特許的にいえば、課題と解決手段というものは、非常に重要でして、明細書に記載するのが、まさに課題と解決手段であり、また、課題が新規、解決手段が新規であれば、特許される可能性が高いです。
研究開発においても、適切な課題分析と、差別化された解決手段の創出が、よいアウトプットの条件となります。
とはいえ、「適切な課題分析」、「差別化された解決手段の創出」、と簡単に言ってしまいますが、実際に体系だてた方法論というものはありません。
とはいえ、全くないという訳ではなく、様々な人がいろいろ独自の方法論を語ってはおります。
例えば、課題分析については、特許分析、アンケートなど古くから用いられているものや、デザイン思考、デザインドリブンイノベーションなど最近話題の方法などがあります。
それらを、まとめて簡単な方法論とできないかというのが問題意識です。
下図は、試しに分類してみた図です。
課題
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内容
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視点
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調査方法
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分析手法
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連続的
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課題が明示されている
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技術
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現状調査
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不具合分析
特許分析
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人間
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現状調査
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アンケート分析
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準連続的
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課題が非明示的に形成されている
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技術
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故障予測
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FMEA
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人間
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ユーザー観察
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デザイン思考
QFD
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非連続的
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課題が明示されず非明示的にも形成されていない
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技術
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技術トレンドの想定
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バックキャスティング
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人間
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感性、価値観、問題意識、有り様の想定
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ブランドQFD
DDI
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「連続的」、「準連続的」、「非連続的」という分類は、「創造デザイン工学(東京大学出版会)」からもってきました。
課題というのは、よくよく考えると様々な種類があり、顕在課題(連続的)、潜在課題(準連続的)、将来の課題(非連続的)があることがわかります。また、課題は、純粋に技術的なものと、人間心理から発生するものの2つがあります。
連続的課題の分析には、特許分析やアンケート分析で足ります。
準連続的課題は非明示的ですので、特許分析やアンケートから見出すことはできません。したがって、技術や人間の行動を深堀して推測・推定する分析が必要となります。これらの推定手法としては、FMEAやデザイン思考があります。
さらに、非連続的課題は、現在の常識の延長で考えることは難しいと思われます。そうしますと、未来の技術のあるべき姿から課題を見出すバックキャスティングや、人間の感性、価値観から有り様を見出す、ブランドQFDのような手法を用いることが考えられます。
「連続的」、「準連続的」、「非連続的」となるにつれて、課題としては新規なものとなりますが、そのような課題を設定することが適切であるかどうかは別の話となります。
なぜなら「連続的」な課題は市場性がありますが、「準連続的」、「非連続的」な課題は市場性があるかどうか不明確だからです。つまり、「準連続的」、「非連続的」な課題を解決したからと言って、売れる製品になるかどうかは別の問題となります。
ただし、製品としてはインパクトがありますので、うまくゆけばイノベーティブな製品となるでしょう。