2019年1月1日火曜日

課題と解決手段について(1)

年の初めには1年の目標を立てるものですが、今年は、課題と解決手段について、何かまとめておこうかと考えています。

特許的にいえば、課題と解決手段というものは、非常に重要でして、明細書に記載するのが、まさに課題と解決手段であり、また、課題が新規、解決手段が新規であれば、特許される可能性が高いです。

研究開発においても、適切な課題分析と、差別化された解決手段の創出が、よいアウトプットの条件となります。

とはいえ、「適切な課題分析」、「差別化された解決手段の創出」、と簡単に言ってしまいますが、実際に体系だてた方法論というものはありません。

とはいえ、全くないという訳ではなく、様々な人がいろいろ独自の方法論を語ってはおります。

例えば、課題分析については、特許分析、アンケートなど古くから用いられているものや、デザイン思考、デザインドリブンイノベーションなど最近話題の方法などがあります。

それらを、まとめて簡単な方法論とできないかというのが問題意識です。

下図は、試しに分類してみた図です。


課題
内容
視点
調査方法
分析手法
連続的
課題が明示されている
技術
現状調査
不具合分析
特許分析
人間
現状調査
アンケート分析
準連続的
課題が非明示的に形成されている
技術
故障予測
FMEA
人間
ユーザー観察
デザイン思考
QFD
非連続的
課題が明示されず非明示的にも形成されていない
技術
技術トレンドの想定
バックキャスティング
人間
感性、価値観、問題意識、有り様の想定
ブランドQFD
DDI



「連続的」、「準連続的」、「非連続的」という分類は、「創造デザイン工学(東京大学出版会)」からもってきました。

課題というのは、よくよく考えると様々な種類があり、顕在課題(連続的)、潜在課題(準連続的)、将来の課題(非連続的)があることがわかります。また、課題は、純粋に技術的なものと、人間心理から発生するものの2つがあります。

連続的課題の分析には、特許分析やアンケート分析で足ります。

準連続的課題は非明示的ですので、特許分析やアンケートから見出すことはできません。したがって、技術や人間の行動を深堀して推測・推定する分析が必要となります。これらの推定手法としては、FMEAやデザイン思考があります。

さらに、非連続的課題は、現在の常識の延長で考えることは難しいと思われます。そうしますと、未来の技術のあるべき姿から課題を見出すバックキャスティングや、人間の感性、価値観から有り様を見出す、ブランドQFDのような手法を用いることが考えられます。

「連続的」、「準連続的」、「非連続的」となるにつれて、課題としては新規なものとなりますが、そのような課題を設定することが適切であるかどうかは別の話となります。

なぜなら「連続的」な課題は市場性がありますが、「準連続的」、「非連続的」な課題は市場性があるかどうか不明確だからです。つまり、「準連続的」、「非連続的」な課題を解決したからと言って、売れる製品になるかどうかは別の問題となります。

ただし、製品としてはインパクトがありますので、うまくゆけばイノベーティブな製品となるでしょう。

謹賀新年

2018年12月19日水曜日

マーケティングプロセスと特許情報について


私のレベルの低い無査読論文が公開されましたので、ご笑覧願います。

 


 

この論文は、実のところ2012年に書いたものなのですが、お蔵入りとなっておりました。

 

しかし、今年、日本マーケティング学会に入会しましたので、会費を払っている以上、何か1件上げてみたくなったのと、野崎さんという非常にとても著名なコンサルタントの方が、私が2012年の知財学会で発表した図をご自身のブログにあげられておりましたので、今でも需要があるのかと思い、公開してみました。

 

この論文を読んで、よいと思うところはセミマクロ分析を行っているところです。最近よく見る特許情報分析は、マクロ分析が主と思います。

 

なぜ、そうなるかといえば、マクロ分析は書誌的事項のみで分析をしますので、明細書を読まなくて済むからです。一方、セミマクロ分析は1件1件明細書を読むことになりますので、とても時間がかかります。

 

特許分析をやっている方には、「明細書を読んだら負け」という人もいます。といっても、1件1件明細書を読み始めると工数がかかりすぎますので、仕事として特許分析を行う場合には、そうなることは仕方がないかもしれません。

 

マクロ分析の場合には、技術分析は特許分類で行いますので、特許マップの軸にはIPCやらFIなどのわけのわからない記号が並ぶことになります。セミマクロ分析の場合には意味が理解できる単語が並びますので、マップを理解しやすくなります。しかし、作るのが大変であることから、あまり普及はしていません。

 

論文の内容的には、IPランドスケープ(登録商標)を先取りしたような内容となっておりますが、今公開しますと後追いのようなイメージとなるのがかっこ悪く感じます。

 
このようなかっこ悪いこととならぬよう、皆様も新しいアイデアを思いついたら、つまらないことでも、その都度、論文で発表するなり、特許出願をした方がよいと思います。

2018年10月17日水曜日

顕在ニーズ、潜在ニーズについて

twitterで知りましたが、アロンアルファの釣名人という製品が売れているそうです。釣りの道具(竿や浮き)を接着することを目的とした製品です。

驚くことに、釣名人というからには釣り人に売れているのかと思えば、そうではなく、Amazonレビューを見ますとギタリストに強く支持されているのがわかります。

ギターを弾くと爪が欠けますので、爪の補強用に、爪にこの釣名人を塗るそうです。

安っぽい言い方をすれば、「釣り」という顕在ニーズに対し、「ギター」という潜在ニーズが見つけられたことになります。

もともと、釣名人の機能としては、「竿をくっつける」があります。これを顕在機能とします。そして、この顕在機能が発揮される状況として「釣り」があります。これを顕在場とします。

潜在ニーズを見つけるには、釣り名人の潜在機能を見つけなけばなりません。

1つの考え方としては、釣り名人の顕在機能である「竿をくっつける」を様々な文言に置き換えることです。

機能は「○○を××する」と表現されますので、この「○○」、「××」を他の用語に置き換えてみます。

この事例では、「竿をくっつける」の「竿」を「爪」に置き換えることにより、潜在機能を「爪をくっつける」としました。

そしてこの潜在機能が発揮できる場(顕在場)になにがあるかといえば「ギター」があった。ということになります(他にも潜在場はあるかもしれません。)

 また、「竿をくっつける」の「くっつける」を「固定する」に置き換えて、潜在機能を「竿を固定する」とすることにより、新たな潜在場が見つかるかもしれません。

要は、 「○○」、「××」を置き換える言葉を考えて潜在機能を決め、その機能を発揮しうる顕在場があるかどうかを考えればよいことになります。





また、逆に「釣り」という顕在場に対する、潜在場を考え、それに対応する顕在機能を考えることにより、「竿をくっつける」という顕在機能に対する潜在機能を考案できるかもしれません。

釣名人の新たな機能を見出したのは、スペインのフラメンコギター奏者のようですが、こういう製品に新たな意味が見いだされる事例というのは多いと思います。

それらを分析すれば、新製品開発のヒントとなるかもしれません。

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