2016年5月11日水曜日

2016/3/13~3/19の知財高裁判決



2016313日から2016319日までになされた裁判は、侵害訴訟0件、審決取消訴訟4件(特許2件、商標2件)です。

1.侵害訴訟

ありません

2.審決取消訴訟

(1)平成27(行ケ)10143  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 審決取消(2部)
特許権 (体液分析装置)
進歩性(相違点の判断)

*コメント
引用発明に引例2の温度制御システムを適用する動機付けがない、引用発明に引例2の温度制御システムを適しても本件発明の構成とはならない、引用発明には本件発明の課題は開示されていない、とされ、拒絶審決が取り消されました。最近よく使われる論理構成です。

(2)平成27(行ケ)10129  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 審決取消(2部)
特許権 (パーティクル濃度測定装置)
進歩性(相違点の認定,相違点の判断)

*コメント
適宜説明図を提示することにより、気流の流れる方向に相違があることの立証に成功し、拒絶審決が取り消されました。

(3)平成27(行ケ)10194  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 請求棄却(4部)
商標権 (COLEMAN)
類似性(4111号)

*コメント
本願「COLEMAN」と引用「コールマン」の類否について争われました。外観は非類似であるが、その差異は称呼・観念の同一性をしのぐほどではなく、称呼は同一、観念は両方とも原告著名アウトドアブランド「コールマン」を認識することから同一とされ、両商標は類似するとされました。そうすると、自社ブランドが著名であったために、他社商標に自社ブランドの観念が生じ、それにより、自社商標出願が拒絶される、という、なんだかよくわからない状況になっているのでしょうか?

(4)平成27(行ケ)10193  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 請求棄却(4部)
商標権
類似性(4111号)

*コメント
同上です。






2016年5月7日土曜日

2016/3/6~3/12の知財高裁判決



201636日から2016312日までになされた裁判は、侵害訴訟3件(特許2件、不競法1件)、審決取消訴訟6件(特許6件)です。

1.侵害訴訟

(1) 平成27()10104  特許権侵害差止等(東京地方裁判所 平成26()3344
平成2839日判決 控訴棄却(4部)
特許権 (ピタバスタチンカルシウム塩の結晶,ピタバスタチンカルシウム塩の保存方法)
構成要件充足性,均等侵害

*コメント
本件につきましては、どうにも関連訴訟が多数提起されているようで、どういう事情なのでしょうかね。

(2)平成27()10108  特許権侵害差止等(東京地方裁判所 平成26()688
平成2839日判決 控訴棄却(4部)
特許権 (ピタバスタチンカルシウム塩の結晶,ピタバスタチンカルシウム塩の保存方法)
構成要件充足性,均等侵害

*コメント
同上ですが、数値限定が狭すぎるため、構成要件充足性がすべての訴訟で認められず、特許権者には厳しい結果となりました。

(3)平成27()10118  損害賠償(東京地方裁判所 平成25()20534
平成2838日判決 控訴棄却(3部)
不正競争
営業秘密

*コメント
争点はいろいろありますが、営業秘密の該当性につきましては、やはり秘密管理性が争点となっております。本件情報へのアクセス管理やパスワードの設定、秘密情報の区別管理等がなされていないこと、就業規則、誓約書等にある秘密保持義務の対象となる情報が不明確であること、などから、本件情報が秘密として認識できないものとされ、秘密管理性は認められませんでした。

2.審決取消訴訟

(1) 平成27(行ケ)10080  審決(無効・不成立)取消
平成28310日判決 請求棄却(3部)
特許権 (斜面保護方法及び逆巻き施工斜面保護方法)
進歩性(相違点の判断),明細書の記載要件(明確性,実施可能要件),補正・訂正の許否(新規事項の追加)

*コメント
記載要件等については、明細書の記載からなんとか明らかであるとされ、進歩性については、本件発明とする動機付けがないとされ、特許審決に違法性はないとされました。記載要件については、裁判所がかなり助け舟を出してくれたイメージです。

(2)平成27()10015  審決(無効・不成立)取消
平成28310日判決 請求棄却(1部)
特許権 (窒化ガリウム系化合物半導体チップの製造方法)
進歩性,補正・訂正の許否

*コメントはありません

(3)平成27(行ケ)10105  審決(無効・不成立)取消
平成2839日判決 請求棄却(2部)
特許権 (オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤)
明細書の記載要件(明確性)

*コメント
「からなる」の解釈について争われました。「Aからなる」について、「Aのみからなる」のか「Bを含んでも良いか」のか、ということになりますが、裁判所は「Bを含んでもよい」と判断しました(当然、特許権者に有利な判断です)。「からなる」については、無難に「含む」とか「有する」とかにしておいた方がよさそうです。

(4)平成27(行ケ)10097  審決(無効・成立)取消
平成2838日判決 審決取消(3部)
特許権 (発光装置)
進歩性(引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断)

*コメント
本件発明の「(特定物質の)内部発光効率を80%以上」とする構成については容易に想到できないと認定されました。引例には(他の物質について)発光効率を「29%から51%」とすることは開示されていましたので、一昔前では、80%以上という数値は設計事項とされる可能性が高かったと思いますが、設計事項の認定が多少緩くなったのかと思います。

(5)平成27()10043  審決(拒絶)取消
平成2838日判決 請求棄却(3部)
特許権 (トランスフェクションおよび免疫活性化のためのRNAの複合化)
進歩性(引用発明の認定,相違点の判断)

*コメントはありません。

(6)平成27()10121  審決(拒絶)取消
平成2838日判決 請求棄却(1部)
特許権 (低カリウム含有量葉菜およびその栽培方法)
進歩性(引用発明の認定,相違点の判断)

*コメント
本件発明の育成期間「710日」については設計事項と認定されました。引例には育成期間「2週間」が開示されており、顕著な効果もないことから、このような判断となったと思います。そうしますと、設計事項の認定が多少緩くなったということもいえないのかとも思います・・・。引例と数値範囲に大きな相違がなく、顕著な効果がない場合には、数値限定は設計事項とされてしまうといえるでしょうか。




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