/3から開始されるようです。

(ご予約はこちらへ http://www.amazon.co.jp/dp/490686502X )

よろしくお願いいたします。

2014年6月14日土曜日

広い請求の範囲について

先日、某企業の知財部長の方の講演をお聞きする機会がありました。その中で出た話として、このようなものがありました。

知財部長さんのところに、部下が「とても広い請求項の記載で権利化できました!」と喜んで報告にきたそうです。

その知財部長さんは、「で、そのクレームで権利行使できるの?」と部下に一言いったそうです。なかなか厳しいお言葉です。

広いクレームで権利化しろ、とはよく言われることですし、弁理士も請求の範囲を記載する場合には、とりあえず広く書きます。狭いと先輩に怒られたりしますし・・・。

しかし、広いクレームは権利行使のときに無効にされやすいという問題があります。審査の結果、特許されたのだから、後で無効とされるのはおかしいと誰でも思います。

ただし、審査官は地球上すべての文献を調査できるものではなく、まれに調査漏れが生ずる場合があります。

したがって、時間とコストをかけて文献調査を行えば、無効の根拠となる資料を探し出すことも可能かと思います。

ある弁護士の方は1億円の調査費用があれば、大抵の特許は無効とできるとおっしゃってましたし、ある調査専門の弁理士の方は、世の中の特許の8割を無効にできる調査能力が自分にはある、とおっしゃってました(敵には回したくありませんね・・・)。

また、訴訟となると、判断主体が特許庁の審査官ではなく、裁判官となるため、同じ証拠でも、事実認定の相違により異なる判断がされる可能性もあります。

実際に、現在の侵害訴訟の原告勝訴率は2~3割程度であり、敗訴の原因として、権利が無効と判断されたケースが約半分となっており、権利の有効性は非常に厳しく判断されます。

そういう観点からすると、クレームの広さ、狭さは、実際の権利行使や権利の用途によって、いろいろ変えてみることも必要かと思います。

例えば、競合他社への牽制、威嚇にしか用いないのであれば、広いクレームでよいと思います。一方、侵害訴訟の可能性がある場合には、公知技術をほぼ含まないような狭いクレームの権利とする必要があると思います。

現実的には、複数の特許で広い、狭いの役割分担をさせることになるのかと思います。

2014年6月1日日曜日

出口戦略について

弁理士試験の志望者が減少傾向にあるようです。



この10年の減少傾向を多項式近似曲線に当てはめると、平成30年には志望者が「0」になるという結果になりました。

実際には「0」になることはありませんが、志望者が3000~4000人程度になることは覚悟したほうが良さそうです。

近年、幅広い人材を集めるために、弁理士試験の合格者数を激増させて来ました。しかしながら、需要以上の弁理士数となったため、市場原理が働いて志望者数の激減につながっていると思います。

そうすると、幅広い人材を集めることができなくなり、優秀な方は他の分野を目指すことになるため、当初の目論見とは異なる皮肉な結果となりそうです。

しかし、こういう数字を見ますと、人々の賢さに気が付きます。人為的な政策に惑わされず、市場というものを理解し、判断していることがよくわかります。

こういう減少は弁理士に限られす、例えば、博士号も同様な状況にあるようです。

とある偉い大学の先生のお話を伺う機会があったのですが、昔の博士号は「碩学」であることの証明であり、一部の人間にしか与えられませんでしたが、近年は基準が代わり、「研究活動を独力で行うことができる」ことの証明となったそうです。

つまり、昔は博士号をとることが「ゴール」だったのですが、今は「スタート」となったといえるでしょう。 したがって、今の博士はレベルが低い、という考えは間違っており、資格の考え方や基準が変化しただけということになります。

弁理士数を急増させたのも同様な考えと思います。昔は弁理士資格をとることが「ゴール」といえましたが、今は「スタート」となったといえるでしょう。

しかしそうなると、資格をとった後どうするか真剣に考えねばならない、いわゆる出口戦略をどうするか、各人に委ねられることになります。

そうすると、弁理士になるのは容易化しましたが、弁理士として食べてゆくのは難しくなりますので、そういうことはひっくるめた資格の難易度としては、今も昔もそう変わらないのかもしれません。

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